第3回 10月21日(金)
イスラーム思想における生と死
東京外国語大学 アジア・アフリカ言語文化研究所助教授 飯塚 正人
イスラームはユダヤ教,キリスト教と同じ神さまを信じているため,教義の多くをこの2つの宗教と共有しています。生と死をめぐる基本思想もまた例外でなく,この3つの宗教はみな,現世における生を,やがて訪れる終末(この世の終わり)の後,永遠の天国で暮らすための準備期間と考えているのです。むろん,生きている間に唯一神以外のものを拝んだりすれば,現世は永遠の地獄で苦しむための準備期間となってしまうわけですが。
一方,生と死を魂と肉体の結合/分離の問題と考え,特に肉体にこだわる点はイスラームの特徴かもしれません。終末に際して神はすべての人間を復活させ,天国行き地獄行きを決めるとされますが,いかに全能の神といえども,灰となった肉体を復活させることはできず,魂は永遠にさまようと言われます。イスラーム教徒が火葬を拒むゆえんです。
本日は,こうしたイスラーム信仰の基本紹介から始めて,現代の生命倫理論争やいわゆる「自爆テロ」にも言及しつつ,広くイスラーム思想の生と死を探ってみたいと思います。
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