明治大学商学部は、現代の学生像の実態と社会からの期待とのギャップを埋めていくために、自分の能力を積極的に社会に役立てられる能動的な人材の育成を図っていくことこそ大学が果たしていくべき社会的役割であるとの思いから、新たな人材育成プログラムを導入します。コンセプトは、「見えない存在」である圧倒的多数の「沈黙する学生」を「“個”を持った存在」として見えるように(「見える化」)していくこと。ここでの「見える化」には2つの意味が込められています。1つは社会の中で1人の個として他者から「見える」という意味、もう1つは自分の置かれている状況や社会が「見える」という意味です。
プログラムの内容としては、自分で課題を見つけて解決策を考えたり、人と意見交換しながら自分の知見を高めていくような実践的な要素を取り組んだ場を新たに提供するとともに、そこでの学習の過程と成果を目に見える形にしていく展開を考えています。発想の背景には、商学部で扱う領域は完全にフィールドが対象であるため、理系で言う「実験室」のようなものがあればという思いがあります。学生は授業の中で「市場調査の情報はこのように使うんだ」「損益分岐点の分析はそうやるんだ」といったことを知識としては得ますが、その知識を実践で使う場がほとんどなかったため、いくら現実味やリアリティを感じながら授業を受けなさいと言ってもなかなか難しい現状がありました。でも、実際に自分が物を売ったりコンセプトを開発したりといった経験ができるならば、具体的にどんな情報が必要でどんな戦略が有効なのかといった興味が次々と湧いてくるはずです。さらに、グループでの実践となるとモチベーションの違う人間をどう動かせばよいのかという視点も自然と身についてくるでしょう。当事者意識があるのとないのとでは、学びの意識や質は大きく違ってくるからです。
実はこれまでも、明治大学商学部にはゼミなどでこうした実践の場はありました。しかし、その中心は一部の能動的な学生たちであり、多くの学生が「そういうのも良いよね」とは思いつつも、なかなか一歩が踏み出せないでいたようです。そこで、今回のプログラムでは、ゼミという活動単位にしばられないで、出入りの自由なプラットフォーム的な「実験場」というスタンスで展開していこうと考えます。この場で得た経験をそれぞれの所属するゼミや授業に持ち帰り、またゼミや授業で学んだ理論をこの場で試してもらえるような学びの良い循環を作っていくとともに、この場から能動的な学びの姿勢が広く深く学生に浸透していければと思います。