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知的財産ポリシー

2004.10.26制定
<抜粋版>

I. 社会連携活動の推進

1. 明治大学知的財産ポリシー制定の意義

 本学は,「社会連携」を「学術研究」「教育」に加えて,大学の使命として位置づけている。
 これまでも学術研究の成果は,個々の教職員の弛まぬ努力により,主に学会発表,学術論文,著作,企業などとの共同研究等を通じて社会に還元されてきた。このような社会連携を一層促進し,現在までに培われた本学の社会からの信頼や評判をより確固たるものにするために,明治大学知的財産ポリシー(以下「本ポリシー」という。)を制定する。

2. 社会連携活動の種類

(1) 社会連携活動の定義
 社会連携活動とは,教職員等の自由な発想に基づいて行なわれた学術研究や蓄積された教育の成果を活用し,社会に直接貢献する活動全般のことを指す。
社会連携活動は,次の活動に分類できる。
1 産業利用目的の技術移転活動
2 学術交流活動
3 その他の社会連携活動
 社会連携活動の分野は,社会科学,人文科学,自然科学の領域を問わない。また,連携すべき社会とは企業の他,地元地域,地方行政,国家等,非常に広範囲に及ぶ。
(2) 社会連携活動の種類
<1> 産業利用目的の技術移転活動
 産業利用目的の技術移転活動とは,教職員の学術研究の成果である技術を,営利団体である企業等へ移転するために行なわれる活動全般を指す。

<2> 学術交流活動
 学術交流活動とは,より高度な学術研究のため,本学で創出された研究成果を,本学外の他の研究機関等に直接提供する活動全般を指す。なお,他の研究機関等との研究であっても,製品化のための応用開発研究に伴う移転活動は「産業利用目的の技術移転活動」に含まれるものとする。

<3> その他の社会連携活動
 その他の社会連携活動には,上記<1>,<2>に該当しない社会連携活動の全てが含まれる。

3. 本ポリシーの適用対象者

 本ポリシーの対象者は,次のとおりとする。(以下,本ポリシーの対象者を「教職員等」という。)
●本学の専任教職員
●本学の客員研究員,本学研究支援者制度による研究員,非常勤教職員及び学生のうち,本ポリシーの適用を受けることについて同意をした者 

4. 社会連携活動の推進体制

(1)社会連携促進知財本部運営委員会
 社会連携促進知財本部の管理運営に関する必要事項を審議する全学的な機関として,社会連携促進知財本部運営委員会を設置する。
(2)社会連携促進知財本部
 本学の知的財産の創出,取得,評価,管理,保護及び活動に係る戦略策定,および日常活動に関する意思決定機関として社会連携促進知財本部(以下「知財本部」という。)を設置する。また,知財本部の内部に,知的資産センターおよびインキュベーションセンターを設置する。 

II. 知的財産権の帰属方針

1. 使用する用語の定義

(1) 「発明等」の定義
 本ポリシーの「発明等」とは,以下の研究・教育の成果として定義する。
●特許権の対象となる発明
●実用新案権の対象となる考案
●意匠権,回路設置利用権および著作権の対象となる創作
●品種登録に係る権利の対象となる育成
●ノウハウ等の案出
●研究・教育の成果である有体物の創作・取得
(2) 「職務関連発明」の定義
 本ポリシーの「職務関連発明」とは,以下のいずれかに該当する発明等として定義する。
●本学の研究費を用いて実施された研究,本学の施設,設備若しくは装置を利用した研究,又は本学の業務として認定された活動に基づき教職員等が行なった発明等(ただしデータベース,コンピュータ・プログラム以外の著作物を除く。
●本学の発意に基づき実施された教育成果で,本学の名義で公表,あるいは本学外への移転が予定される発明等
(3) 知的財産と知的財産権
 知的財産とは,教職員等が行なう知的活動(研究および教育)の成果として,財産的価値を有し,必要であれば対外的に移転できる財産全般を指すものとする。
 知的財産から生じる権利(以下「知的財産権」という。)には,出願,登録等により法律で保護される権利のほか,特許を受ける権利に代表される発明等により生じる権利の全般を含むものとする

2. 知的財産権の大学帰属

 職務関連発明に係る知的財産権は,本学に帰属する。

3. 大学帰属とされた知的財産権の維持・管理

 大学帰属とされた知的財産権の出願,登録,保管,譲渡,廃棄等に伴う一切の維持・管理は,本学がこれを行なうものとし,その費用は原則大学負担とする。

4. 教職員等が異動した場合の取扱い

 教職員等が異動(退職,あるいは契約満了等を含む)した場合においても,異動前の発明等が職務関連発明に該当するのであれば,本学にその権利が帰属する。 

5. 不服申し立て

 本部長による職務関連発明に該当の当否の決定等に不服のある教職員等は,その決定等の通知を受けた日から2週間以内に,不服を申し立てることができるものとする。 

III. 発明等の届出と権利の承継等の判断方針

1. 特許権等の発明等の届出

下記に記載する職務関連発明については,権利の承継判断の対象とする。
●特許権の対象となる発明
●実用新案権の対象となる考案
●意匠権,回路設置利用権の対象となる創作
●品種登録に係る権利の対象となる育成

2. 著作権の創作についての届出

 下記に記載する著作権の創作については,権利の承継判断の対象とする。
●データベース及びプログラムであって,第三者に対し譲渡又は利用許諾する予定があるもの又は財産的価値が顕在化し技術移転のために本部長が特に必要と認めるもの
●教育教材に関する著作物であって,第三者に対し利用許諾する予定があるもの又は財産的価値が顕在化し技術移転のために本部長が特に必要と認めるもの

3. ノウハウ等の案出に関する届出

 下記に記載するノウハウ等の案出については,権利の承継判断の対象とする。
●本学が承継した職務関連発明と密接な関係を有し,一体として技術移転される可能性があるもの
●共同研究の成果であって,当事者間で一定期間秘密管理するとの合意がなされたもの
●財産的価値が顕在化し,技術移転のために本部長が特に必要と認めるもの

4. 有体物の創作・取得に関する届出

 職務関連発明に該当する有体物については,創作・取得した時点で大学帰属として取り扱うため,原則的に発明等届出書による届出は不要とする。

5. 承継等の判断

(1) 承継等の決定と通知
 権利の承継・出願・審査請求・放棄・返還等の判断は本部長が行なう。
(2) 承継の判断基準
 権利の承継の判断に際しては,技術移転の可能性を基準にする。原則として,技術移転の可能性がない発明等については,本学は権利を承継しない。

6. 出願後の補正手続き,継承判断等の大学への一任

 発明者等は,出願後の補正手続き・継承判断等を本学へ一任することに同意するものとする。 

IV. 大学外部との契約締結方針

1. 産業利用目的の技術移転活動に係る契約締結方針

 産業利用目的の技術移転活動に係る契約については,契約リスクを考慮し,契約時にあらゆる措置を講ずる必要があるため,知財本部の承認と適切な関与のもとで行なわれなければならない。

2. 学術交流活動に係る契約締結方針

 学術交流活動については,更なる研究水準の高度化に向けて,教職員等の自発性を尊重しながら積極的に推進しなければならない。それに係る契約については,教職員等,あるいは部局の適切な判断に基づいて,柔軟で簡素化された契約手続きに沿って進められるように配慮するものとする。

3. その他の社会連携活動に係る契約締結方針

 その他の社会連携活動の実施可否の決定は,本ポリシー,利益相反ポリシー,あるいは本学で定める他の関連する規程に沿って行なわれる限り,直接実施する教職員等,あるいは部局の判断に基づき行なわれるものとする。

Ⅴ. 報償金等の支払方針

1. 発明等のインセンティブの確保

 本学は,産業利用目的による技術移転活動として,本学が承継した知的財産権を企業等へ譲渡,又は実施許諾等することにより収入を得た場合には,その収入額の一定割合を発明者等に対して配分するものとする。また,本学が承継した知的財産権について特許を出願したとき及び特許権が付与されたときには,発明者等に対し,一定額を支払うものとする。

2. 発明者等の転退職・死亡に伴う報償金の取扱い

 報償金を受ける権利は,その権利を有する発明者等が転籍し,又は退職した後も存続する。

VI. 研究に携わる学生等の取扱い方針

1. 学生の社会連携活動への関与の留意事項

 教職員等は,学生等を産業利用目的の技術移転活動に関与させる場合および本学の設備や研究費を用いて研究を行なわせる場合においては,学生等に,秘密保持や発明成果についての帰属等について,よく説明した上で,当該学生等から本学に対し,当該条項を含む誓約書を提出させるか,または当該学生等と本学間で当該条項を含む契約の締結に努めるものとする。

2. 学生が関与した発明等の知的財産権の帰属方針

 大学と契約関係にない学生等が,大学の設備や研究費を用いて,指導教員の指導のもとで,指導教員の発想を超えた発明等を行なった場合,または指導教員の発明等に自らの発想を付加して,共同発明に該当するに至った場合には,本学の教職員等は,当該学生を発明者等,あるいは共同発明者等として発明の届出手続を行なわなければならない。
 学生等が行なった発明等について,本学が出願経費を負担する場合,あるいは知財本部が技術移転活動を行なう場合には,学生等はその権利を本学に譲渡する契約を締結しなければならない。なお,報償金については,学生等の発明等に対する寄与分を考慮してうえで支払う。

VII. 大学発ベンチャーの優遇措置方針

 本学は,本学の学生および教職員等が本学の所有する知的財産権の実施により,大学発ベンチャーを起業する際に,その申し出により知的財産権の「譲渡」や優先的な実施権の付与,あるいはインキュベーション施設や本学内の研究施設の利用などの特別な優遇措置を講じることができるものとする。
 なお,これらの優遇措置を付与する場合は,別に定める「利益相反ポリシー」に則り,決定するものとする。

VIII. 知的財産権の種類とその取扱い方針

1. 特許権等の取扱い

(1) 発表と特許出願の両立の責務
 教職員等は,研究成果として学術論文や学会等での発表で公知にする際には,出願までに要する余裕期間(通常は3ヶ月程度)を確保した上で,発明等届出書を知財本部に提出することを原則とする。
(2) 承継,出願,技術移転活動に際しての発明者等の協力義務
 発明等の承継,出願,技術移転活動に際し,発明者は知財本部および知的資産センターの職員等に対し,特許法で定められる発明者全員の申告,および発明の詳細な内容,知りうる限りの先行技術文献,考えられる事業用途,ライセンス候補先等の情報を積極的に提供しなければならない。また,知財本部および知的資産センターの職員は,発明者の研究の妨げにならないように,可能な限り配慮しなければならない。 
(3) 発明者等への権利の返還
 本学は,特許法に定める特許出願の審査請求までの期間(現行では3年間)を目安に,技術移転活動を行なうものとする。当該期間満了に近づいても技術移転先が定まらない発明案件について,本部長が権利を維持すべきでないと判断したものについては,発明者が希望すれば出願特許の権利化を自費で行なうことができるよう考慮しなければならない。
なお,本部長は,出願特許の権利範囲が広いか,あるいは高い移転流通性と事業性を有する発明については,技術移転先が定まっていないものであっても,大学が費用を負担して審査請求を行なうものとする。 
(4) 実用新案権,意匠権,育成者権の取扱い
 実用新案権,意匠権及び育成者権(種苗法)については,特許権の対象となる発明の取扱いに準じるものとする。 

2. 著作権等の取扱い

(1) 著作権の原則的な帰属の方針
 教育・研究等を基礎にして作成される論文や教職員等が創作した教材等(テキスト,参考書等),学内・学外の講演等のために創作された原稿等に関する著作権は,他の技術移転の妨げとならない限り,創作者本人に帰属させることを原則とする(ただし,教育関連発明の定義に該当する著作権およびデータベース及びプログラムに該当する著作権を除く)。
(2) 職務関連発明に係るデータベース及びプログラムの取扱い
1 データベース及びプログラムの定義
本ポリシーで用いるデータベース及びプログラム(両者を合わせて「データベース等」と記載する)とは,著作権法の定義と同一とする。

2 データベース等の著作権の大学帰属
著作権の原則的な取扱いに係わらず,職務関連発明に係るデータベース等の著作権については,原則として,本学がその権利を承継するものとする。承継手続は,特許権の対象となる発明に準じて取り扱うものとする。 
(3) 回路配置利用権の取扱い
 データベース等の著作権等の取扱いを準用するものとする。 

3. 有体物等の取扱い

(1) 有体物の定義
 有体物とは,研究・教育の過程および成果として,創作・取得されたものの総称である。
(2) 有体物の権利の大学帰属
 職務関連発明に係る有体物の権利は,創作・取得の時点で本学に帰属する。
なお,企業等から,無償にて既に販売されている商品等をサンプルとして提供を受ける等,取得にあたって大学の経費等を一切使用せず,かつ,知的財産権,あるいは秘密情報としての管理が不要と考えられるものについては,本学帰属の有体物に該当しないものとする。 
(3) 有体物の管理の原則
<1> 有体物の維持管理
有体物の維持管理は,有体物を創作・取得した教職員等が行なうことを原則とする。有体物を創作・取得した教職員等は,不必要な物理的劣化,あるいは記録媒体等の紛失や消滅等を生じないように,保管に際して十分に注意するものとする。

<2> 産業利用目的の有体物の提供
産業利用目的により有体物を企業等に提供するに際しては,知財本部が提供先企業等と研究材料提供契約(以下「MTA;Material Transfer Agreement」という。)を締結し,原則として有償で提供を行なうこととする。なお,MTAには,必要に応じて,提供を受けた企業等が提供された有体物を利用して新たに知的財産権を創出した場合の取扱い等を付すものとする。

<3> 学術交流活動における有体物の提供
学術交流活動により他の研究機関等に有体物を提供する場合であっても,本学に帰属した職務関連発明であって,未だ公開されていない秘密情報が有体物に含まれる場合については,知財本部の適切な関与のもとにMTAを締結することを原則とする。
上記に該当しない有体物の提供については,提供者となる教職員等は,受け入れ研究機関から「有体物受け入れの確約書」を入手し,当該確約書を適切に保管しなければならないものとする。
なお,提供先が当該有体物を適切に管理できない場合,あるいは提供先が産業利用目的で企業等へ無断で提供してしまう可能性がある場合等適当でないと判断される場合には,提供を行なわないものとする。

<4> 有体物の受入れ
産業利用目的による技術移転活動の一環として,あるいは学術交流活動の一環として有体物の提供を受ける場合で,企業や他の研究機関等からMTAの締結を求められる場合については,知財本部の適切な関与を必要とするものとする。また,「有体物提供の同意書」を求められた場合には,当該研究者の所属長の承認を得るものとする。
なお,受入れた有体物は,受入れ先が契約書にて合意した場合を除き,その他の企業等あるいは他の研究機関に再提供できないものとする。

<5> 有体物の処分(廃棄)
教職員等は,発明等届出書に記載義務がある有体物を除き,有体物の物理的劣化,および機能的劣化の状況を良く勘案し,自らの判断により処分できるものとする。
なお,有体物に環境等に有害な物質を含んでいる場合等については,専門的な知識を有する職員等の支援等を受ける等,最適な方法より処分するものとする。 

4. 秘密情報の取扱い

(1) 秘密情報の定義
 秘密情報とは,本学が秘密として管理する必要があると認めた情報であって,公然と知られていないものをいう。 
(2) 秘密情報の管理の原則
 本学における秘密情報の管理は,不正競争防止法の定めるところの「営業秘密」としての保護を享受しうるような方法にて行なうことを原則とする。 
(3) 有体物の秘密情報管理
 本学が大学外部の第三者に対し秘密保持義務を負っている秘密情報を含む有体物については指定された者以外には開示してはならない。特に重要な秘密情報を含む有体物は,その管理に万全を期すものとする。 

Ⅸ. 産業利用目的の共同研究・受託研究等に関する取扱い方針

1. 共同研究等の推進

 本学は,産業利用目的の共同研究,受託研究等(以下「産業利用目的の共同研究等」という。)により外部資金を取得し,更なる研究の高度化を図るものとする。
 知財本部は,社会連携の窓口として,より多くの教職員等が産業利用目的の共同研究等を行えるよう,本学の教職員等の研究シーズを企業等へ流布し,かつ学内の教職員等を啓発するものとする。
 産業利用目的の共同研究等については,全て知財本部が契約を締結する。

2. 共同研究等の成果の取扱い

(1) 成果の帰属および共有持分等の決定
産業利用目的の共同研究等において,本学の教職員による研究の結果創出された知的財産権の帰属及び持分は,当該知的財産権創出への寄与度に応じて決定することを原則とする。
(2) 不実施補償
 共同発明者がその権利を実施する場合には,不実施補償を求めるものとする。ただし,特殊な事情や合理的な事情がある場合には,柔軟に対処することとする。 

X. 産業利用目的の技術移転方針

1. 戦略的移転活動

 知財本部のライセンス担当者は,知財本部が定める技術移転方針に沿って,移転計画を策定し,移転活動を行なう。 

2. ライセンス担当者の役割

 知財本部長は,教職員等の研究分野別,あるいは発明等の案件別にライセンス担当者を決定することを原則とする。割り当てられたライセンス担当者は,発明等の発掘から出願,ライセンス候補先の選定,契約交渉,移転契約等の締結までの一連の移転活動を行なう。 

3. 教職員等の行動制限

 知財本部長に同意を得ることなく,発明者自らにより,譲渡,移転,許諾及びライセンス金額の交渉行為等を行なうことは慎しまなければならない。 

4. 移転契約方針

(1) 教職員等の研究基盤の確保
移転契約を締結する際には,将来の教職員等の研究基盤を制約しないように最大限の注意を払う。教職員等の基盤研究に直接関連する技術を移転する際には,原則として通常実施権,あるいは実施範囲を限定させた専用実施権の付与を行なう。
(2) フレキシビリティの確保
 競争が激化し,大学を基礎研究のパートナーとする企業が益々増え,大学が保有する知的財産権の譲受を望むケースも増えるものと予想される。本学は,社会連携をより加速させるため,企業等からの要望に柔軟に対応するように努めるものとする。 
(3) 利益相反への対処
 特定の企業等への技術移転が,利益相反の問題を顕在化させることがないように留意するものとする。