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卒業生(総合数理学部在学)3名が学会で受賞

2023年11月04日

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左から村上さん、三瓶さん、笠原さん

 明治大学総合数理学部先端メディアサイエンス学科に進学した卒業生3名(三瓶智輝さん、村上崇斗さん、笠原暢仁さん)が、9月に行われた情報処理学会EC(エンターテイメントコンピューティング)2023でそれぞれ表彰を受けました。3人はともに宮下芳明教授の研究室に所属し、今回の受賞も教授との共同研究です。明治大学中野キャンパスで3人に各自が取り組んでいる研究や明治高校・中学校時代の思い出などを聞きました。

自由で刺激的な宮下研究室

司会(以下、司):みなさんの研究について簡単に教えてください。

笠原さん(以下、K):私は人間の行動をモデル化するという理論的な研究をしています。人がパソコンやタブレットなどのデバイスを操作するときに何を考えているのか、操作をどのように認識しているのかについて研究しました。このテーマでドイツの国際学会で発表することもできました。

村上さん(以下、M):私は、ワインやチョコレートなど様々な飲食物の味を化学的に再現するためのシステムの開発を行っています。基本五味などの物質を合成して、今あるものを異なる産地、時代の食品の味に変化させるなどの実験をしています。この研究により、例えば、何十年も前に作られたワインを今からは作ることはできませんが、今あるワインをベースに味を再現することができるようになったり、未知の味を作ることにもつながります。

三瓶さん(以下、S:私はAgent Agoraというソフトウェアを開発しました。これは、個性豊かなキャラクター同士にブレインストーミングをさせて、アイデアを生成するシステムです。生成AIの活用により、テーマとキャラクターを設定すれば自動でブレインストーミングが進行するようにしました。キャラクター同士でアイデアの相互作用もあるので、多様なアイデアが生まれます。

 

【笠原さんがドイツで発表したクロッシングタスクの性能指標に関する研究はこちら】

Throughput and Effective Parameters in Crossing | Extended Abstracts of the 2023 CHI Conference on Human Factors in Computing Systems (acm.org)

 

 

司:みなさん、同じ研究室なのに多彩な研究をしているのですね。総合数理学部先端メディアサイエンス学科の宮下研究室に所属していますが、どんな雰囲気ですか? 

K;とっても自由で多彩な研究をしている学生が意見を出し合って、研究が生まれています。例えば、私は、ゼミの友人がアメリカの学会で報告した成果のセカンド・オーサーになっているのですが、これは研究室での他愛のない会話からアイデアが生まれ、それが成果として実現したからです。そのような例はほかにもたくさんあります。

M:宮下研究室で、私は「機械屋さん」みたいな役割も担っています。テレビなどでも紹介されたTTTV3Transform The Taste and reproduce Varieties)も試作しました。自分の研究はもとより、ゼミのみんなが困ったら「こういったものを作れない?」と言いに来てくれます。そのおかげで、いろいろな研究の共同研究者にしてもらえて刺激的ですし、ファブリケーション技術を高めることができました。

K:僕たちの代は、コロナで大学12年生のほとんどをオンラインで過ごす生活でした。宮下先生もそのことを気にかけてくださっていたようで、ゼミに入室してから例年以上に情熱を注いでくれた気がします。私たちも、「失った2年」を取り戻すというわけではないですが、この2年間はとても凝縮した時期で、この代の学会での発表頻度も例年以上のものになっていると自負しています。

 

【村上さんの試作したTTTV3を使った研究が取り上げられたMEIJI NOWの記事がこちら】

MEIJI NOW » 【味覚はメディア】総合数理学部・宮下芳明研究室がTBSテレビ「実験ジャパン」で味覚を自由に操作するTTTV3を初披露

【村上さんの試作したTTTV3は以下の動画から】

TTTV3 (Transform The Taste and reproduce Varieties): 産地や品種の違いも再現する調味機構と LLM による味覚表現 | 宮下研究室 - 明治大学 総合数理学部 先端メディアサイエンス学科 (miyashita.com)

 

 

司:研究の面白さを後輩に伝えるとしたら、どんなところになりますか?

S:私は、明治高校・中学校でコンピュータ部に所属して、ゲームを作っていたこともあり、その延長線上で、好きなことを楽しんでいるという意識が強いです。ソフトウェアを制作して、誰かに使ってもらうことが純粋に楽しいです。今回受賞したAgent Agoraを作るきっかけは、宮下先生がお話していた「個性豊かなAIエージェントを使ったアイデア出しのインタフェース」という発想を面白そうだと思ったことです。実際に試作してみて、先生をはじめとした研究室の方々と議論する中で、放置ゲームのようなデザインへと発想が膨らんでいきました。ある意味、高校でやっていたことの延長線上にあり、実際、キャラクターやGUI(グラフィカルユーザインタフェース)のテイストは、高校時代のゲーム作りや動画編集の影響が色濃く反映されています。

M:私は三瓶さんがソフトウェアづくりで感じる楽しさを、ものづくりというハードウェアでの設計で感じているような気がします。自分の思い描いていたものを実際動かしてみて、思い通りにできたときの達成感はたまりません。

K:私は理論研究なので、ちょっと二人とは違うかもしれませんが、理論上の計算式やアプローチを変えてみて、それが理論的にハマると気持ちいい。そして、理論を人間の行動に応用したときに、実際に人間行動を説明できるとなお楽しいといったところでしょうか。

ポスターを使って研究内容を説明してもらいました

明治高校・中学校で感じた付属校の良さ

司:充実した日々を過ごしている皆さんに明治高校・中学校での日々を振り帰ってもらいましょう。何か思い出に残っていることやよかったことなどがありますか?

M:私は高校から入学しましたが、高2で受講した高大連携講座が思い出に残っています。高校に入学したときには、フロリダ・ディズニー研修にあこがれて、何となく国際日本学部に進学したいと思っていました。しかし、高大連携講座で、総合数理の学びに触れ、3DCAD3次元コンピュータ支援設計)などに興味を持ちました。高3で、プレカレッジプログラムを使い実際に総合数理学部の授業を受け、ますますこの分野を研究したいと思いました。

K:私は中学から入学しましたが、村上さんが言うように、進路の情報がたくさんあるというのは付属校の良さだと思います。大学受験があると「まずは受かってから、受かった中でどこに進学するか」を決めるというのが現実的なのだと思うのですが、明治高校ではほぼ全員が第一志望の学部に進学できるので、高校で勉強をしながら進路に悩めました。そのため、安直な進路決定にはならなかったと思っています。

S:私は先ほど話したように、コンピュータ部での活動や様々な動画制作がやはり一番の思い出です。そう思うと、高校時代からゲームや動画のようなコンテンツを通した表現について考え続けてきたような気がします。

K:あとは、大学受験がない分、自分のために使える時間が多いことでしょうか。私は子どものころからやっていたカーリングを高校3年生でも継続できました。

M:高校3年生は部活動を引退するケースも多いので、時間に余裕がありました。私や笠原くんはJAVAの勉強を独学でやっていました。最近はYouTubeに様々な動画が上がっているので、やろうと思えば自分でどんどん進められます。

S:私もUnityというゲーム開発ソフトの勉強を始めていました。大学進学を見据えて、やりたいことを進められるのは付属校の利点だと思います。

 

司:最後に、現役の明治生にメッセージはありますか。

K:まずはちゃんと勉強をしておいた方がよいと伝えたいです。大学受験に比べると、どうしても普段の勉強への緊張感が弱くなってしまうのですが、高校・中学でやった内容が大学の学びに直結します。大学に入った後に「これ、やったな。なんだっけ?」と確認することが増えました。真面目に授業を受けないと、そんな時にうまく思い出せないと思うので、ぜひ授業をしっかり受けてほしいです。「やったな」という引き出しさえあれば検索して思い出せるので、そういう引き出しをいっぱい作るといいと思います。受動的に知識を受け取れるのは高校までですから。

M:好きなことを見つけてほしいです。自分は高大連携サマーセミナーや高大連携講座をきっかけに自分の進みたい道に出会うことができました。受け身になっていると、チャンスをつかめないので、自分から動いてみてほしいと思います。ただ、高校から大学に学びがつながっている人もいますが、大学に入ってから自分の好きなことが見つかる人も周りにたくさんいるので、「あまり焦りすぎないでもいいよ」とも言ってあげたいです。

S:村上さんの話と逆になってしまうかもしれないのですが、高校のカリキュラムの良いところは、「興味ない分野も頭にインプットされる」ところだと卒業した今になって思います。大学に進み専門性が高まると、基本的に自分の興味のあるところしか勉強しなくなってしまいます。当時は大変でしたが、高校2年生まで文理を分けず、様々な学びを得られたことは自分の財産だと思います。例えば、今回開発したAgent Agoraの「Agora」とは古代ギリシャ・ポリス(都市国家)の「広場」を意味する言葉です。当時は高2の必修科目だった「倫理」で、Agoraで民主政治が繰り広げられ、様々な意見が飛び交っていたことを学び、このネーミングを思いつきました。将来、何が役に立つのかはわからないので、幅広い知識をつけてほしいと思います。

 

【三瓶さんが開発したAGENT AGORAの動画はこちらの記事から】
【総合数理学部】先端メディアサイエンス学科4年の三瓶智輝さんと宮下芳明教授がエンタテインメントコンピューティング2023でデモ最優秀賞を受賞 | 明治大学 (meiji.ac.jp)

 

司:卒業論文の提出まであまり時間がない中、長い時間、インタビューにお付き合いいただきありがとうございました。これからも大学での研究に、そして就職・進学してからも新たなステージで頑張ってください。

 

3人が所属する宮下芳明教授の研究室のホームページはこちら】
宮下研究室 - 明治大学 総合数理学部 先端メディアサイエンス学科 (miyashita.com)

情報処理学会EC(エンターテイメントコンピューティング)2023 表彰内容

●デモ最優秀賞

・「TTTV3を用いたワインの味表現」金 珉志村上 崇斗宮下 芳明 (明治大学)

・「Agent Agora:異なるロールのエージェントを集めて放置することでアイデアを得るシステム」三瓶 智輝宮下 芳明 (明治大学)

デモ優秀賞

・「産地の異なるカカオの味の違いを定量化し純物質で再現する手法」彭雪儿深池美玖笠原暢仁村上崇斗吉本健義湊祥輝富張瑠斗 (明治大学), 宮下藏太川田健晴 (三井物産株式会社), 宮下芳明 (明治大学)

優秀研究賞

・「TTTV3 (Transform The Taste and reproduce Varieties): 産地や品種の違いも再現する調味機構と LLM による味覚表現」宮下芳明村上崇斗大友千宙深池美玖 (明治大学)

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