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明治大学広報
第605号(2009年3月1日発行)
本棚
「志賀直哉」─暗夜行路の交響世界─
宮越 勉 著
(翰林書房、6700円)
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 本書は、『志賀直哉─青春の構図─』に次ぐ志賀直哉に関する2冊目の単著である。

 二部構成を取る本書の第Ⅰ部は九つの章からなり、『暗夜行路』との関連性をもつ10編ほどの短編が考察されている。たとえば『ある一頁』を取り上げた第一章では、主人公が小説の舞台を忙しく移動する様を「振り子運動」と捉えながら、ダイナミックな作品構造と『出来事』などの後続作品および『暗夜行路』「憐れな男」との相似性を指摘することで、この小説が初期作品群において極めて重要であることを提示した。

 第Ⅱ部は、『暗夜行路』自体を多角的に論じた七つの章からなる。作品構造を緻密に分析するなかで、卓抜な各挿話の間に有機的な関連性があることを指摘し、四部構成のこの作品を交響曲にたとえて、立体的で奥行きの深い長編小説の傑作として見事に再構築した。

 作品相互の比較はむろん、未定稿や草稿、手帳といった数々の資料を的確に参照し、また先行研究を丁寧に踏まえた本書は、志賀研究にとって手堅く不可欠な研究書である。

 冨澤成實・政治経済学部准教授(著者は文学部教授)



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