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臨床心理学専修科目紹介

カリキュラム主旨

 臨床心理学専修においては,臨床心理学実習を主軸とした実践的な教育が行われます。この実習は,2004年度4月に本学に開設された臨床心理相談施設(「明治大学心理臨床センター」)において,教員の指導のもとに院生が実際に来談者に対する心理臨床行為の経験をつむことを主眼としています。 

専攻必修科目

臨床人間学総合演習 【8単位】
 臨床心理学,臨床社会学のさまざまな研究テーマについて,とりわけ本専攻の専任教員がカヴァーする研究領域のテーマについて,学際的な観点からの検討を行なう。そのことを通じて,臨床心理学・臨床社会学の視点を有機的に結びつけ,本専攻の院生が単に臨床心理学あるいは臨床社会学それぞれの専門性を身につけるだけでなく,心理—社会の総合的な的視野に立った臨床の専門家になることを主眼とする。
臨床心理学,臨床社会学の教員が共同で授業を担当し,受講生各自の研究テーマに基づく発表に対して指導・助言とディスカッションを受講生および教員間で双方向的に行なう。 

専修必修科目

臨床心理学特論 【4単位】
 本講義では,前期において,臨床心理学が心理学のなかでどのような位置づけを持っているのかについて検討したのち,臨床心理学の方法論について考察し,その特徴を限界や問題点も含めて明らかにする。
続いて,実際の心理臨床活動において留意すべき問題を事例を挙げながら検討し,心理臨床活動を行なう際の臨床心理士としての根本的姿勢および倫理的態度に関する問題について詳しく解説する。
後期においては,前期で扱った臨床心理学の実践的な諸問題を院生自身が臨床心理実習のなかで体験する個々の事例に即して検討することにより,概念的な知識を体験的な知識に置き換えることを狙う。 
臨床心理面接特論 【4単位】
 臨床心理学的援助を行うために必要な基本的態度および基本的技法を学習する。具体的には,まず国内外の文献を読み進めながら,代表的技法に関する知識の習得や各心理療法論の比較検討を目指す。
また,実際の臨床事例をその始まりから終結まで検討するケーススタディを数多く導入するが,個人やその家族・周囲の地域社会へのケアを含めた心理療法的アプローチに関して,なるべく流派の垣根を越えて幅広く取り上げていきたい。 
臨床心理査定演習Ⅰ 【4単位】
 知能検査としてのWAIS,WISC,田中ビネー式テスト,各種の質問紙法,クレペリンテスト,投映法としてのロールシャッハテスト,文章完成法(SCT),絵画統覚検査(TAT),各種の描画テスト等について,その実施法と解釈法を学ぶ。本演習は,より専門的・実践的な学習が目指される臨床心理査定特別演習につなげるための基礎編として位置づけられる。
なお,描画テストについては,特に統合HTP法に関して,これまで病院・家庭裁判所・相談室・学校など諸領域で行なってきた検査結果を見ながら,各現場における具体的なケースや子どもの全般的な変化を通して学ぶ。 
臨床心理基礎実習 【2単位】
 ?O期は,受講生が学内・学外の心理相談・治療機関において実習を受けることができるための準備を行なう。ロールプレイング,試行カウンセリングによって,心理面接に関する体験学習を行い,また,箱庭療法,描画法などのイメージ表現技法を体験する。
後期は,学内施設(心理臨床センター)における心理面接場面に徐々に携わり,最終的にはクライエントを担当する。クライエントの心理面接担当以外には,インテークの陪席,心理検査の施行がある。これらを通じて,心理面接のプロセスを体験的に学ぶとともに,インテーク面接,援助計画,援助の効果などについてのアセスメントを実践的に学ぶ。学外機関(病院・児童相談所・子育て支援センターなど)における実習は,その機関の特性に応じて,観察,陪席,集団療法への参加,心理面接の担当など,多様な内容があり,それらを偏り無く効率的に体験し,学習できるようにプログラムが組まれる。受講生が学内・外で担当した心理面接事例については,教員が個人あるいはグループの形でスーパーヴィジョンを行なう。このスーパーヴィジョンは本実習の一部として行なわれる。 本科目は,3人の教員が共同で担当し,常に全受講生の実習に関与するが,特に次の内容に関しては,それぞれの教員がその専門性に応じて主たる責任を持って学生を指導する。
A:遊戯療法・箱庭療法
B:査定およびコミュニティアプローチ
C:学校臨床心理学的アプローチ 
臨床心理実習 【2単位】
 ?ユ床心理基礎実習の履修を前提として,学内心理相談施設(心理臨床センター)と学外機関(病院・児童相談所・子育て支援センターなど)における実践的な学習を継続し,実際のクライエントの心理面接を行なうことができるようにする。学内施設においては,心理面接の担当を中心に,インテークの陪席,心理検査の施行が行なわれる。学外機関においては,その機関の特性に応じて,観察,陪席,集団療法への参加,心理面接の担当など,多様な内容があり,それらを偏り無く効率的に体験し,学習できるようにプログラムが組まれる。学内施設・学外機関のいずれについても,クライエントの心理面接の担当ないしはそれに近い内容の実習が中心となり,臨床心理基礎実習よりも実践性,責任性の点で高い質の実習が目指される。受講生が学内・外で担当した心理面接事例については,教員が個人あるいはグループの形でスーパーヴィジョンを行なう。このスーパーヴィジョンは本実習の一部として行なわれる。
本科目は,3人の教員が共同で担当し,常に全受講生の実習に関与するが,特に次の内容に関しては,それぞれの教員がその専門性に応じて主たる責任を持って学生を指導する。
A:行動療法的アプローチ・
学校臨床心理学的アプローチ
B:査定・グループアプローチ
C:遊戯療法・箱庭療法的アプローチ 

選択必修科目 A群 

心理学研究法特論 【2単位】
 心理学の基本的な研究法として,実験法,行動観察法,調査法がある。本講義では,これらの研究法について実際の研究例を取り上げながら解説し,各方法論についての理解を深めさせる。
また,各研究法に固有のデータ収集法,データの信頼性と妥当性の問題,基本的なデータ分析法についても解説する。また,ケース研究にも対応できるように,シングルケース研究法についても講義し,ケース研究のまとめ方についても習得させる。 
心理統計法特論 【2単位】
 臨床心理学の分野において必要な,調査や実験によって得られるデータを適切に分析する統計学的方法を修得する。
具体的には,記述統計学と推測統計学の諸概念について,理論的な背景にさかのぼって考え方を理解する。演習を繰り返しながら分析上の陥りやすい誤りを認識し,それを通して妥当な知見を導き出す手法を学ぶ。とくにデータ収集の計画段階を重視し,留意すべき点を十分に検討したうえで研究を始める姿勢を身につける。 

選択必修科目 B群

発達心理学特論 【2単位】
 発達心理学は非常に広範囲な学問領域である。乳児期,幼児期,学童期,思春期,青年成人期,老年期と,人の一生にわたって網羅されている。
本講では,それぞれのステージにそって,乳児期はコミュニケーション,母子関係の発達,幼児期は社会性の発達,学童期は自我の発達,仲間関係,青年期はアイデンティティなど,それぞれの代表的なトピックに関して,ピアジェ,エリクソンなどの発達理論にもあたりながら,発達とその危機について検討する。 
人格心理学特論 【2単位】
 人格理論の中でも,特に,精神分析的自我心理学派の代表であるエリクソンの人格理論を取り上げる。具体的には,エリクソン自身の著書や,彼の理論のキーワードである「アイデンティティ」を扱った内外の学術論文等の講読・議論を通して,彼の理論の本質に迫ることを目的とする。
なお,エリクソンの理論は,人間の生涯発達を説明し得る理論でもあることから,子どもから高齢者に至る人格発達の道筋についても,適宜,考察・検討を加えたいと思う。 

選択必修科目 C群 

社会心理学特論 【2単位】
 対人関係機能の一つとしてソーシャル・サポートを取りあげ,その基礎論を修めると共に,未解明な課題を現実事象に照らして明らかにしていくことを第一義的な目的とする。また,そこでの未解明課題について,いかにして研究を立ち上げていけるものであるかに関わるトレーニングを積んでもらうことも,副次的ながら本講における目的に含めたい。
しかしながら,ソーシャル・サポートは,集団力学における知見と対人関係論に有力な研究視座を求めることができるものであるが,一方では,発達,学習,認知,臨床,人格心理学にまたがる複合的な問題であり,応用・実学的発想に基づいた議論が必要となるであろう。また,個人内過程と個人間過程の双方を勘案していくことも求められるであろう。
そこで,本講では,ソーシャル・サポートを個人の内的過程と巨視的な社会事象との関連から捉え直し,必要とされる方法論的視座を吟味しながら,社会行動研究のあり得るべきパラダイムを探索することとしたい。 
犯罪心理学特論 【2単位】
 犯罪心理学に関係する学会,基本的な文献について最初に紹介する。犯罪心理学の基本的な理論について検討する。講義では主として少年犯罪を取り上げ,戦後わが国の少年犯罪の変遷について検討し,現代型少年犯罪の特徴及びその理解枠を提示する。
少年犯罪の保護,矯正について社会内処遇,施設内処遇について事例に基づいて検討を深める。具体的には,保護観察,試験観察事例,児童自立支援施設,少年院,少年刑務所における非行臨床の実際を事例研究する。 

選択必修科目 D群

精神医学特論 【2単位】
 精神疾患の疾病論及び治療論について学習する。パニック障害,強迫性障害,感情障害,各種人格障害,統合失調症,精神作用物質による精神および行動の障害,器質性精神障害,身体表現性障害,摂食障害等々について検討する。これらの疾患についての最新の病因論から薬物療法の実際,精神療法的アプローチの方法及び面接の技法について論じる。さらに統合失調症の治療について近年急速に発展してきた精神科デイケア及び地域ケアの方法と実際について,具体的実例を通して学習する。そして,それらの治療者のかかわりにおける職業的役割関係についても論じる。 
心身医学特論 【2単位】
 心身医学は患者さんを身体面のみならず心理面,社会面(生活環境面)を含め統合的に把握し関わってゆく医学である。
本講義では,総論として心身相関のメカニズム(脳,自律神経系,内分泌系,免疫系ほか),心身症にみられる心理行動特性,心身症の診断と治療の進め方,チーム医療の重要性などについて学ぶ。
各論としては,主要な心身症事例を呈示し,ディスカッション及び解説により理解を深めたい。さらに,実際の臨床場面で遭遇する機会の多い現代社会に特異的なストレッサーと各ライフサイクルにおける代表的心身症について学ぶ。 
障害者(児)心理学特論?【2単位】
 本講では,まず,障害の種類と定義,診断等に関して,DSM-Ⅳ,ハ ICD-10, ICF,ハ AAMRの定義等の原著にあたって検討しながら,障害者(児)をとりまく教育,社会の制度についても検討する。また,障害者(児)が直面する様々な問題点を洗い出し, IEP,ADAなどを参考にしながら,現在,我が国で行われている教育,支援等の制度,方法についても検討を加える。
また,障害者(児)のコミュニケーション,社会生活を支援するための心理テクノロジーの研究についても紹介する。 

選択必修科目 E群  

心理療法特論Ⅰ 【2単位】
 心理療法の基本的なアプローチのいくつかについて,その理論,背景となる思想,人格理論,技法論,臨床の実際などを学んでいく。
本講義では,心理療法の代表的な方法の一つであり,我が国の学校カウンセリングや産業カウンセリングの分野において現在も多大な影響を与えつつあるクライエント中心療法について,さまざまな角度から学んでいく。創始者であるロジャーズの実際の面接場面を検討したり,彼が創始したベーシック・エンカウンター・グループを実際に体験することによって,この方法の基本的態度を会得していく。
また,この立場の代表的な方法の一つでもあるジェンドリンのフォーカシング指向心理療法についても,具体的に学んでいくこととする。 
心理療法特論Ⅱ 【2単位】
 ストレスと心の健康との関連性について,最近の研究成果に基づいて講義する。また,ストレスによって引き起されやすいさまざまな問題(心身症,うつ,不安障害,種々の問題行動など)や,そのような問題に対応していくために,認知・行動論的観点からのアプローチ法について解説する。
さらに,そのような問題の予防的観点から,ストレスマネジメント教育およびソーシャルスキル教育の方法や,それらを学校や会社において導入していくための方法についても検討を加える。 
心理療法特論Ⅲ 【2単位】
 今日存在するほぼ全ての心理療法の源泉であり,かつそれ自体が今日もなお人間の心の最も深い淵に迫る精神分析について,その歴史,基礎概念,臨床理論について講義する。それらの中には創始者フロイトのたどった足跡,精神病理学と治療論,フロイト以降の,とりわけ英国対象関係論の発展,フロイトが神経症の中核的コンプレックスと呼んだエディプス・コンプレックス概念などが含まれる。
さらに講義の後半では,精神分析ないしは精神分析的心理療法の実際について,豊富な臨床素材を提示しながら解説するとともに,研修についても触れたい。 
グループアプローチ特論 【2単位】
 集団心理療法の理論と実際について体験的に学習する。また,洞察をめざす言語的集団心理療法とサイコドラマ等非言語的集団心理療法の2つのアプローチにふれ,グループセラピストに関する基礎的な技術を獲得することをめざす。授業は,実践的なグループ体験学習を中心に進めていき,メンバー体験の過程で,学生には常に「自己分析」という課題が与えられる。これによって,自己の臨床的資質を磨くことが可能となるであろう。 
コミュニティアプローチ特論 【2単位】
 臨床心理学におけるコミュニティアプローチと臨床社会学的アプローチの共通点と相違点を考えるために,「コミュニティ心理学 理論と実践」(J.オーフォード著)とモHandbook of Clinical Sociologyモby Rebach,H.M.&Bruhn,J.G.を講読し比較する。それを通して,日本の実情に合ったコミュニティアプローチとはどのようなものであるかを討論し考察すると共に,実際に地域に入って,必要とされるコミュニティアプローチを検討する。 
学校臨床心理学特論 【2単位】
 学校は臨床心理学の実践の場としてはある特殊性を備えている。この講義では不登校,いじめ,発達障害,学級崩壊,友人との関係のもつれ,両親との関係の悩みなど,学齢期の子どもたちの悩みについて考えていくとともに,これらの問題に学校という場でどのようにかかわっていくことができるか,特にスクールカウンセラーの立場から論じていく。その際特に,重要な協力相手となる教師や教師集団の特性,さらには,教師たちの抱える悩みについても考察を加えていく。具体的な事例を取り上げながら,実践的な対応力をつけることに主眼をおいて授業を進めていく。 

選択必修科目 F群

臨床心理特別実習Ⅰ 【2単位】
 臨床心理基礎実習を補うための実習である。前期は,受講生が学内・学外の心理相談・治療機関において実習を受けることができるための準備を行なうことを目的に,実際の事例の紹介を通して,①クライエントの理解に向けた生育歴や家族歴の把握のあり方,②家族力動の理解,③クライエントの地域生活の把握のあり方,④心理学的諸検査の活用のあり方,⑤様々な情報を総合した事例の見立てのあり方,⑥クライエント—セラピスト間で生ずる力動の理解などについて学ぶ。
後期は,スーパーヴィジョンの形を取り,受講生が担当する心理面接事例について,上記の観点から実践的な指導を受ける。さらに,⑦様々な社会的資源の理解と活用,⑧他機関や他職種との連携や協同のあり方,⑨面接記録を残す意義や必要性が指導のポイントとして付け加えられる。 
臨床心理特別実習Ⅱ 【2単位】
 臨床心理実習を補うための実習であり,心理面接の経験が2年目になる院生に対して行なわれる。スーパーヴィジョンの形を取り,受講生が担当する心理面接事例について,インテーク面接,心理理面接の見立て・組み立て,心理面接における介入等に関する実践的な指導を行なう。見通しや仮説を持つための情報の適切で丁寧な収集とそれらについての冷静な処理・整理能力を学ぶ。
また,見通しや仮説に対する柔軟な態度を身につけること,面接の経過全体を意味づけ,まとめる能力を養うことを目標とする。 
臨床心理査定演習Ⅱ 【4単位】
 1年次の臨床心理査定演習Ⅰの履修を前提とし,2年次の院生を対象に,心理査定に関する上級編の授業として行なわれる。ロールシャッハテストについて,エクスナー法と片口法の両者を学び,両者の違いや特徴を知り,両法の実践的活用が行なえるようになることを目的とする。
A:前期  ロールシャッハテストの施行,結果の整理,データの見方,臨床的解釈がスムーズに行なえるようにする。特にデータのどの部分に注目し,被験者の実際の臨床像と結びつけ,その被験者の治療方針や方向性にいかに役立つ解釈結果を導くかについて学習する。なお,J.E.エクスナーの包括システム(Comprehensive System)に基づくロールシャッハテストの修得を目指す
B:後期  医療現場に赴き,自我の病態水準の異なる複数の事例を対象にロールシャッハテストを施行し,ロールシャッハテストの解釈法を実地体験として学習する。解釈法における量的分析,継起分析,総合的解釈の3つの過程のうち,特に継起分析に重点を置く。なお,片口法に基づくロールシャッハテストの修得を目指す。 
明治大学大学院