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国際日本学部

国際日本学部における留学生との共同プロジェクト

2018年04月03日
明治大学 中野教務事務室

本報告は、留学生と日本人学生が共同で2年間取り組んだ正課外活動についてです。4名の学生(3人の日本人学生と1名の韓国人留学生)は、2016年10月から継続的に大阪府の特別支援学校(肢体不自由)の生徒と一緒に、分身型ロボットOriHimeを活用したプロジェクト活動を実施してきました。2年間の活動を終えたことから、プロジェクトに関わった留学生と、彼女と一緒に活動した日本人学生の報告を紹介します。

<国際日本学部1年 ソ アヨン(韓国人留学生)>
 私がこのプロジェクトに参加したきっかけは、岸先生のICTベーシックの授業でした。ICTを活用することで、様々な問題解決にもつながると知りました。もともと、国際協力に関心があったため、何か活動に参加したいと岸先生に相談したところ、このプロジェクトを紹介していただきました。
 このプロジェクトでは、ロボットを使って、特別支援学校の生徒の学習を支援するというものでした。肢体不自由の生徒たちの世界を広げることができるように、私たちは、ロボットを彼らの分身として捉え交流し、学習機会を作ってきました。私は日本にきてから留学生であることを特別に思ったことはありませんでした。しかし、生徒たちは、韓国人の私と交流することでとても楽しんでくれ、韓国や世界に興味を持つようになってきました。毎回の交流で「アヨンさんのお話を聞きたい」と生徒たちが楽しみにしてくれ、私は、自分が誰かの特別になれたことがとても嬉しく、とても自信がつきました。
 このプロジェクトでは、「コミュニケーション」について多く学びました。コミュニケーションとは、単に言葉を交わしたりただ一緒にいるだけではなく、お互いの関心を広げたり、理解を深めたりできるものでした。そして、お互いが変わっていけるきっかけになることがわかりました。留学生の私は、最初の方は特に発音に不安があり、日本語で自分の考えを100%伝えることができませんでしたが、50%でも80%でも伝えようとすれば、足りない部分は誰かが補ってくれることがわかりました。伝わるかどうかだけではなく、伝わるようにみんなで協力していくことの大切さも学びました。
 このプロジェクトを通して、同じことを見ても経験しても、日本人と韓国人では考え方、感じ方が異なることがあると知りました。疑問に思ったことを、プロジェクトの仲間たちと共有することで、お互いが深く知り合うことができ、視野が広がっていきました。そして、何より、何か新しいことに挑戦することに対して、とても前向きになることができました。

<国際日本学部4年 佐藤 瑛子>
 アヨンさんの参加は、実践に大きな変化をもたらしてくれました。生徒は、外国人留学生相手にお話をしたとき、会話がスムーズに進まないことを経験しました。そこで、自分がコミュニケーションを取るときに工夫をしなければいけないことに気づき、「どうすれば相手にわかりやすく伝えることができるのだろう」と考えるきっかけになりました。同時に、学生にとっても、全員が実践に関わることのできる環境を作るという意識が高まりました。初めて参加したときから、彼女は韓国語で熱心にメモを取っていて、「大変だよね」と話しかけると、彼女は「まだ全部を理解してはいないけど、この実践は他ではできない経験だと思うから頑張る」と誇らしげに話してくれました。その時私は、私たちにできる最大のサポートをしようと強く思いました。SNS上ではなく、学生同士で会って話しながら互いの理解を確かめ、考えをまとめる時間を作り、支援学校教師を交えたミーティングや、実践に備えました。彼女がいたことで、全員が足並みを揃えて同じ方向に進めるように、密にコミュニケーションを取ったり、工夫をすることができました。

<国際日本学部4年 緒方 日菜子>
 このプロジェクトは、留学生や特別支援学校の生徒と協働する、ダイバーシティーの要素が詰まった活動となりました。途中から実践メンバーとなった韓国の留学生とも定期的にミーティングを重ね、もつ視点が異なることに新鮮味を感じ相手をもっと知りたいと思った半面、私は彼女に自分の意見を理解してもらえるように、自分の意見に対してなぜ?と問いたり、本当にそうなのか?と何度も考えるようになりました。国籍の異なる人とチームとなり同じゴールをもって何かを「創る」ことが、異文化理解において大きな前進に繋がると感じました。
また、私がこのプロジェクトに関わる以前は、特別支援学校の生活に興味が沸くことも、経験する機会もありませんでした。しかし、このプロジェクトがきっかけで、実際に実践でお世話になった先生方や生徒のいる特別支援学校への訪問の機会をいただき、自分の特別支援学校に対する印象が実際と大きくずれていたことに気付きました。その学校では、一般の学校よりその子にあった教育がなされていて、生徒らもいきいきと楽しそうに学んでいました。
 ダイバーシティーのある環境においての協働は、「相手を理解」し、「偏見をなくす」ことが終わりではなく、そこから何かを生み出すことが重要なのだと思います。生きてきた環境が異なる人たちと目標や感情を共有し、自分だからこそ伝えられる視点から意見を交わすことで、チームやグループの中で様々な方向からのアプローチを考えられるようになるだけでなく、お互いの生きるステージが広がったり、相手のことをさらに思いやることができることに繋がります。異文化理解で止まらず、もう一歩踏み出して自分にない「個」をもった人たちと一緒に何かを創造するという繰り返しで、世の中はもっと面白くなるのではないでしょうか。