明治大学 卒業生からのメッセージ
変わる時代、変わらない信念
明治大学商学部
バックナンバー
一覧へ
第42回 (2011.12.22)
名雪 等 さん
(1982年 商学部 商学科 卒業)
ヤマサ醤油株式会社 経理・総務本部総務課長
第41回 (2011.11.01)
尾野 貴志 さん
(1999年 商学部 商学科 卒業)
ビジネスアシスト株式会社 代表取締役
第40回 (2010.10.02)
遠藤 彰 さん
(1988年 商学部 商学科 卒業)
coaching office BEANS代表、中小企業診断士
第39回 (2010.08.24)
福本 哲也 さん
(1993年 商学部 商学科 卒業)
鳥取県企画部青少年・文教課 企画員
第38回 (2010.07.20)
岸本 郁華 さん
(2007年 商学部 商学科 卒業)
青年海外協力隊 平成22年度3次隊青少年活動 セネガル派遣予定
第37回 (2010.06.21)
土居 拓務 さん
(2009年 商学部 商学科 卒業)
農林水産省林野庁林政課
第36回 (2010.05.20)
中逸 博光 さん
(1978年 商学部 産業経営学科 卒業)
熊本県長洲町長
第35回 (2010.05.01)
松本 昭夫 さん
(1974年 商学部 産業経営学科 卒業)
鳥取県北栄町長
第34回 (2010.03.13)
山崎 俊秀 さん
(2001年 商学部 商学科 卒業)
エヌ・ティ・ティ・システム開発株式会社
第33回 (2009.08.26)
小林 義明 さん
(2004年 商学部 商学科 卒業)
ヤマト運輸(株)・ヤマトフィナンシャル(株)、マネージャー
第32回 (2009.02.02)
藤井 貴之 さん
(2004年 商学部 産業経営学科 卒業)
日本愛妻家協会 事務局
第31回 (2008.08.26)
竹葉 洋 さん
(1966年 商学部 商学科 卒業
とっとりふるさと大使、株式会社日清製粉グループ本社顧問
第30回 (2008.10.13)
水澤 一廣 さん
(1972年 商学部 商学科 卒業)
北海道 浦幌町長
変わる時代、変わらない信念 〜明治が目指した商学の100年〜
メッセージ
TOPへ戻る
第43回 (2012.03.01)
遠藤 正明 さん(遠藤養蜂園)
1974年 商学部 産業経営学科 卒業
遠藤 正明 さん −Profile−
1974年 商学部産業経営学科卒業。
在学中は4年間「体育会少林寺拳法部」に所属。
卒業後、海外運輸系企業に就職、29年間勤務。
早期退職し、長野県で養蜂を学ぶ。
現在東京都多摩地方で養蜂業を営む。
自宅兼事務所は板橋区。

【「ニホンミツバチ」の一年】

 現在、日本には二種類の蜜蜂がいる。一般に売られている蜂蜜を生産する蜜蜂を「セイヨウミツバチ」といい、明治10年にヨーロッパから輸入され、花粉交配などにも利用されている。養蜂業で使われているのはこの種類である。もう一種類は、日本の自然界に古来から生息している「ニホンミツバチ」という蜜蜂である。体長は「セイヨウミツバチ」より一回り小さく、黒色で性格は野生種のくせに人間に対しては非常におとなしい。この「ニホンミツバチ」の蜂蜜は「幻の蜂蜜」とも言われ、飼育がとても難しく採蜜量も極端に少ないため、一般にはほとんど出回らない。
 私は、29年間勤めた会社を早期退職後、次にやることを模索しているときあるテレビ番組でこの蜜蜂のことを知り、強い興味を持ち、番組に出演していた養蜂家を訪ねた。結果、長野県伊那地方で2年半にわたり、「ニホンミツバチ」の養蜂を学びながら田舎暮らしを体験することとなった。
遠藤 正明 さん
 1,2月は雪も多く、蜜蜂は巣箱の奥に固まってじっとしてほとんど動かない。3月、気温の上昇とともに徐々に活動を開始して、4月になると働き蜂が活発に外へ通いだし、たくさんの蜜や花粉を集めるようになる。この時期は女王蜂がどんどん卵を産んで、たちまちにして巣が蜂で一杯になり、やがて新しい女王蜂の誕生となる。蜂の世界では、一つの群に女王蜂は一匹しか存在しない。新女王蜂が誕生する前に、古い女王蜂は群の半分ほどの働き蜂を連れてその巣から出て行き、別の場所で巣作りをはじめる。元の巣は新女王蜂に譲る。これを分蜂という。分蜂がはじまると、あたり一面が真っ黒になるほど蜂が飛び交い、しばらくの間、ものすごい羽音で周りの音が聞こえなくなる。そのうちに飛ぶのをやめて、近くの木の枝下などに女王蜂を中心に一つの固まりになってぶら下がり、数時間のちにどこかへ飛び去ってしまう。「ニホンミツバチ」を飼う人は、飛び去る前に空の巣箱にこの固まりを回収して蜂群を増やしていくのである。
 新女王蜂は孵化してから一週間ほどで交尾飛行に飛び立つ。ほかの巣の雄蜂たちがそのあとを追いかけ、早く追いついた順に交尾する。10〜20匹ほどの雄蜂と交尾し、その何種類かの受精卵を産み分けるといわれている。交尾した雄蜂は空中で死んで落下する。蜜蜂の世界での雄の役割は、交尾以外にはない。交尾できなかった雄蜂は、交尾期が終わるとやがて巣から追い出され、蟻などのえさになる。秋の終わりから冬の間、巣の中は雌しかいない。スズメ蜂も同様だが、働き蜂は全てが雌である。女王蜂は二種類の卵を産む。無精卵と有精卵で、無精卵は全て雄、有精卵は全て雌で働き蜂か女王蜂だ。雌のうち幼虫時代に三日間多くローヤルゼリーを与えられたものだけが女王蜂になり、それ以外は全て働き蜂になる。
 8月半ば頃から最も恐ろしい天敵「オオスズメバチ」が蜜蜂を襲いだす。集団でやってきて、早いときは数時間で群を全滅させてしまい、巣箱の中に入って幼虫や卵、蜂蜜などを持ち出し、自分たちの巣に運んで幼虫に与える。しかし「ニホンミツバチ」もやられてばかりではない。「オオスズメバチ」の数が少ないときは、大勢で群がって蒸し殺してしまう。驚くべき自衛行動だが、大群での襲来には通用しない。その時は一群全て巣箱を捨てて逃げ去り、どこか別の場所で営巣する。
 一方、「セイヨウミツバチ」には蒸殺や逃去などの戦略が備わっていないため、戦いに出て行っては殺され巣箱の前に死体の山を築き、やがて全滅する。「オオスズメバチ」と同所に生きるゆえに進化した「ニホンミツバチ」の持つ防衛手段を、別所に生きてきた「セイヨウミツバチ」が持っていないために起こる悲劇なのだ。今では、何種類もの「オオスズメバチ」対策が考えられているが、完全に防ぐことはなかなか難しい。
 9月、10月は一番うれしい採蜜の時期だ。春から秋にかけて何度も採蜜できる「セイヨウミツバチ」と違い、「ニホンミツバチ」は一年に一度あるいは二年に一度しか蜂蜜を絞れず、しかも量は極端に少ない。飼い方が下手だったり、巣箱を置く場所が気に入らなかったり、「オオスズメバチ」に攻撃されたり、他にも様々な理由でどこかへ逃げられ、一度も採蜜することなく全てが終わってしまうこともある。なんともやっかいな蜜蜂だが、その蜂蜜のおいしさや可愛さゆえか、飼う事をやめる人はほとんどいない。むしろ最近は趣味で飼う人が増えている。
 11月は採蜜後の育成、12月には冬支度をして一年の仕事が終わる。

 私は、三年前から東京都あきる野市で「セイヨウミツバチ」を飼育し、桜やアカシアなどの蜂蜜を採り、長野県や栃木県、群馬県などで「ニホンミツバチ」の飼育を行っている。昨年5月からは、東京都千代田区のビルの屋上で「ニホンミツバチ」の飼育を始め、都心での養蜂を研究している。

   
明治大学TOP 商学部TOP Copyright (C) 1997-2005 Meiji University. All Rights Reserved.