第2回 10月15日(金)
キプロス島「世界遺産」ビザンツ教会堂群を巡る
元明治大学文学部教授 馬場 恵二
古代ギリシア史を専攻していた私には,今回の「総合テーマ」に謳われている「巡礼−その世界−」を真正面から論ずることは願い叶わぬことですが,キプロス島中央山地のトロオドス地方に点在するビザンツ教会堂群のひとつひとつをまるで物にとり憑かれたかのように「巡り歩いた」,その体験から得られた「収穫」の一部を紹介します。
教会堂壁面の「現場」に遺されている各種の「奉納碑文」に共通するビザンツ碑文特有の「難解さ」は,2000年春,キプロス島で初見の私に屈辱的な「衝撃」を食らわしたものでした。しかし,その苦渋の「出会い」こそ,私を「ビザンツ教会堂巡礼」に向かわせた決定的な「要因」でしたので,今回の話は,キプロス島「教会美術案内」ではなく,碑文解読から得られる新たな視点・問題点を紹介します。書体による碑文年代幅の推定,十字軍時代の到来とキプロス島,そして「キリスト再臨図から読み取れる東方教会世界の「天国・地獄」観などの諸点について,私が暗中模索の手探り状態で辿った「行脚」の道程を具体的に明かします。
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