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明治大学広報
第608号(2009年6月1日発行)
論壇
「法科大学院のさらなる発展をめざして」
法科大学院長 青山 善充
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 法科大学院が2004年に設立されてから5年が経過した。この間、全国74校の法科大学院を修了して新司法試験に合格した者の数は、3回(06〜08年)の試験で4925人、旧試験合格者は941人であった。この数字からも、法科大学院制度は、法曹養成の中核機関として着実に定着しつつあると言えよう。明治大学法科大学院も、過去3回の司法試験で毎年全国第6位の合格者数を出し、高い評価を得てきた。

  その反面、出願者数の減少、司法試験合格率の低さ、司法修習後の就職難など、最近さまざまな課題が出てきた。弁護士会や一部政治家などから司法試験合格者数の抑制、予備試験の拡大ほか、法科大学院制度そのものへの批判が唱えられていることも事実である。

  これらの課題や批判に、どのように対処すべきであろうか。

  重要な三点について述べれば、第一は、法科大学院における教育の質をさらに向上させることである。具体的には、修了者の相当数が司法試験に合格、または法務博士の学位に相応しく活動できる学力をつけさせることである。この関係で、中教審の法科大学院特別委員会は4月17日、修了者の質の保障のため、各科目について全法科大学院に「共通的な到達目標」を設定すべきである、との報告書を公表した。法科大学院協会としても、すでに積極的にこのことに取り組んでいるところである。

  第二は、修了者が社会で活躍できる職域の開拓が急務である。昨今、司法研修所の修習を終えた者でも、弁護士としての就職が困難だと言われている。しかし、公務員や企業法務の分野では、いま法科大学院修了者に熱い視線が注がれている。もともと法科大学院制度は、法廷弁護士だけの養成を目指したわけではない。今後法科大学院は、人事院・総務省をはじめ各官庁、地方公共団体、各企業と連携を深めていく必要がある。

  第三に、どうしても避けて通れないのが、全国の法科大学院の入学定員削減だ。この問題は、各法科大学院が自校の利益のみ考え、制度全体の問題と捉える視点を欠けば、学生の不利益は増すばかりである。すでに国立の法科大学院は、ほぼ一律に2010年度入試から2割削減を打ち出し、問題を深刻に受け止める私立法科大学院もこれに続いている。明大も、現行定員200人を10年度から170人へ削減することにした。

  教育の質を高め、修了者の活躍の場を確保し、入り口の段階でも真に能力のある学生を厳選して入学させることが、現在、法科大学院全体に求められている。法科大学院制度が今後長く日本の社会に定着するか否か、いままさにその正念場にさしかかっている。



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