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明治大学広報
第581号(2007年3月1日発行)
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「茶室・数寄屋建築研究」
「神社建築史研究T」 

 稲垣 栄三 著、中央公論美術出版、12000円・13000円
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稲垣栄三先生が逝去され、早5年がたつ。穏やかな風貌と学風を惜しむ人が多い。

 このほど中央公論美術出版から著作集の発刊がはじまった。建築史家としての業績は世の知るところ。「神社建築史に関する研究」では日本建築学会賞を受賞。また、茶室・数寄屋研究においても巨擘であった。

 堀口捨己先生の奨めで、共に編纂された松平楽翁の「茶室おこし絵図集」は江湖の評価が高い。著作集の4は茶室・数寄屋。第T部は草庵茶室、第U部で起絵図解説。

 第V部では日本建築基礎資料集成でとりあげた五席の茶室研究を収める。起絵図の素晴らしさや魅力については、短文「起し絵図回想」が要を得ている。先生の音容に品格と典雅さを感じたのは私だけではないが、好みも密庵席や燕庵、灯心亭に傾くようで、思わず微笑を誘う。

 著作集Tの神社建築史研究1では自らの「建築学的であるより、民俗学に近い」との立場で考証と推測を重ねる伊勢と出雲の研究が印象深い。

 伊勢のもつ形式美と出雲の巨大性を対置しつつ、古代人の雄大な想像力と現代人の合理的思考を超えた技術の存在を述べる。知られるように、出雲で玉勝間の金輪造営図に示す束ねた三本の巨大柱が発掘されたのは平成12年のことである。


長岡功・広報部長(著者は元理工学部教授)


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