明治大学博物館

企画展 「江戸から東京へー錦絵に見る日本近代の曙」を開催 しました

2016年12月01日
明治大学

江戸から東京へ—錦絵に見る日本近代の曙

第9回江戸アートエキスポ(主催:NPO法人東京中央ネット)の関連展示会場として、幕末維新期における西洋式の導入や産業経済の近代化を画材とする初期の東京の風景を描いた錦絵22点を展示しました。
特に幕末から明治期にかけての錦絵は、時事情報を伝達するニュース媒体としての機能をもっていました。国政や内戦の動向とともに、人々の耳目を驚かせる新奇な出来事が画材として取り上げられています。実際には目にしていない情景を絵師が伝聞と想像で描く傾向のあることから(計画段階から頻繁に蒸気機関車の走る様子が描かれていることなど)、図像としての真正性には一考の余地はありますが、当時の人々が何に注目し、驚き、惹き付けられたのかは端的に伝わってきます。
真新しい事物として、第一国立銀行や三井組ハウスなどの洋風建築、蒸気機関車、ガス燈の灯った煉瓦街がいかに当時の人々の耳目をそば立たせたかが伝わってきますが、その一方、当時の東京の中心街が、なお土蔵造り二階家の商家建築の連なる江戸時代然とした街並みであったことも分かります。新奇なものは、とかくもてはやされがちですが、それのみを見ていたのでは全体像を見誤ります。江戸から東京への移行は、一足飛びの近代都市への転換ではありません。明治維新・文明開化も大きな時代の画期であったかもしれませんが、なお変化というものは緩やかに訪れたという実感を新たにします。