| 間宮 |
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最後に、米沢さんがずっと代表を務められてきたコミックマーケットについて話していきたいと思います。この間お借りした本(『米沢嘉博に花束を』虎馬書房発行)を読んでいると、組織化は極力したくないし、組織を意図的に動かそうともしないとおっしゃっている。こういうひとつのイベントなり組織なりを継続していくとなると、なかなかそういうスタンスは難しいだろうと思うんですよね。どこかで組織的なことを考えざるを得ない。ところが、それをしないで継続してできるというのは、すごいなと思います。例えば、人が集まってくるとか、周りが作ってくれるというのもあるのでしょうが、そう簡単に世の中でそういうことは起きません。 |
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| 米沢 |
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そのことはよく言われるのですが、実際、放任主義というか全体の流れに任せていました。準備会の中で誰かから特定の人に対する苦情を聞かされても、彼はその人を非難したりしないし、まあ困ったねくらいで終わってしまう。時間がたてば収まるところに収まってしまうだろう、そういうふうに考えていたようです。 |
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| 間宮 |
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そもそも仕事だと思うから、ちゃんとしないといけないとみんな不安になるわけです。けれども、好きで集まっているのだったら、みんなが好きな形で動いていけば良いのではないか、という風に本当に思えれば、おそらく「仕方がないんじゃないか」とか「困ったもんだね」とかで、済むのではないかと(笑)。逆を言えば、組織を運営していく上で、どこか誰かに任せながら、最後には自分がどうにかすればいいんだ、という開き直りがあった? |
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| 米沢 |
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そうですね、自分は運が良いほうだと思っていたのかもしれませんが(笑)。別に彼が「さあ行くぜ」と舵取りしているのではないのですが、ただ何となく徐々に軌道修正している気はしました。間違った方向に行きそうなときは、少し流れを変えるようにしていたりはしていたと思います。それをあんまり人には言わないでいたようですが。 |
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| 間宮 |
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普段何も言わないと、その分不安になって、肝心な一言が心にしみてくるっていうか、説得力があるということになるのでしょうね。 |
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| 安田 |
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絶対言わない人だから、この人には絶対迷惑かけないとみんなが思うんですよ。この人に頭を下げさせるようなことはしたくないと思ったりすると必要以上にがんばってしまうというか……。そういう人だったと思います。 |
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| 間宮 |
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それって自然にできないとそうならないですよね。やろうと思っても無理ですよ(笑)。 |
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| 安田 |
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なんていうか、人たらしなところがありました(笑)。 |
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| 米沢 |
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私がけっこう口うるさい方なので、逆に彼は押さえる方に回って、私が悪役になっていました(笑)。 |
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| 間宮 |
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そういう役割分担がうまくいっていた、というところがあるんでしょうね(笑)。 |
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| 藤本 |
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米沢さんの懐の深さというのが、コミケットにおいて、自由を確保すると同時に個々人の責任意識につながり、コミケットをあそこまで大きくしていったわけですね。 |
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