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明治大学広報
第612号(2009年10月1日発行)
本棚
「事件『大逆』の思想と文学」
吉田 悦志 著(明治書院、8000円)
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 明治天皇暗殺を企てたとして幸徳秋水ら12名が死刑に処せられた大逆事件(明治43年)が起きてから、来年で100年となる。

 本書はそうした事件として画策された「大逆」の徒である明治社会主義者たちと、そうした事態に当面した明治言論人たちの、事件「大逆」に向かう思想の軌跡をひろくその言説空間にさぐるという、貴重な努力の結晶である。

 吉田悦志氏は、大逆事件の文学的反映としては、やはり?外と荷風と啄木の3人の態度に集約できる、とした恩師平野謙のテーゼを出発点として、そうした「態度」を生み出す時代の言説空間の裾野にも眼を向けて行く。

 たとえば、これまで殆ど取り上げられることのなかった右サイドの小説、池雪蕾の『大逆陰謀の末路』や、明治40年代の「常識」的発語者でもあった山下重民の、乱子賊子を絶滅せよという「官民共に恐警戒すべし」への言及分析などは、本書の目玉のひとつとなっている。

 「君は変わったことに興味を持ったね」とも言われたという恩師の言葉に応える格好の書ともなっている。

 佐藤嗣男・商学部教授(著者は国際日本学部教授)



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