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林陽一 教授
より良い
デジタル社会に
つながるAIを。
情報科学科 人工知能研究室 林陽一 教授
どうしてその結論に至ったのか?根拠を説明する能力を持ったAIを研究する人工知能研究室の林先生。ここでは、自身の研究領域に至った経緯と、その魅力についてお話しいただきました。
コンピュータってきっと、すごい。
高校時代、同級生が学校に電卓を持ってきたことがあったんです。1970年代初頭の電卓は、まだ個人が持つのも珍しく、かなり高価なもの。電卓がこんなにすごいものなら、きっとコンピュータはとんでもない機械なんだろうと想像が広がりました。そのことがきっかけとなり、大学では情報系学科へ進学しました。コンピュータに初めて触ったのは、大学2年の時。その頃のコンピュータは処理速度がまだまだ遅く、台数も限られていたこともあり、使うために行列に並び、プログラムを動かすのも1日1回でした。プログラムが間違っていたら、丸1日無駄になってしまうのです。だからこそ、プログラムと真剣に向き合い、自分が書いたプログラムが動いた時は感動したものです。
研究室はシステム工学を選びました。そこでは、長野県の諏訪湖が汚染されるメカニズムをコンピュータで解析し、どのように排水を規制すれば水質が向上するかといったテーマの研究に取り組み、研究と実社会のつながりにとても面白みを感じました。その後、大学院に進み、国の研究所や精密機器メーカーなどを経て、大学でニューラルネットワーク(脳内の神経細胞のネットワーク構造を模した数学モデル)などの研究に取り組むようになりました。
ディープラーニングを、ルールで説明する。
私の専門はAIです。「ディープラーニングをルールで説明するAIサイエンティスト」を自称しています。ディープラーニングを備えたAIが社会で広く活用されるようになってきた一方、ディープラーニングのブラックボックス化が問題となっています。ディープラーニングとはAIが大量のデータから知識を習得することで、判断のプロセスを自動化する技術です。非常に豊かな可能性を秘めた技術ですが、ディープラーニングがその結論に至った思考の過程を追うことができないため、人間はAIが持つ判断の根拠を理解できないという欠点があります。1988年に私は世界で初めてこのブラックボックス問題を指摘し、ディープラーニングの原型であるニューラルネットワークにおけるブラックボックス問題を解決する独自技術を研究してきました。
その問題を解決するために必要なことは、AIが判断するルールを抽出すること。その研究成果を2019年にホワイトボックスマシンラーニングというタイトルで論文発表しました。そして今、世界中の研究者や学生に読まれています。今の時代だからこそ、ホワイトボックス化によって社会を正しい方向に導ける技術が求められていると実感しています。
好奇心が、未来を拓く。
電力会社の送電システムや銀行の勘定システムなど、ミッションクリティカル(業務に致命的な影響のある要素)の領域を筆頭に、多くの分野ではブラックボックス問題がネックとなっているため、AIが活用されている領域は限られています。もしホワイトボックス化すれば、AIが力を発揮できる領域が大きく広がるのは間違いないでしょう。日本の工業製品は信頼性の高さが世界中から評価されているように、私たちのこの研究によって誰もが理解して信頼でき、安心して使えるAIを世界に普及させていくきっかけとなればと考えています。目指すべきAIは利潤だけを追求するものでなく、高い倫理観が求められると私は信じています。
コンピュータは日々著しい進化を遂げていますが、まだまだ人間の知能には敵いません。スーパーコンピュータ「富岳」でさえ、人間の赤ちゃんの頭の中の動きを理解するには到底及ばないのが現状です。でも、研究を続けてくことで、コンピュータが人を理解し、人に寄り添える世界を実現できたらと思っています。その推進力になるのは、好奇心。私は学生の好奇心を後押しし、学生が前へ進むこと応援する、そんな存在でありたいと考えています。そして、学生たちがより良いデジタル社会に貢献していく未来が、私の夢です。
将来の人類社会に貢献する人材の育成を目的として、独創的で将来性のある研究を行う研究者を支援する稲盛和夫が設立した稲盛財団の研究助成の贈呈書。ここにある研究はニューラルネットワークで学習して、ファジー理論を活用し人間の曖昧さを踏まえた制御の実現を検証したもので、当時数多くの電気製品の制御に活用されました。
スタッフについて
情報科学科 人工知能研究室林陽一教授1984年東京理科大学大学院理工学研究科修了。工学博士。1994年明治大学理工学部に准教授として着任。1996年より明治大学理工学部専任教授(現職)。人工知能研究室にて、ディープラーニングの原型であるニューラルネット学習のブラックボックスの謎を解く方法を世界で初めて提案。人工知能、ディープラーニング(深層学習)、ニューラルネット、機械学習、ビッグデータ解析の研究を行っている。
研究内容
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医用画像をルールで説明できる可能性の指摘
高度なMRI, CTを用いた医用画像の高精度診断がめざましい。医用画像は一定の医学知識をもった医療従事者が画像を診断するので「事前知識をもっている」ことに着目して研究している。図はディープラーニングをルールで表す2016年の研究の概念図であり出発点。
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金融クレジットリスクアセスメントへの応用
クレジットリスクのアセスメントは非常に重要でかつ難しい。本研究では、三種類のルール抽出法およびMinervaを四種類の実世界のニクラスの混合属性をもつクレジットリスクデータセットに適用して10重交差確認を10回繰り返して得られた結果を用いて初めて普遍的な比較実験を行っている。また、パレート最適性の観点から、様々な新たに拡張されたRe-RXアルゴリズムのタイプと高い性能を示す分類器の役割についても議論している。
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糖尿病の診断のためのビッグデータの解析
本研究では、大規模な糖尿病データベースに適用してビッグデータ解析を行い潜在的に多数いる境界型糖尿病患者の早期発見、予防、栄養管理指導に繋がり重点慢性疾患の一つである糖尿病対策の新しい方策になることを目指している。
主要な業績
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2022.10 論文 / 単著Emerging Trends in Deep Learning for Credit Scoring: A Review Electronics 11(19),pp.3181
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2022.06 論文 / 単著AI評価の「ブラックボックス」に警鐘 食べログ判決に見えた課題 朝日新聞DIGITAL
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2021.08 論文 / 共著Use of an artificial intelligence-based rule extraction approach to predict an emergency cesarean section International Journal of Gynecology and Obstetrics
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2021.104 論文 / 共著PERFORMANCE ANALYSIS OF ROUGH SET-BASED HYBRID CLASSIFICATION SYSTEMS IN THE CASE OF MISSING VALUES Journal of Artificial Intelligence and Soft Computing Research 11(2),pp.307-318
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2021.01 論文 / 共著HARDWARE IMPLEMENTATION OF A TAKAGI-SUGENO NEURO-FUZZY SYSTEM OPTIMIZED BY A POPULATION ALGORITHM Journal of Artificial Intelligence and Soft Computing Research 11(3),pp.243-266