明治大学
English Korea Chinese Chinese 交通アクセス お問い合わせ サイトマップ
明治大学TOP > 明治大学広報 > 第602号(2008年12月1日発行)
明治大学広報
第602号(2008年12月1日発行)
本棚
「文化の起源」─人類と十字架
ルネ・ジラール 著 田母神顯二郎 訳
(新教出版社、4000円)
明治大学広報TOPへ
 人間文化の起源と発展を解明することは人類学者の永遠のテーマであろう。ジラールはそれを独自のミメーシス理論によって説明してきた。欲望の対立が生む暴力を抑えるために共同体内で行われる生贄の儀式こそ文化生成の源だというのである。重要なのは宗教であり、特にキリスト教は十字架により生贄の制度を人々に明かした。

 本書ではこのようなテーマを軸に、二人の学者によるインタビューという形式を借りて、著者自身がこれまでの仕事を振り返る。記述には幼年時代からの経歴、ミメーシス的欲望など重要な用語の解説、著者の理論に対する批判への返答、理論の源泉となった文学作品や論考の言及も含まれ、著者の難解な思想理解の一助となるはずだ。

 特に第4章では文化の進化がダーウィンの進化論に重ね合わせて考えられており、キリスト教を人間科学と位置付ける著者の姿勢が確認できて興味深い。2004年にフランスの「現代賞」を受けた本書は、精緻な訳業を介し、荒廃した世界で喘ぐ私たちに思考の糧を与えてくれるだろう。

 八木淳・文学部講師(訳者は文学部准教授)



前のページに戻る




ページ先頭へ

© Meiji University,All rights reserved.