連携地域の復興と今 岩手県大船渡市

Greeting市長あいさつ

戸田 公明さん

東日本大震災から10年の歳月が経過しました。ここに、あらためてお亡くなりになられました方々に対し、深く哀悼の意を表しますとともに、被災されました多くの皆さまに心からお見舞いを申し上げます。

当市におきましては、明治大学の皆さまをはじめ、復興に携わる多くの方々のお力添えのもと、市復興計画の推進に全力で取り組んで参りました。
おかげをもちまして、市復興計画に登載した事業は、ほぼ完了の目途が立つところまで進捗し、新たなステージに入る段階を迎えています。

これまでの長く険しい復興の道のりにおいて、明治大学の皆さまには当市の復興を力強く後押ししていただいております。
大震災が発生し、被災地は不安と混乱の中で膨大な復旧作業に追われる中、平成23年5月、学内に「震災復興支援センター」を設置し、全学体制で支援活動を進められ、同年11月には長期化する復興活動を見据え、「東北再生支援プラットフォーム」の活動拠点として、当市内に「つむぎルーム」を開設していただきました。
平成24年4月、明治大学と当市との間で復興に関する協定を締結した後には、中学生や高校生を対象とした学習支援や、地域の伝統行事「盛町灯ろう七夕まつり」への参加など、一段と復興支援活動が推進されました。
また、復興の進捗に合わせるように、当市の花であります「椿」の利活用促進事業への参画や、地域産業の課題解決に向けた取組など、学生の視点や行動力を生かした活動を展開していただいております。

こうした経緯を踏まえ、令和元年5月には地域活性化、人材育成及び文化、産業発展等を目的とした包括的連携協定をあらためて締結いたしました。
締結後におきましては、学ぶ機会の創出を目的として市で開催しております市民向け講座への講師の継続派遣や、IT技術を駆使して地域課題解決に取り組む人材の育成を図る産学官連携プロジェクトへの参画など、様々な場面で大学が持つ知の力を発揮いただいており、今後の連携事業のさらなる活発化に期待を寄せているところでございます。

市復興計画期間は令和2年度をもって終了を迎えますが、復興のその先を見据え、多様な地域課題に対応した持続可能なまちづくりを推進すべく、引き続き明治大学の皆さまのお力添えをいただければ幸いに存じます。

結びに、明治大学のますますのご隆盛を心よりご祈念申し上げますとともに、これまでの関係各位の多大なご尽力に対して、あらためて深く感謝申し上げます。

令和3年3月11日
大船渡市長 戸田 公明

Overview地域概要

大船渡市の概要(2020.9.30時点)

人口 35,238人
面積 322.5k㎡
世帯数 14,888世帯
主な特産品 サンマ・椿・木工品・かもめの玉子
被害状況 震度 6弱 M9.0
死者数 340人
建物被害 5,592世帯
(全壊:2,791 大規模半壊:430 半壊:717 一部損壊:1,654)
※大船渡市提供資料より抜粋
アクセス 電車:東京駅~(東北新幹線・約2時間)~一ノ関駅~(JR大船渡線・約80分)~気仙沼駅~(JR大船渡線BRT・約80分)~大船渡駅
車:東京~(東北自動車道利用)一関IC~(国道343号-三陸縦貫自動車道利用・約100分)~大船渡市

Initiatives震災復興に関する取り組み

震災発生から10年、復興に向け、大船渡市では様々な事業・取り組みが行なわれています。
ここでは主な復興事業についてご紹介いたします。

【まちの復興】チャレンジと検証を繰り返すまちをつくる!

壊滅的な被害を受けた大船渡駅周辺地区では、地盤のかさ上げを行い、津波からの防災性の向上とにぎわいのある商業・業務機能の集積を図るとともに、将来にわたり継続して魅力あるまちづくりを進めています。
キャッセン大船渡エリア/区域独自の魅力とにぎわいを創出するため、株式会社キャッセン大船渡と区域内の事業者が連携して、販売やイベント、回遊性の向上、まちづくり人材育成等のエリアマネジメントの取組を実施しています。

  • 大船渡駅周辺地区の被災後の写真(2011年10月撮影)

    大船渡駅周辺地区の被災後の写真(2011年10月撮影)

  • キャッセン大船渡エリアの概要

    キャッセン大船渡エリアの概要 https://kyassen.co.jp/

【基幹産業の再生】水産業の復興

大船渡市魚市場/被災した旧魚市場は、平成23年5月に水揚げを再開。建設工事中に被災した新魚市場は平成26年3月に完成し、ICT化による業務効率化や高度衛生管理の取組を推進しました。主要魚種の不漁により水揚量は年々減少傾向にありますが、水揚額は震災前10年平均と同水準まで回復しています。
つくり育てる漁業/当市は、カキ・ホタテガイ・ホヤ・ワカメなどの養殖が盛んです。養殖施設の早期復旧により、平成23年度から養殖漁業を再開し、平成27年度以降の生産額は震災前年より増加しています。

  • 建設工事中に被災した新魚市場の様子

    建設工事中に被災した新魚市場の様子

  • 完成した新魚市場。飲食施設や展望デッキなどを備えた複合施設となっています。

    完成した新魚市場。飲食施設や展望デッキなどを備えた複合施設となっています。

【地域資源の活用】「椿」の活用と新産業の創出

当市は太平洋沿岸のヤブツバキの北限として知られ、「椿の里・大船渡」として発信を行ってきました。震災後には、椿を生かした産業振興に向けて産学官民の連携が活発化しており、椿を生かした商品の開発や、魅力発信のためのイベントや講座を開催するなどの取組を共同で進めています。
また、被災跡地を活用した産業用地には、トマトの大規模栽培施設(㈱いわて銀河農園)や、イチゴの生産・担い手育成拠点施設(㈱リアスターファーム)が整備されたほか、市内産ブドウが原料のワインを製造するワイナリーも完成し(㈱スリーピークス)、新たな地域資源による産業の創出にも期待が寄せられています。

  • 椿の見頃の時期には「三陸・大船渡つばきまつり」を開催

    椿の見頃の時期には「三陸・大船渡つばきまつり」を開催

  • 被災跡地を活用したトマトの大規模栽培施設

    被災跡地を活用したトマトの大規模栽培施設

【震災の伝承と防災対策】被災地としての防災まちづくり

現在、市内にある津波伝承・防災学習施設、各地区の特色ある復旧・復興の取組等を連携させながら、災害に強いまちづくりを推進するため、「防災学習ネットワーク」の形成を計画しています。
大船渡駅前に位置するおおふなぽーとをゲートウェイとして、市内各地の震災遺構や防災学習施設を回遊する仕組みをつくり、それぞれが持つ意義や津波災害・避難生活の教訓を通じた、災害に対する総合的な防災学習と備えを促します。
また、東日本大震災をきっかけとして随所で行われた被災地内外との連携による取組から、学ぶべき教訓や知見を生む「知」のネットワーク拠点の1つとして、減災社会実現に向けた情報発信を行います。

  • 観光・交流の拠点であるおおふなぽーと

    観光・交流の拠点であるおおふなぽーと

  • 津波被害から生き残った「ど根性ポプラ」

    津波被害から生き残った「ど根性ポプラ」

【コミュニティの再生】持続可能なまちづくりのために

震災前から地域単位での活動が盛んで、地域住民が主体となって、町内の清掃活動や公園・広場の維持管理のほか、伝統芸能の継承等にも取り組んでいました。
震災後、各地区に復興委員会やまちづくり委員会が組織され、まちづくりの専門家の協力を得ながら、高台移転場所や避難路についての検討等が行われました。こうした活動は復旧・復興事業が進む中でも継続され、転居等により希薄化したコミュニティ維持のための被災跡地の利活用や、新たなコミュニティでの交流機会の創出など、住民主体のまちづくりの取組が展開されています。

  • 住民主体によるまちづくり委員会の様子

    住民主体によるまちづくり委員会の様子

  • 災害公営住宅での自治会活動(農園整備)

    災害公営住宅での自治会活動(農園整備)

Challenge大船渡市で
チャレンジを続ける人

ここでは、大船渡市で地域リーダーとして活動している方や、
震災後に移住して新たな取り組みをしている方の活躍をご紹介いたします。
ご当地ならでは大船渡市の魅力も教えていただきました。

福山 宏さん

お仕事ツーリズム「セメントが出来るまで」
(2017年)(ご本人)

福山 宏さん
(ふくやま ひろし)

株式会社地域活性化総合研究所 取締役 主席研究員
合同会社TXF 代表社員
明治大学 サービス創新研究所 客員研究員
株式会社地域活性化総合研究所公式ホームページ 合同会社TXF公式ホームページ

【大船渡の魅力】

都会からちょっと調べに来ただけでは発見することが出来ない、深い部分に沢山の「宝」が眠る鉱山のような場所だと思います。

地域での取組や仕事について

2011年4月7日、復興の役に立ちたいと、当時在籍していた(株)NTTPCコミュニケーションズより長期出張の形で大船渡市に移住し、被災地復興支援を目的とした「つむぎプロジェクト」を立ち上げました。そこでは、岩手、宮城、福島3県の身元不明者の情報をデーターベース化し3県で横断検索可能にする身元確認システムの構築、防災情報をSNS、メール、FMなどと連携し配信するという伝達方法の多重化提案を行ってきました。また明治大学の学生による地元の夏祭り支援・学習支援等のボランティア活動を支援してきました。
2014年9月1日に(株)地域活性化総合研究所を設立し、主席研究員として現在まで地域おこし事業に携わっています。
2014年「高校生・保護者の進路意向調査」を行った結果、9割の高校生が卒業後市外に転出予定である一方で、オンラインでなりたい職業について学べて、それを活かせた仕事が市内で出来るなら7割以上が残りたいと回答しました。この調査を起点に「大船渡ふるさとテレワークセンターの開設」「ギークハウス岩手三陸大船渡の開設」「アンテナショップ『三陸SUN』を高円寺に出店」「老朽化した倉をリノベーションしオープンキッチン『Re:Kura』開業」「廃校を活用したBMX事業」、「ご当地おでん『三陸おでん』」など様々なプロジェクトを立ち上げてきました。
2019年4月2日には合同会社TXFを設立、代表社員に就任し、本格的な屋外コース「三陸BMXスタジアム」を開業しました。

これまでの活動を振り返って

被災地大船渡でのこれまでの取り組みは、自分が「よそ者」であることの価値を最大限に活かしながら、地元の人たちの固定観念を破って地域にある資源の価値を再評価するという取り組みでありました。それには地元の方々と向かい合って説得するのではなく、同じ「円」の中にいるという二宮金次郎の思想のようなものがとても重要なことだったと思います。沢山の地元の方々からの支えがあったからここまでやって来れたし、自分の良さを活かせたと思います。

今後の展望は

現在は大船渡だけではなく被災地である三陸全般に視野を広げて活動しています。新たなご当地グルメとして「三陸おでん」の開発と普及に着手しています。やればやるだけ忙しくなりますが楽しみながらこれからもやっていきたいと思います。


門田 晃明さん

阪井ゼミナールの学生と買い出し中の私(左がご本人)

門田 晃明さん
(もんた こうめい)

盛 (さかり) 青年商工会 2020年度 会長
大船渡市市民活動支援センターホームページ(盛青年商工会)

【大船渡の魅力】

交通網が整備され尽くされた日本の中でも、未だアクセスの不便な陸の孤島と呼ばれるここ岩手県沿岸部ですが、秋の味覚さんまの本州日本一の水揚げを誇る漁場・漁港があります。

地域での取組や仕事について

岩手県の沿岸南部地方に位置する、大船渡市盛町の主に青年経済人で構成される盛青年商工会で会長をしております。
商工会の歴史は意外と古く、2023年で70周年を迎えます。
地元盛町の通年行事に根ざした活動が主になります。8月6・7日には灯ろう七夕まつりという独自のお祭りがあり、我々盛青年商工会も盛町夏まつり実行委員会の組織の一翼を担い、七夕まつりの運営をサポートする活動をしています。
連携協力協定を結んでいる東京都板橋区の富士見まつりでは、毎年特産品の「大船渡産さんま」と「三陸町綾里の恋し浜ホタテ」の炭火焼を販売し交流を行っています。
また、月に一度は盛町の発展向上を目的に定例会を開催し、企画立案から始まる様々な研修活動を行っています。

国内外からの復興支援と明治大学とのつながり

ご存知のとおり、2011年の3月11日には東日本大震災が発生し、ここ岩手県の沿岸部に属する大船渡市も甚大な被害を受けました。
あの絶望感に打ち拉がれていた頃、復興に向けこの盛町にも日本各地、また世界各地より、思いもよらぬ多大なるご支援や交流を戴きました。
そのひとつとして、明治大学は阪井和男教授が率いるゼミメンバーによるボランティア活動がありました。
そのご縁がゼミプログラムの一環として今現在でも続いており、主に学生が夏休みを迎える8月上旬から、灯ろう七夕まつりの設営から本番、撤収に至るまで携わっており、過疎化が進むこの盛町のまちづくり活動の一助となっています。 今後としては、阪井教授の御勇退まで残り数年とお聞きしておりますので、我々としては正直残念なところでもあります。ご縁をいただいた明治大学の学生の皆さんには第二・第三の故郷にして欲しい、いつでも帰って来なさいとお伝えしています。


大関 輝一さん

地元の人に教えてもらいながら無農薬で米を作りました(大関さんご本人)

大関 輝一さん
(おおぜき てるかず)

すけだちブックス
(旧)大船渡ゲストハウス 代表
移住・定住・交流情報サイト「けせん暮らし」インタビュー

【大船渡の魅力】

大船渡は想像よりとても温暖な気候で、夏も涼しく過ごしやすいです。温暖な気候の賜物か大船渡の人も温厚な人が多いです。せっかく地方にいるので無農薬での稲作や海の見える畑で野菜作りも始めました。コロナ禍を見据えながら、新しい暮らしを楽しみながら試行錯誤しています。プチ移住もお試し移住も相談受け付けます。

活動のきっかけと経緯

大学生の時に阪神淡路大震災(1995)が起き、震災ボランティアに行ったことがきっかけで、大きな災害がある度にボランティア活動をしていました。東日本大震災の時も過去の経験が活かせると思い、東京からすぐに大船渡市へ駆けつけ、2011年3月24日より活動開始しました。
岩手県大船渡市にて、最初の3年間は救援物資の調達と配布。ボランティアの受け入れの他、大船渡アクションネットワークという大船渡市で活動する大船渡市内外の支援団体の支援活動調整会議を立ち上げ、約2年間続けました。この活動がのちに岩手県沿岸地域初の公設民営型センター「大船渡市民活動支援センター」の設立につながりました。

大船渡市でのさまざまな活動

(椿を通したまちづくりサポート)
復興のまちづくりを考え、大船渡市の花でもある椿に着目して活動を始めました。長崎県の新上五島町から大船渡市に椿苗贈呈や資生堂の現地コーディネーターとして椿の植樹などを行いました。
(大船渡ゲストハウス)
大学を休学して世界旅行に出かけた経験があったので、リアス海岸の美しい海と空と山を救援物資を運びながら眺め、大船渡はもっと観光で産業が成り立つと思い、三陸沿岸で最初のゲストハウスを作りました。また地元の人に頼まれ、貸し別荘ハウルの船も始めました。しかしながらコロナ禍のため、現在は両方とも閉じました。
(大船渡津波伝承館での教材作成、震災ガイド)
大船渡は世界的な津波常襲地なので明治三陸大津波など過去の津波の歴史を調べ、震災ボランティア経験と合わせて震災を学ぶ教材を作りました。震災ガイドや修学旅行の受入れも行っています。
(すけだちブックス)
東京でインターネット販売の古本屋をしていました。古本を使った寄付で活動資金を作り、被災地で活動できるボランティアを養成する学校や講座のようなものを作れないかと大船渡で古本屋を開設準備中です。

Experience地域の魅力を
自宅・首都圏で体験

大船渡市の観光地としての魅力をコラムと写真でお伝えします。
今回、東日本大震災発生当時より大船渡市の復興支援・活性化を応援するための活動を続ける「文学部 平山満紀ゼミナール」の学生の皆さんに協力いただき、同市での活動の中で発見した地域の魅力を発信していきます。
次のマップにあるピンをクリックすると、おすすめスポットの紹介が見られます。
大船渡市を訪問される際は、ぜひお立ち寄りください。

おすすめスポット

1.世界の椿館・碁石
2.大船渡のホタテ
3.株椿と三面椿
4.キャッセン大船渡
5.椿を使った商品
6.碁石海岸
7.潮目
8.大船渡温泉
9.三陸鉄道(恋し浜駅)

地図

協力ゼミ紹介

「文学部 平山ゼミ」について

私たちゼミは東日本大震災発生以来、大船渡市などで復興活動・地域振興を行っています。2011年の夏には大船渡に初めて赴き、炎天下での土砂上げや国際的ボランティア団体All Handsの方々と写真の洗浄などをしました。また2012年の夏には、吉浜中学校の防災行事参加や中学生の学習支援、被災地見学も行いました。さらに2013年度からの3年間は、宮田仮設住宅のコミュニティ支援がゼミ活動の柱の1つとなり、住民の方々との交流会や戸別訪問のほか、吉浜湾のホタテ養殖見学など漁業体験や漁師さんとの交流も実現しました。
2015年度からは、被災地の課題が復興から地域振興へと移り、大船渡市は椿の里づくり事業を開始しました。私たちゼミも仮設住宅と復興公営住宅の支援を続けながら、観光マップ製作のための取材やつばきまつりの手伝いを始めました。
翌年の2016年度から今日まで、平山ゼミは椿の里づくり事業に重点を置き、椿の植樹や実集め体験、産業まつりの支援など、幅広い活動を行っています。椿の実集めを促すチラシや地域資源としての椿の冊子、小学生の地域学習の教材など製作物も様々です。今後も、椿を活かした大船渡の振興や被災経験の伝承などに息長く携わっていきます。
明治大学平山ゼミ
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平山ゼミがこれまで作成した制作物

  • 大船渡市
  • 震災等復興活動支援センター  活動記録集
  • 岩手県大船渡市 観光サイト
  • 明治大学と岩手県大船渡市との連携事業について