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明治大学広報
第595号(2008年5月1日発行)
本棚
「精神のたたかい
─非暴力主義の思想と文学─
立野正裕 著 (スペース伽耶、2800円)
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 驚嘆すべきエッセイ集である。取り上げられる面々の多彩さが以下のごとくだからだ。トルストイ、ガンジー、第一次大戦期の文学者たち(レマルク、バルビュス、ロレンス、フォースター、ヘミングウェー)、日本の戦後文学者たち(大西巨人、花田清輝、大岡昇平)、そしてサイード、ソンタグ、イグナティエフらの欧米の知識人にまで及んでいる。

 だが驚嘆すべきは、著者の博覧強記だけではないエッセイの全編を貫く思いの毅さである。著者はそれを「想像力と意志が貫流する思考の風、すなわち非暴力主義への志向」と呼ぶ。その「風」には自己の生年(現行憲法の施行と世界冷戦の開始の年)という偶然事を、自らの実存に関わる必然への転化が伴った。一人の人との出会いを契機に意識化された「風」が、上記の人々の仕事とどのような切り結びを見せるのか。

 本書はその点で、著者の「精神のたたかい」の軌跡でもある。「風」とは古代ギリシアのプノイマ(人間生命の原理)の謂だ。まずは、この爽快な「風」をご自身でご実感あれ。

佐藤正紀・文学部教授 (著者は文学部教授)


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