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明治大学広報
第604号(2009年2月1日発行)
本棚
「語りのポリティクス」
─言語/越境/同一性をめぐる8つの試論
岩野卓司、若森栄樹 編
(彩流社、2500円)
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 この本は、明治大学法学部教員に他大学の教員が加わった研究会の成果をまとめたものである。テーマは、プラトン、キケロの政治学、ニーチェ、フロイト、ベンヤミン、ポール・ド・マン、野田秀樹、正岡子規、紀貫之。これを430字の書評でまとめることなんてできるわけがない。一言ですますことだってできる。序文に書いてあることを言えばいい。言葉は社会のうちにあると。言葉は曲げられ、打ち倒され、蔑まれ、時に撫でられ、愛撫さえされるものだ。そうして、言葉が何に到達しようとし、あるいは、到達不可能なものとなって宙に吊り下げられているのか。鍋料理屋のキッチンに吊り下げられた鮟鱇(あんこう)のように。言葉は言葉自身を越えて、「真理」にあるいは「生」そのものに到達するのか。この本の中でそれが問われる。言葉が屈折し矛盾しあるいは反転反復する時、言葉は政治的存在ともなり、幻想を生産するものとなる。言葉も語りも野田秀樹(ドン・ファン)的な誘惑と背信のうちでこの社会を生きる。その言葉の震え(アウラ)をこの本は伝えている。

土屋恵一郎・法学部教授(編者は法学部准教授、同講師)



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