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明治大学広報
第612号(2009年10月1日発行)
本棚
「神楽坂の親分(オヤビン)猫」
黒川 鍾信 著(講談社、1300円)
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 猫を文学・芸術として捉えた「ねこ新聞」は、ニューヨーク・タイムズやフランスのテレビで紹介されたりシカゴ大の日本文学科で講読されたりするユニークな月刊新聞である。

 本書はその新聞に連載されたエッセイに加筆、決定版としたものだ。原稿依頼を受けた翌年が『吾輩ハ猫デアル』が発表されて100年であることにヒントを得た著者は、漱石の作品と同じ被毛の黒猫メメを主人公に擬人法で語らせる。

 メメは、神楽坂の路地奥にある脚本家や作家が原稿を書く旅館の猫である。連載が始まった時のメメは老猫であったが、不思議なことにこの頃から町のシンボル・キャットとして、ぽち袋やバッジの図柄、テレビ出演や四コマ漫画の主人公=親分(オヤビン)として有名になる。

 猫の生態に詳しい著者は、老猫を通して大人の隠れた遊び場だった粋な色町が、若者や観光客に占領されて変貌していくことに警鐘を打ち鳴らしている。  本書の形式はエッセイだが、小説的な仕掛けが楽しめる。猫好きの人には、思わず膝を打つ箇所が多々ある。

 金子邦彦・情報コミュニケーション学部教授(著者は元情報コミュニケーション学部教授)



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