明治大学
English Korea Chinese Chinese 交通アクセス お問い合わせ サイトマップ
明治大学TOP > 明治大学広報 > 第589号(2007年11月1日発行)
明治大学広報
第589号(2007年11月1日発行)
本棚
「ローマ帝政の哲人セネカの世界 哲学・政治・悲劇
角田 幸彦 著 (文化書房博文社、3600円)
明治大学広報TOPへ
  本書の著者角田幸彦教授は、14年前にアリストテレス研究で文学博士を取得され、加えて本年2月にはキケローの政治哲学研究により政治学博士を早稲田大学から授与された。

 この研究は前1世紀のキケローを、ローマ精神の真の具現者、体系的哲学者として見事に描き切ったが、本書は、キケローと並ぶローマの大哲学者セネカの全体的人間像に肉迫し、その哲学の体系性の全貌を明らかにした、日本で最初の本格的なセネカ研究である。後1世紀の初期帝政期(カリグラ、ネロ等)のユリア・クラウディウス家(カエサルに連なる)の支配下での権力闘争と殺戮の中のセネカを、渾身の筆力で生き生きと描き出している。著者は、国家論や政治哲学の普遍的価値とされるものが、ローマの歴史と命懸けで格闘し、最後には悲劇的死を迎えたセネカ(およびキケロー)の哲学の中から生成してきたことを明らかにした(著者は、ローマ精神の核心が哲学と政治の絆の確立にあると喝破している)。また他の哲学者にはないセネカの特徴は散文(哲学)と韻文(悲劇作品)の絆であることを指摘すると共に、セネカの悲劇作品のヨーロッパ精神史への受容を論じている。

河口伸・理工学部講師
(著者は農学部教授)

前のページに戻る


ページ先頭へ

© Meiji University,All rights reserved.