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明治大学広報
第578号(2006年12月1日発行)
本棚
「行動経済学」経済は『感情』で動いている
 
友野典男 著 光文社新書、950円
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 日本の消費者の選好は移ろいやすく「世界一我儘な消費者」と言われるが、「もったいない」の造語の国でもある。バイキングの食べ放題の選択と行動は、将来の費用と便益だけでなく、標準的経済学の排除する過去の取り戻せないサンクコストも反映している。ストレス解消などの要因も加わり、『沢山食べなければ』というプレッシャーがかかる。しかし、こうした行動は標準的経済学(近代経済学)におけるミクロ経済学では説明されない。

 消費者行動・消費者理論の核心は認知や判断に関して完全に合理的で、意志は固く、もっぱら自分の物質的利益のみを追求する「経済人(ホモエコノミカス)」仮説に置かれている。本書のサブタイトル“経済は「感情」で動いている”は、こうした経済人仮説を前提におく標準的経済学の出発点における陥穽の指摘であり、同時に感情、直感、記憶など心の働きを重視し、より現実の人間行動を反映する学問―行動経済学―の存在ならびに構築の意義を示すものである。

 学史的背景や統計理論の記述を含み、「効用」「利己的」など経済学の基礎概念からの問い直しから丁寧に構成された本書は、凝縮された著者のライフワークでもあり、その力量を改めて感じさせるものである。

藤江昌嗣・経営学部教授(著者は情コミ学部教授)


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