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「トビタテ!留学JAPAN」体験記②

2024年02月12日

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2023年度、明治高校3年生のなかから2名の生徒が「トビタテ!留学JAPAN」に採用され留学を経験しました。このプロジェクトは、文部科学省を中心とした産学官一体の留学促進キャンペーンで、2023年度から新たなビジョン及びコンセプトを掲げた第2ステージ(2023年度~2027年度)として実施されているものです。前回、イギリス・リバプールへの留学を紹介してくれた岡さん(高3)に続き、今回は、フィリピン・セブ島に留学した狩谷さん(高3)からお話を伺いました。

ボランティア活動をしたフィリピンの私立幼稚園

「トビタテ」で知った留学の多彩な可能性

インタビュアー(以下、イ):
 トビタテを知ったきっかけは何だったのでしょう。
狩谷さん(以下、狩):
 SNSでつながっている小学校のころからの友人が、文部科学省が運営する「せかい部」というインスタブラムの運営に携わっていて、様々な情報をアップしていました。そこで「トビタテ」のことを知りました。お恥ずかしいのですが、最初に驚いたのは奨学金の額でした。どこか海外に行きたいとは思っていましたが、費用のことが気にかかっていたので、この奨学金がチャレンジを後押ししてくれました。


イ:
 フィリピンを留学先に選びましたが、最初から決めていたのでしょうか。
狩:
 いえ。当初は「どこかに行きたい」という漠然とした想いからスタートしたので、まず「トビタテ」のサイトにあった「留学大図鑑」という先輩の体験記を調べました。それまでは留学といえば「先進国への語学留学」というイメージが強かったのですが、発展途上国も含めて様々な留学パターンがあることを知りました。さらに他のサイトなども調べる中で、フィリピンでの研修に関心を持つようになりました。

ぎりぎりまで手直しした面接準備

面接でのプレゼンのために準備した手作りの資料

イ:
 応募に向けた準備は順調でしたか。
狩:
 準備する書類の量が多くて大変でした。書類作成では学校の先生にも相談に乗ってもらいながら計画を練り上げました。書類選考を無事に通過し、二次面接に進みました。前日も面接練習をしてもらったのですが出来は散々でした。それでも何とかしたかったので、直前まで手書きのプレゼン資料を手直しし続けました。
 面接会場では、楽器を持っていたり、民族衣装を着たりした受験者もいて圧倒されました。それでも、10分間のプレゼンと10分間の質疑応答では、とにかく自分の熱意を伝えようと必死でした。合格を頂いたときにはとても嬉しかったですし、情熱を持った同世代と出会えてとても刺激になりました。
 

イ:
 出発までにどのような準備をなさったのでしょうか。 
狩:
 航空券の手配は自分でやったのですが、フィリピンでの研修先の手配については情報が少なく、また初めての海外ということもあり、エージェントのお世話になりました。途上国の衛生環境の改善を目標に留学計画を立てたので、現地での活動のために、啓発ポスターを作ったり、ばい菌スタンプといった使えそうなグッズを揃えたりしました。また、日本文化を理解してもらうために、日本遊びのための道具も準備しました。

通じない言葉、貧富の格差、揺さぶられた価値観

毎日通った道のりです。日本では目にしないトライクという乗り物を使いました。

イ:
 そしていよいよ出発ですが、フィリピンではどんな生活をしていたのですか。
狩:
 8月10日に出発し、セブ島・ボゴシティのホームステイ先に直行しました。25日に帰国するまで16日間の滞在でした。平日は、午前に公立小学校、午後に私立幼稚園でボランティア活動をしました。小学校は先生1人に対して児童4人程度の小規模なクラスに入り、毎日4時間の授業がありました。授業の補助をしたり、暇を持て余した児童の相手をしたり、日本遊びを教えたりしていました。昼ごろに幼稚園に移動し、3歳のクラスで保育士の補助をしました。衛生環境の改善という目標があったので、どちらの施設でも子どもたちに手洗いの大切さなどを伝えようとしましたが、理解してもらうのは難しかったです。休日は2回しかありませんでしたが、ホストファミリーと海に行ったり、お買い物に行ったりしました。
 

イ:
 現地で驚いたことなどがありますか。
狩:
 驚いたというか、困ってしまったのが、児童や子どもたちはもちろん、街の多くの人々も英語をしゃべらないので、コミュニケーションがうまく取れなかったことです。先生やスタッフの人たちは英語を話すので、彼らを通すか、ボディランゲージでコミュニケーションを取りました。言葉の大切さを実感しました。ただ、算数を教えるときには言葉が違っても結構通じて、数字は世界共通なんだという発見もありました。
 

イ:
 言葉が通じないのは大変でしたね。
狩:
 最初は戸惑いましたが、みなさん、優しく受け入れてくれました。また、フィリピンの人たちには、日本人よりも笑顔が断然多いと感じました。ちょっと不思議に思って、幼稚園の先生と話したら、フィリピンでは自分の幸福度を聞かれたら、必ず満点で表現するように子どもたちに伝えているということでした。そうすることで、物事をポジティブにとらえるようになり、よりよい人生につながると教えてもらいました。私にとってとても新鮮な考え方で、自分の価値観が揺さぶられました。
 

イ:
 そのほかに現地で感じたことはありましたか。
狩:
 公立の小学校と私立の幼稚園に行かせてもらい、やはりその間の格差を感じることはありました。私が行った地区では、私立の幼稚園には裕福な生徒が通っていて、公立の小学校には貧しい人しかいませんでした。それほど距離は離れていないのに、子どもたちの身なり、進路、施設など、様々な点で大きな違いを感じました。さらに、ある日、小学生に英語で「あなたもお金持ちなんだね」と言われて、自分も呆然としました。なぜ急にそう言われたのかはわからないのですが、考えてもいなかったことを言われて「そんな風に見られているのか」と衝撃を受けました。
 貧困や格差については学校の授業や教科書などで学び、自分も知った気になっていましたが、現地に行って現実を目の当たりにして理解が深まりました。日本のような環境が当たり前ではないということは、同世代のみんなにも知ってほしいと感じました。
 

イ:
 それは考えさせられる出来事でしたね。日本に帰ってきて、改めて何か感じたことはありますか。
狩:
 一概には言えることではないとは思いますが、日本が安心で安全な社会なんだと実感し、日本の良さを再認識しました。ただ、日本では、みんなが他人の目を気にし過ぎていて、フィリピンの方がより自分の意志を優先して自由に過ごしているような印象を受けました。この経験を通して、自分自身の人生観が少し変わったように思います。 

広い世界にトビタッテみよう!

幼稚園の壁に貼ってあったもの。前向きな価値観を育てていることが分かりました。

イ:
 最後に後輩へのメッセージをお願いします。
狩:
 私は「トビタテ」を調べるまでは、「留学って語学留学だけでしょ」と思っているような人間でした。そんな私が留学を通して、これまで自分が過ごしていた「世界」は実は狭くて、自分の知らない「世界」が大きく広がっていることを実感できました。また機会があれば、いろいろな国に行ってみたいと思っています。留学にも様々な可能性があるので、興味がある人はぜひ調べてみてください。

子どもたちと作って遊んだ「福笑い」

全校生徒の前で発表した際のパワーポイント資料

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