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明治大学広報
第596号(2008年6月1日発行)
本棚
「夢の代価
─ケルト/フランス・日本の近代文化
浜田 泉 著 (成文堂、2500円)
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 本書は古代ケルト文化が、フランス・ロマン主義を経て、20世紀にまで連綿と受け継がれてきていること、さらには遠い日本にまでその「こだま」を投げかけていることを、実に広範な資料を駆使して、具体的に解き明かしている。

 古代ガリヤ=ケルト文化から発した反合理精神は、中世にはカトリックの民衆レベルの信仰の中に吸収され、地下水脈のように流れ続け、20世紀のプルーストによって輪廻転生を遂げることとなる。博学慧眼の士であれば、この辺までは追跡できなくもない系図であるが、浜田氏の驚くべき独創は、現代フランス文学の最先鋭、M・デュラスの晩年の作品の中にまで、遙かなケルトの死生観が色濃く漂うことを指摘し、さらには我が日本の幕末から明治期にかけて、熾烈・悠久の夢に生きた中江兆民、西郷隆盛の魂の中にも、和製アニミスムの形で、このケルト魂が通底していることを指摘している。この遠大な水脈をたどることによって、ケルトの夢を、現世を超脱する契機として我々に投げかけているのである。

川合信・文学部教授
(著者は文学部講師)


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