~Topics03~ボランティア団体同士の連携から、
新しい活動が生まれる

求められる支援の吸い上げ

災害発生後は、がれきを運んだり、泥をかきだしたり、復興のために人手が必要ですが、復興が進む一方で過疎化や少子高齢化など、様々な課題を抱える地域では、求められる支援が時間とともに変化していきます。
たとえば地域の子どもたちと身体を動かして遊ぶことも、運動不足の解消やコミュニケーションの活性化などにつながる支援活動です。こうした現地で求められる支援、言わばニーズの吸い上げと、こちらができることのすり合わせは、みなさんはどのように行っているのでしょうか。

井上(SHIP):私たちはボランティアを募集している専門のサイトでボランティア先を見つけているので、ニーズがつかみやすいというのはあると思います。ただ活動前に自分たちの団体の説明や、こういう活動を行いたいと思っているが問題はありませんか、という確認はしっかり行うようにしています。
活動の一ヵ月ほど前から、電話やメールで実施日調整などを打ち合わせしています。

松本(きずなInternational):私たちの場合、毎回同じ場所で活動を行っているので、その中で子どもたちに「何がやりたい?」と聞き、その声を形にしていくようにしています。1ヵ月半前には現地の窓口の方に「こういうことをしようと思っています」と提案し、内容を詰めるようにしています。現地の方の負担や迷惑にならないことが重要ですので、事前にミーティングを重ね、様々な状況に対応できるよう、計画や準備を心がけています。

駒井(LINKs):私たちは、毎回お世話になっているフリースペース担当の方にまずメールをしてから企画を始めます。冬休みですと9月ごろですね。2019年度は福島大学がクリスマス会を企画しているのを聞いて、私たちも科学教室をしようということになりました。

LINKs:フリースペースでの科学教室

LINKs:フリースペースでの科学教室

田中(阪井ゼミ):もともと七夕まつり支援は、「祭りを実施したい」という現地の希望を聞き、ゼミ生が現地に溶け込むことを目的に始めたものです。毎年、本番前の6月に現地でご挨拶と顔合わせを行い、8月の祭り期間に阪井ゼミ幹部が大船渡市長へご挨拶したり、現地新聞の取材を受けるなど、地元の方のお話を伺う機会があり、大船渡市の皆様には毎年学生がボランティアに訪れていることをご理解いただいています。ボランティアとして私たちに求められていることは何か考えながら、学生が中心となり七夕まつりの竹立てや飾りつけなどの準備から後片付けまで、本部と9つの町に分かれて活動しています。

阪井ゼミ:阪井ゼミ幹部と立命館学生代表が大船渡市長へご挨拶

阪井ゼミ:阪井ゼミ幹部と立命館学生代表が大船渡市長へご挨拶

安部(しんちーむ):私たちも現地の人の声をヒントに、翌年の活動内容を決めることがあります。例えば私たちが行っている支援のひとつに、地蔵にあんこを塗り供養する「あんこ地蔵尊祭り」の運営支援があるのですが、前年に「餅つきだけではちょっと寂しいんだよね」という声を聞いたことがきっかけになり、翌年は食べ物やゲームなどの屋台を出店し、これが好評でした。ただ私も、実際に現地で活動をはじめるまでは、復興支援というと「困っている人を助ける」というイメージを持っていました。しかし実際はそのように単純で一方的なものではなく、現地の人とボランティアが双方向で作り上げていくものなんですよね。活動の準備は、町役場と教育委員会の担当の方とメールで調整しながら企画していくので、こちらからの提案は5カ月前から始めています。

  • しんちーむ:あんこ地蔵尊祭りでの屋台出店の様子
  • しんちーむ:あんこ地蔵尊祭りでの屋台出店の様子

しんちーむ:あんこ地蔵尊祭りでの屋台出店の様子

現地での活動方法

-現地での宿泊施設の確保や交通費はどのようにしていますか。

井上(SHIP):陸前高田では現地の活動支援団体が小学校をリメイクしており、宿泊施設として利用させてもらいました。そういった施設がない場合は、近隣の安いホテルを利用しています。

安部(しんちーむ):新地町と大学の連携協定があり、新地町より宿泊場所の提供や、一部交通費の補助をいただいています。

田中(阪井ゼミ):七夕まつり実行委員会と盛青年商工会の方々のご協力で、町内の施設を学生の宿泊場所として毎年無償で提供いただいています。OBOGにも一部ご提供いただいています。そのため旅費は現地へ向かう交通手段のみです。公共交通機関を利用する場合は、大学の助成金を使用しています。

駒井(LINKs):南相馬市が運営している「お試しハウス」というのがあり、1か月は無料で宿泊できるので宿泊費は発生していません。交通費の一部は大学の助成金を使用してます。現在は2回までと決まっていますが、新しく発生した災害ボランティアには追加でもう一回利用できるとさらに参加しやすくなります。

松本(きずなInternational):町内の民宿や安いホテルを自分たちで探しています。地元にお金を落とすことが広い意味でボランティアにつながると思っています。被災地に行くことを目的にした大学の助成金も使用しています。宿泊費、交通費の助成があることで現地に行くハードルが下がりますね。

後輩への伝承

これまでの活動で得た知識や地元の方と接するのに気をつけたことなど、どのように後輩に伝えていますか。
特に今年度はコロナ禍ということもあり、現地に訪問ができず、思い通りに活動できない中、工夫したことはありますか。

安部(しんちーむ):今日みなさんとお会いして一番聞きたかったテーマです。私はサークル創設者と一緒に現地に行きましたので見よう見まねで覚えましたし、後輩も例年現地での活動の中で学ぶことが多いです。今年はそれができなかった。今は文章に残そうとしていますが、よい方法を探しています。これまでは活動終了時にフォームでアンケートをとり、サークル内で共有、振り返りを行っていました。そのデータはグーグルドライブで共有しています。

井上(SHIP):特定の場所にいったわけでないので、引きつぐ作法などは少ないですね。ただ、どこに行くにしても事前学習は大事なので、グループに分かれて調べておくことはあります。

SHIP:大学内でのサークルミーティングの様子

SHIP:大学内でのサークルミーティングの様子

駒井(LINKs):私もやはり現地をみたり先輩から話を聞いて覚えました。サークル内では夏休み前に下級生が先輩から話を聞く機会を設けています。現地では、夕食後に振り返りミーティングを行い、その日の子供たちの様子や気をつけたいことを共有していました。活動後の報告は、毎週昼のミーティングや、グループLINEのタイムライン、Instagram、Twitterで行っています。

田中(阪井ゼミ):毎年8月祭り本番前の6月にご挨拶と顔合わせのため、数人の4年生引率のもと2回に分けて3年生が現地訪問しています。七夕まつり支援は楽しい側面がありつつも、遊びに行っているのではないことを常に念頭に置いてもらうために後輩への引継ぎとして行なってきました。また現地では、様々な場所に分かれて活動しますので、一人一人が礼儀を忘れず、自分に出来ることは何かを考えながら行動するよう、活動前に阪井先生から必ずお話があります。活動全体を通して最も気をつけていることです。 活動後は秋学期最初のゼミで、活動中問題が起きたことを報告したり、阪井先生からのアンケートに各自記載し提出しています。

  • 阪井ゼミ:盛町灯ろう七夕まつり6月顔合わせ

    阪井ゼミ:盛町灯ろう七夕まつり6月顔合わせ

  • 阪井ゼミ:祭り前日BBQ交流会(全体)

    阪井ゼミ:祭り前日BBQ交流会(全体)

松本(きずなInternational):私たちも何かツールを使ってというわけではなく、現地で活動をみて覚えたし教わりました。例年は、年6回現地で活動した後、和泉キャンパスで報告会を行い、参加しなかった学生と共有しています。データはクラウドに蓄積しています。 今年はどうするかと考えた結果、夏にグループワークを行うことにしました。これまで何をしたのか、歴史を掘りかえし、南三陸のことなど学ぶ機会になりました。

きずなInternational:南三陸での学習支援

きずなInternational:南三陸での学習支援

コロナ禍での活動

コロナ禍で工夫したこと、実際に行ったこと、これまでの活動からのヒントがあれば教えてください。

駒井(LINKs):私たちは夏休みにZOOMを使ってオンラインでフリースペースを開催しました。環境系のイベントも企画。協力団体のオムスビの方がITに詳しく現地参加者の技術的なサポートをしてくれました。なんだか社会の空気が暗い中、ZOOMでも子どもたちの顔が見られたことは、気持ちを前に向かせる力になってくれました。来年の夏もコロナの状況次第ではオンラインで開催しようかという話になっています。

松本(きずなInternational):私たちも夏にオンラインを使った学習支援を行いました。最初は勉強を教えようと考えていたのですが、今年はコロナの影響で夏休みが一週間ほどしかないということを聞き、それならば息抜きになる方がいいだろうと、小学生とはクイズやゲームをして遊びました。中学生とは大学生の生活や課外活動を紹介して、進路を意識してもらうイベントを開催しました。
SNSで現地の情報を学生へ発信することや、学内のホームカミングデーでの海産物販売によるPR活動など、例年行っていることも支援につながるかもしれません。

  • きずなInternational:中学生向けオンライン学習支援の資料

    きずなInternational:中学生向けオンライン学習支援の資料

  • きずなInternational:南三陸PR動画(明治大学ホームカミングデー掲載)

    きずなInternational:南三陸PR動画(明治大学ホームカミングデー掲載)

田中(阪井ゼミ):例年、板橋区の「富士見まつり」でのさんま販売のお手伝いや、ホームカミングデーではカモメの玉子を販売し、その収益全てを大船渡市で行うゼミ主催のスポーツ大会の費用にあてています。それも今年は中止。そこで今年は、エクスターンシップをすることにしました。大船渡の食品について、美味しさやものづくりの真摯さなどの魅力を現地の方にインタビューし動画にしています。高円寺のアンテナショップ三陸SUNのご協力のもと、商品紹介の他、実食して首都圏の方々に魅力をお伝えしていきます。

阪井ゼミ:エクスターンシップによる大船渡市の食品のPR動画

阪井ゼミ:エクスターンシップによる大船渡市の食品のPR動画

安部(しんちーむ):いまメンバー内でアイディアを出し合い、企画を詰めているところです。ひとつはみなさんが実施しているようなオンライン企画。もうひとつは、新地町のPR動画を観光協会と協力して発信したいと考えています。現地に行けないのは残念ですが、オンラインでできることからひとつひとつ手をつけていきたいと思います。

井上(SHIP):「SHIP」は他のサークルのように同じ地域で継続した活動を行っていないので、コロナ禍での活動は行えていないのが現状です。学内のボランティアセンターなどで紹介いただき、継続して受け入れていただける地域とつながりができればと思います。ただ活動の幅が広く誰でもしたいボランティアを企画できるというのが「SHIP」の利点。これからみなさんの活動を参考に、行動に移したいと思います。

―いま「SHIP」の井上さんがおっしゃったように、この機会に、ボランティアサークル同士で横の連携がとれるようになるといいかもしれませんね。活動報告会にお互いを招くなどの交流ができれば、そこからまた新しい動きが生まれそうです。

topics座談会トピックス