商学部の現場

CASE04

授業の舞台は、
教室から現地へ

~「旅おこし」で学ぶ地域活性化~

閖上にて。地元の方の声に耳を傾け、真剣な表情の学生たち

「この授業は、とんがった人が多いんだよね」と、4年生の受講生が笑顔で答えた。今年で3年目となる、木村先生の特別テーマ実践科目「旅おこしによる地域活性化実践」を、彼は2年連続で履修している。
宮城県名取市閖上(ゆりあげ)と群馬県上野村の魅力を学生が発掘。それを伝えるための企画立案から実践までを行うのがこの授業の内容だ。
言葉でさらりと書き表すことのできない学生たちの熱い想いを、今回の取材では感じ取れた。学年の隔たりなく、活発に議論が交わされている教室。授業を担当されている木村先生は、雰囲気づくりをしながら学生の持つ意見を見事に引き出している。

ここに町があったなんて…

昨年からの取り組みが実現した「きずなトリップ2014」。
この企画は、2011年の東日本大震災で被災した宮城県名取市閖上の現状を知ってもらうことが目的で、震災の悲劇を忘れることなく伝えていきたいという学生の想いが結実したものだ。授業の舞台は教室から現地へ。深夜バスで訪れた現地の惨状を目の当たりにして、多くの学生は声を無くしたという。

「ここに町があったなんて、信じられない…」。津波に飲まれた町の現状のありのままがそこにあった。
「自分たちにできることは何なのだろう?」という問いは、現地の方々の声を聞くことから始まる。
「地域活性化とはただ地域にボランティアに行くことだと思っていました。実際に現地を訪れると、住民の中で盛りあげようとするものや、住民が愛しているものを把握し、外へ伝えることのお手伝いをすることだとわかったんです」。
その経験を授業で後輩へと伝えるその4年生の姿は、現場を知った頼りがいのあるリーダーそのものであった。

もとに戻すことが復興ではない

別の4年生の受講生は、去年閖上のチームに所属していた。元々地域活性化に興味のあった彼は、活動を通して学んだことを語ってくれた。
「地域活性化はよそ者・若者・バカ者から始まると言われている。実際に現地を訪れて、もとに戻すことが復興ではないことを知ったんです」。
塩害により再起不能に陥った田畑。避難したまま戻ってこない住民。震災の前の状態に戻すことよりも、「復(ま)た、興(おこ)す」ことが大切なんだと彼は語った。

問題意識を実行に移すきっかけに

今年からこの授業を受講している3年生の商学部生は宮城県出身。閖上に関する授業ということで興味を持ち、ガイダンスで木村先生の魅力に惹かれて受講を決めた。
「フランクな雰囲気で、かつ経験豊富な先輩たちと学べる」と笑顔で語る。様々なバックグラウンドを持った学生が受講し、ここまでアットホームな雰囲気の授業は、まさに商学部ならではのスタイルだと言えるだろう。
最近何かと耳にする「震災復興」「地域活性化」という言葉。強い想いを持った仲間と、お父さんのような木村先生と学んでいる学生は、社会に向けて着実な一歩を踏み出している。

Editor

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