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あなたは漆が縄文時代から使われていたのをご存知でしたか? 漆器は身近な生活用品であり、さまざまな用途に使われてきました。また、化学的な特性からいっても、非常に興味深い材料です。本書は、太古からの漆の歴史から、世界的な植生の広がり、各国における多彩な漆文化、さらには漆器の科学分析、漆の合成、ナノ漆の開発など、研究の最先端までを一望する、まさに「漆学」大全と呼べる一冊です。
はじめに
第1章 漆とは何か
1 「ジャパン」としての漆
2 漆の分布・植生
植林・栽培/沖縄のウルシ,北海道のウルシ/ウルシ科の植物/海外のウルシ/ヨーロッパのウルシ
3 漆の成分
4 漆の採取
ウルシの木に傷をつける道具と漆液の掻き取り法/漆掻きの時期/漆の評価
第2章 漆文化の広がりと歴史
1 世界の漆
2 日本の漆
縄文時代の漆/中国の漆と縄文漆/近世の漆——タイ伝来の漆
3 琉球の漆
琉球の漆文化/琉球漆器に使われた漆/琉球の漆芸/現在の琉球漆器
4 アジアの漆
中国の漆の歴史と文化/韓国の漆の歴史と文化/東南アジアの漆芸
5 ヨーロッパとの漆交流
南蛮漆器、輸出および模造漆/漆器のもたらした影響
第3章 漆器の制作と加飾
1 漆の種類
2 漆塗り
3 漆の加飾
まとめ
第4章 漆かぶれとは何か
1 漆かぶれ
漆かぶれの防止法
2 漆かぶれの化学
感作と発症/漆かぶれ薬を作る
第5章 漆の化学的性質
1 漆液の成分組成
2 漆液の乾燥・硬化
漆の酸化重合反応/漆の自動酸化/漆の劣化/漆の熱重合
3 漆液のハイブリッド化
第6章 漆の科学分析
1 科学分析とは何か
熱分解-GC/MS分析法/漆のクロスセクション法/蛍光X線分析
2 縄文漆器の科学分析
漆かアスファルトか/縄文漆利用技術の多様性/彩色土器の塗膜分析/木胎耳飾りの塗膜分析/サメの歯の膠着物の分析/飾り弓の塗装物の分析/漆とアスファルトの識別/土器内部にあった黒い塊の分析
3 「朱漆楼閣山水箔絵盆」の分析
「朱漆楼閣山水箔絵盆」の箔絵/分析試料と分析方法
まとめ
第7章 合成漆の開発
1 ウルシオールの合成研究
2 天然型トリエンウルシオールの合成
3 酵素重合型合成漆の開発
不飽和側鎖をもつ3-アルケニルカテコールおよび4-アルケニルカテコールの合成/不飽和側鎖を有する4-アルケニルカテコールの合成/カシューナットシェルオイル(CNSL)を利用した4-アルケニルカテコールの合成
まとめ
第8章 次世代の漆利用
1 速乾燥性ハイブリッド漆の開発
2 ワインレッド色漆塗料の開発
3 ナノ漆の開発とインクジェットプリンターを利用した蒔絵製作法の開発
漆液の微粒化分散/漆の耐光性向上研究
4 漆を用いた防錆塗料の開発
防錆塗料の開発と試験/塗膜の密着度試験
あとがき
索引