第627号(2011年1月1日発行)
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「ライネフェルデの奇跡
―まちと団地はいかによみがえったか―」
澤田誠二 ほか訳 (水曜社、3700円) |
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百年前はドイツの「どまんなか」に位置する寒村に過ぎなかった。それが東西分裂後は東ドイツの西端となり、計画経済により産業都市に変貌する。人口は2500人から1万6500人に膨れ上がり、無機質なパネル工法の集合住宅が林立する団地ができた。しかし東ドイツが崩壊した。住民の脱出が始まり、やがてゴーストタウンとなるのは必定となった。
どこにでもある話だ。だが市当局は巨大団地がメルトダウンするというこの見たくも無い現実を直視した。そして都市インフラを維持できる程度の人口減に止める方策を模索した。それは縮退と減築をしながら、まちを活性化させるという絶対矛盾の試みであった。
市長と都市計画家たちはこの難問に取り組んだ。こうして「ライネフェルデの奇跡」は起きた。本書はその奇跡を追ったドキュメントの翻訳である。
いうまでもなく日本でも団地再生は喫緊の社会的課題である。「ライネフェルデの奇跡」を自らの研究対象として観察してきた訳者によるこの翻訳は実にタイムリーである。
菊池良生・理工学部教授(訳者は理工学部教授)
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