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明治大学広報
第625号(2010年11月1日発行)
本棚
「スターリンの対日情報工作」
三宅正樹 著(平凡社新書、780円)
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 本書では、戦前から戦後にかけて明るみに出た三つの衝撃的な「スパイ」事件を中心にソ連の対日情報工作がわかりやすく解説されているだけでなく、研究の最新動向に精通している歴史学者だけがなしえるスリリングな叙述が展開されている。

 クリヴィツキー事件、ゾルゲ事件、ラストロボフ事件。共通しているのは、ソ連側に日本の重要な外交方針や政策が筒抜けになっていたことである。クリヴィツキーには、日独防共協定に関する交渉の中身を完全に把握されていた。日本がソ連攻撃ではなく南進する方針は、ゾルゲにだけでなく、日本人スパイによる別ルートでの情報がソ連に寄せられていたこともロシア側の資料により裏付けられ、戦後のラストロボフ事件で逮捕された日本人の一人が、そのスパイではないかとされている。西側への亡命、日本の官憲による逮捕、工作の発覚のきっかけは様々だが、多くの謎に包まれていた事件について、資料を丹念に読み込み、事実を確認していく歴史家のオリジナルな作業が新書版ながら追体験できる。


外池力・政治経済学部教授(著者は名誉教授)



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