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明治大学広報
第573号(2006年7月1日発行)
論壇
「自 問」
商学部長 福宮 賢一
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  夜空に瞬く星々は美しい。仰ぎ見るその光が、光年という尺度で測られる隔たりを越えて地上に届くと思い至るとき、私たちはさらに深い感慨を覚える。見えるのは、星たちの過去の姿であって現在のそれではないのだ。

 翻って大学を取り巻く環境に目を転じれば、同様の事実が重く存在する。今年の志願者の多くは、少なくとも18年の旅程を経てここに到達した若者たちであることを忘れてはならない。

 厚生労働省『人口動態統計月報年計(概数)の概況』(2006年6月)によれば、2005年の出生者数は約106万3千人に低下し、人口の自然増加数がはじめて約2万1千人のマイナスとなった。第二次ベビーブームのピーク時(1973年)の約209万2千人に比較して、少子化の深刻さを改めて感じる。

 出生者数の推移を見ると、1985年の出生者数は約143万2千人で、この世代は昨年20歳を迎えた。また、今年の現役志願者の大部分は1987年生まれで、当時の出生者数は約134万7千人である。この2年間でさえ約8万5千人の出生者減がある。その後、1988年131万4千人、1989年124万7千人と続き、以降1998年までは120万人台と110万人台の間を行き来する。しかし1999年生まれ以降110万人台からの減少傾向が始まり、ついに2005年の数値へと落ち込む。

 これらは、出生者数であり、そのまま将来の大学志願者数に直結するものではないが、大まかな趨勢を理解するには役立つと思われる。ここから自問がはじまる。

 出生者ベースにせよ、18年後に向けて約28万4千人減少する右肩下がりの状況の中で、本学はどのような備えをしなくてはならないのか? 幸い今年、志願者数は約7400名も増加し、全国屈指の位置を確保した。来年以降もこうしたポジションを維持するには、何をなすべきか? それが、一時の熱狂か、逆風の中での凪か、偶然の所産か、地道な教育研究努力や改革努力の成果なのか、これらを見極め、対応するにはどうすればよいのか?

 最善の方策を見つけることはできないのかもしれないし、それ自体存在しないのかもしれない。しかし、私たちは模索を続けなくてはならない。見通しの良くない将来に意気消沈し、志を低くするのではなく、揺るぎない高い理想を掲げ、その実現に向けて、誠実で着実な努力を積み重ねることこそが、教育研究機関としての本学の責務ではないか。自問する。

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