連携地域の復興と今 福島県相馬郡新地町

Greeting町長あいさつ

大堀 武さん

東日本大震災からの復興に際し、ご支援ご協力をいただいた方々に、この場をお借りし厚く御礼申し上げます。
さて、明治大学とは2012年1月26日に「震災復興に関する協定」を締結して以来、これまで様々な活動を行っていただいております。
当初は、町内の子ども達の学習支援や運動不足解消、また、町民を元気にしようと震災後に始まった「やるしかねぇべ祭」の運営支援が課題でしたが、学生から教職員まで多様な方々に課題解決の協力をいただき、町民の笑顔を取り戻してくれました。
継続した活動を展開いただく中、学生らの活動を促進するため応急仮設住宅の一部をボランティア活動拠点として2015年に開設しました。その後の活動は多岐にわたり、新地町で活動を続けようと大学公認サークル「しんちーむ」が結成され、現在ではサークルと学校の協働による特別授業、復活した町の海のイベント「遊海(ゆかい)しんち」の支援、地域のお祭りへの参加など交流が深まっています。
また、体育会ローバースカウト部では、町内小学生を対象とした「デイキャンプ」を2014年以降開催していただき、野外活動の経験を育みお互いの顔と名前がわかるほどの関係を築いています。
これらの明治大学の活動は、町の復興だけでなく大学の無い町の子ども達にとって貴重な交流の機会になりました。大学生との交流をとおして、大学での学びやキャンパスライフ、経験などを直接子ども達に伝えてもらうことで、知識や将来の方向性など世界が広がり大きく成長することができたと思います。
これからも、このような明治大学との関係・交流を深めていき、多方面で活躍する人材が育っていくことを期待しています。
最後に、新地町は皆様の力をいただき復旧・復興を着実に進めておりますが、農水産物の風評被害や心の復興など、いまだ復興道半ばであります。復興を成し遂げていくためには自然豊かな環境を活かした交流人口拡大が必要と考えています。そのためには多くの方々に新しい新地町に足を運んでいただき、活気あるまちづくりを進めたいと考えておりますので、今後も皆様のお越しをお待ちしております。

令和3年3月11日
新地町長 大堀 武

Overview地域概要

新地町の概要(2020.9.1時点)

人口 8081人
面積 46.7k㎡
世帯数 2,875世帯
主な特産品 カレイ・ヒラメ・いちじく・いちご
被害状況 震度 6強  M9.0
死者数 119人 (震災関連死含む)
家屋被災 630世帯
(津浪516世帯、地震114世帯)
※新地町提供資料より抜粋
アクセス 電車:東京駅~(東北新幹線・約1時間40分)~仙台駅~(JR常磐線・53分)~新地駅
車:東京~(常磐自動車道利用)~新地IC

Initiatives震災復興に関する取り組み

震災発生から10年、復興に向け、新地町では様々な事業・取り組みが行なわれています。
ここでは主な復興事業についてご紹介いたします。

【まちの復興】生活インフラの復興(住宅、沿岸部、道路、駅)

震災後、町が優先的に取り組んだのは「住まいの再建」です。高台に整備した7カ所の防災集団移転団地は計画段階より住民とのワークショップを重ね、可能な限り要望に添う形で造成を行い、2013年(平成25年)にはすべての団地で入居が可能となり、早期の住宅再建を行うことが出来ました。
また、大きな被害を受けたJR新地駅は内陸に場所を移し、踏切が下りたままで避難が遅れたという教訓から、高架による線路沿線を整備し、2016年(平成28年)12月に浜吉田~相馬間が再開通しました。
沿岸部では震災以前には集落があった釣師(つるし)地区に約18ヘクタールの広大な防災緑地公園を整備し、遊具やオートキャンプ場、世界有数のパンプトラックなどがあり、新たな交流の場となっています。

  • 防災集団移転団地

    防災集団移転団地

  • 釣師防災緑地公園

    釣師防災緑地公園

【産業の再生】新たな産業創出に向けて(漁業、農業、商業等)

津波の被害のあった漁港周辺の施設は2016年(平成28年)3月に完成し、その後荷捌き施設や製氷施設、民間の水産加工施設などが完成しています。
震災後原発事故の影響により震災直後は出荷制限があった海産物ですが、現在はすべて解除になっています。しかし、依然として本格的な操業にはいたっておらず、風評被害により流通業者や量販店への売り上げ回復は鈍いままです。
その他には、JR新地駅周辺で取り組んでいる「スマートコミュニティ事業」により、LNG基地からガスパイプラインで運ばれる天然ガスを活用して熱と電気を供給しています。それらを活用し、駅周辺でホテル・温浴施設や商業施設(飲食店や美容店)が新たに完成し、これからは農業生産施設の誘致により、それぞれの産業の再生に取り組んでいます。

  • 被災した漁協施設

    被災した漁協施設

  • 新たな漁協施設

    新たな漁協施設(荷捌き場)

  • JR新地駅周辺

    JR新地駅周辺①

  • JR新地駅周辺

    JR新地駅周辺②

【コミュニティ再生・住民活動】コミュニティ形成のきっかけとして

町では、震災により大きく変化があった地域コミュニティの再生、創出のため心の復興事業に取り組みました。津波被害のあった町並みを住んでいた方々などで作業をしながらジオラマで復元する「心の情景ジオラマ事業」や防災集団移転団地などで地域の方が一体となってガーデニング作業を行い、コミュニティを形成する「コミュニティガーデン事業」に取り組みました。
その他にも、民間の団体が主体となって手芸活動や震災前に実施されていた盆踊りを復活させるなどの活動を通じて、コミュニティの形成・維持に向けて取りくんでいます。

  • 心の情景ジオラマ事業ジオラマ作成の様子

    「心の情景ジオラマ事業」ジオラマ作成の様子

  • コミュニティガーデン事業寄せ植えの説明を受ける

    「コミュニティガーデン事業」寄せ植えの説明を受ける

【震災の伝承】防災と交流の施設を通じて

町では、震災で経験したことを沿岸部に整備した釣師防災緑地公園を中心とし後世に伝えています。公園の管理棟内に震災からの出来事をまとめた年表やパネル、「心の情景ジオラマ事業」で作成した、震災前の沿岸部の集落を再現したジオラマを展示しています。また、公園内にある園路はもともとの集落にあった町道などの形を残して配置するなど、震災前にこの場所には何があったかを伝えるアーカイブ施設となっています。
また、公園内の高台には慰霊碑や震災モニュメントが設置されている「想いの丘」があり、震災で犠牲となった方に想いを寄せる場所にもなっています。

  • 震災年表・パネル

    震災年表・パネル

  • 慰霊碑・震災モニュメント

    慰霊碑・震災モニュメント

Challenge新地町で
チャレンジを続ける人

ここでは、様々な活動を通じて新地町の復興、
地域活性化を支える川上照美さんをご紹介いたします。
ご当地ならでは新地町の魅力も教えていただきました。

川上 照美さん

川上 照美さん
(かわかみ てるみ)

海岸清掃ボランティア しんちビーチク隊 代表
復興フラッグ管理団体 リバイバルF 副代表
しんちビーチク隊 グループページ 復興フラッグ管理団体リバイバルF
facebook Instagram Twitter

【新地町の魅力】

仙台から嫁いで7年、震災により大好きだった海に全てを奪われ、一度はこの町、この海から離れようと考えましたが、様々な活動を行ううちに新地町の魅力がわかりました。
海・里・山と小さな町なので、1日で全てを満喫する事ができます。東北の都市部になる仙台からも近く、温暖で住みやすい田舎町だと思います。新地町では、この環境を生かして都市部では体験する事ができないことが楽しめます。

しんちビーチク隊での海岸清掃活動

東日本大震災で被災し、家族のゆくえがわからない中、変わり果てた姿の海岸に打ち上げられる生活用品に心を痛め、知らぬ人達に見られたくないという気持ちが強く、災害ガレキのビーチクリーンをスタートしました。元々、波乗りをしており海岸清掃は身近な活動でした。
また、幼い頃から海と共に過ごしてきた主人が震災後、約1年経過してやっとビーチに足を踏み入れた事実を知りました。彼がまた海に近づける様にという想いと共に、震災に負けるもんかという気持ちが更に強くなり、海岸のビーチクリーン活動を続けています。2011年4月から個人で活動を開始し、2012年に協力者が増加したため任意団体「しんちビーチク隊」を結成し活動しています。新地町の海岸3か所をメインに、SNS等を通して他地域からのボランティアも募り、新地町の方々との交流をしてもらいながらビーチクリーンを行っています。

復興フラッグ(*)管理団体リバイバルFでの活動

復興フラッグは、2014年元旦にバイク愛好家の方々の想いの元、被災した釣師地区に掲げられました。その後釣師地区の復興工事が進むに伴い、フラッグの掲揚存続が危ぶまれる状況となり、当時管理されていた方が存続署名活動等を行った結果、2015年1月に存続決定となりました。現在では、釣師地区に完成した釣師防災緑地公園のバイク駐輪場にある「復興フラッグ広場」(元々復興フラッグが掲げられた場所)に戻っています。ここは国土交通省の震災伝承施設としても登録されています。人と人をつなぎ、後世に語りつぎ、震災を風化させない復興のシンボルとして、はためいています。
私は先に紹介したビーチクリーン活動にバイク愛好家の方々が参加していた事から、復興フラッグの維持管理や、新地町を訪れる方々へのアテンドなどの活動にも関わるようになりました。 2016年から2019年にかけては復興庁被災者支援交付金事業の心の復興事業に4年間取組みました。復興フラッグによる震災伝承と新地町内外への情報発信、被災者の心のケアやコミュニティ形成を通じた自立支援、震災で途絶えた地域の伝統を復活させるための活動などを行ってきました。
(*)復興フラッグ:捜索、復旧活動を行っていた自衛隊ががれきの中にあった日の丸を掲げたのが始まり。その後地域のボランティア、バイク愛好家、被災者に引き継がれて現在まで維持管理されています。

成功したこと

どちらも活動継続中で、成功という言葉にするのであれば先の未来にしかわからないことです。
ただ活動を通して少しでも多くの町内外の方々に東日本大震災のこと、新地町のことを知ってもらい、交流人口の増加に貢献できているのではないかと思います。そして何よりも大切な事、自然と共存する大切さを参加する方々に大なり小なり感じ取って頂けているのではないかと思います。
復興フラッグは、本来あるべき場所に戻りまだ1年です。釣師防災緑地公園、そして新地町沿岸地区の再生と活用、地域交流、賑わい創出をこれから時間をかけて見守り続けていく事になります。

苦労したこととやりがい

ビーチクリーンに関しては、当時は重機を必要とする状態で、今後素足で砂浜を駆け回ることは二度と出来ないのではないかという状況でした。どこにどうお願いすれば大きなガレキを処理してもらえるのか等、行政との協力や建設業の方々に協力を頂くため苦戦をしました。危険な作業が3年続きました。怪我の恐れもあり一般の方を参加させる時は終始緊張していました。ボランティアとしての域を超えていたと思います。またビーチクリーンを行うにあたっての必要経費は自腹でした。町外からの参加者は数多くいらっしゃるのですが、町内からの参加者が少なく苦労しました。海岸はもういけない場所・海が怖いなど直接的に大きな被害が無かった方々も海に近づく事が出来なかったためだと思います。まだまだこのような方々は多いと思います。
復興フラッグについては、当初に掲げた方々がこれからという時に維持管理していけなくなり、その後を引き継ぎました。既に復興フラッグにうっすらとブランド価値のようなものが付いていて、そのような面も含めて多くの苦労をしました。町内の方々に復興フラッグの存在意義を理解して頂くことに現在も日々、努めています。また復興フラッグの維持管理についても自腹で支援がないので、今後新地町に協力を求めていこうと考えております。
ビーチクリーンも復興フラッグの維持管理に関しても苦労の方が圧倒的に多いです。悩み苦労が多いからこそ頑張る・継続するにつながると考えております。それがやりがいにつながります。どちらの活動に関してもボランティアですが、新地町また周辺地域、そして各地域を繋げていく活動ですから地道に続けて行くことが大切だと思っています。震災を知らない子供たちが増えてきました。実際に起こった事実を後世に伝え語り継ぐことができる活動だと思っています。災害は、忘れた頃にやってくる。二度と同じような思いをして欲しくはないという気持ちで教訓を伝えていける活動にやりがいを感じています。

お世話になった方とのエピソード

しんちビーチク隊は本当に沢山の方々と出逢える活動です。私と出逢ってくれた皆さんがお世話になった方です。そんな中でも初めて町外からボランティアを受け入れたのが明治大学の平山満紀先生のゼミナールです。少人数でしたが、震災の爪痕がまだ痛々しく残る姿を見て頂き、その後も明大の学生さんのボランティアを受け入れる事に繋がりました。若い学生さん達がビーチクリーン活動に入り、参加した皆さんと交流する姿を見て、元気と勇気を沢山頂くことができました。ありがとうございます。
復興フラッグに関しても町外の方々からのお力添えが維持管理していく原動力となりました。特にお世話になったのは、高知県から災害派遣で新地町に配属になった応援職員の吉本さんです。この方がいなかったら、今現在の復興フラッグは無かったのではないかと思います。お世話になりました。

Experience地域の魅力を
自宅で体験

新地町の観光地としての魅力をコラムと写真でお伝えします。
今回、新地町の復興支援・活性化を応援するため、2016年12月に結成した大学公認サークル「しんちーむ」の学生の皆さんに協力いただき、同町での活動の中で発見した地域の魅力を発信していきます。
次のマップにあるピンをクリックすると、おすすめスポットの紹介が見られます。
新地町を訪問される際は、ぜひお立ち寄りください。

おすすめスポット

1.新地町立児童館/児童クラブ
2.新地町役場展望台
3.鹿狼山
4.釣師浜海水浴場・釣師浜防災緑地公園
5.復興が進む新地駅
6.新地総合運動公園と「やるしかねぇべ祭り」
7.砂子田川橋から眺める日の出
8.あんこ地蔵
9.新地町の特産品

地図

協力サークル紹介

「しんちーむ」について

元々は、「学部間共通総合講座」という明治大学の授業の一環として、新地町でボランティア活動を実施していたことが、新地町で現在も活動を継続する契機となっています。ボランティア講座の終了時に、「これからも継続的に新地町で活動をしていきたい」と受講者の有志の強い思いがあり、大学公認のボランティアサークルとして、2016年12月に再出発しました。以降、小中学生との交流活動、地域祭礼の運営補助など、新地町の応援団として、地域活性化の一端を担わせていただいています。大学卒業後も、地域のお祭りに参加している元部員もおり、今後も末永く、新地町とのつながりを続けて参りたいと思っています。
しんちーむ公式ツイッター

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