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椎葉太一 教授
運転する楽しさを。
世界が広がる喜びを。
機械工学科 ビークルダイナミクス研究室 椎葉太一 教授
自動車などの車両(Vehicle)を対象として、運動性能の解析や制御、評価に関する研究を行っている、ビークルダイナミクス研究室。"人間にとってよいクルマとはなにか"その問いと向き合い続ける椎葉先生に、この研究領域と出会った背景からその魅力についてお話しいただきました。
クルマと出会い、好きなクルマを研究する。
知らない世界へあっという間にいける。身体を動かすように、クルマが動いていく。それが、大学時代にはじめてクルマを運転したとき感じたことでした。そして、運転するたびに新しい発見がありました。風景が変わり、新しい世界と出会えること。同じカーブでもステアリングやブレーキのタイミングで運転感覚が変わること。こういった経験が、私のいまの研究の原点になっていると思います。
そのようなことから、大学院では学部生のときに学んだ物理工学でなく、機械工学を専攻することにしました。機械工学の良いところは、自分がつくったものが形となって動くということ。動かないときは、必ず原因がある。理論を考える、形にする。その繰り返しが、動くという成果につながっていく。これこそが機械工学の醍醐味ではないでしょうか。そしていま、自分の好きなクルマを研究できることは、なによりも幸せなことだと思っています。
人間とクルマの中で起きていることを明らかにしたい。
クルマをはじめとした乗り物は、人が運転するという前提があります。そのため、クルマの操縦性や乗り心地といった評価においては、クルマのことだけでなく、人のこと、取り巻く環境のことを理解する必要があります。約3万個に及ぶと言われるクルマの部品点数。それぞれの部品が相互に影響し合い、クルマが動いています。それだけでも複雑な組み合わせなのに、そこに人間の体や認知・判断・操作のプロセス、周辺環境の状況など多くの要素が重なっていきます。そこを解明していくのが私の研究です。
研究ではドライビングシミュレータを使うこともあります。人間が実際に操作を行い、クルマの性能を総合的に評価する。ステアリングホイールの動かし方、ブレーキのタイミング、その結果生じるクルマの動きなどクルマと人間を構成する多くの状態量を把握し、1秒間に1,000回以上のスピードで運動方程式を解いていきます。クルマの中で、人間とクルマの間で一体なにが起きているのか、それを正しく理解していくことが乗り心地の良いクルマ、そして安全なクルマの実現につながっていくと考えています。
人間にとってよいクルマとはなにかを考える。
学生には「人間は難しいよ」といつも言っています。同じ人が同じクルマに乗って、同じ道を運転しても、その人のコンディションや天候、時間、路面の状態によって乗り心地や操作感は変わります。それらを定量的なデータとして扱い理論化に向け評価することは困難を極めますが、そこにある良し悪しといった人間の感覚を大切にしていきたいと思っています。
未来のクルマはどうなるか。世の中としては、EVや自動運転の技術が注目されていると思います。私たちの研究のテーマはそういった技術を深めることでなく、人間にとってよいクルマとはなにかを深めること。未来のクルマには、運転する楽しさが残っていると私は信じています。そして、その先にある世界が広がる喜びを、誰もが感じられるようなクルマの開発のあり方をこれからも考え続けていきたいと思っています。
研究者として、海外へ行くことは大切だと思っています。ドイツには1年間滞在したのですが、その間にヨーロッパの国々を巡りました。世界に自分と同じ研究をしている人がいる。国を越えて、研究について語り合うことは私にとってとても大切な時間です。
スタッフについて
機械工学科 ビークルダイナミクス研究室椎葉太一教授2001年東京大学大学院工学系研究科修了。博士(工学)。株式会社本田技術研究所勤務を経て、2004年明治大学理工学部に専任講師として着任。2014年より現職。ビークルダイナミクス研究室にて、自動車などの車両(Vehicle)を対象として、運動性能の解析や制御、評価に関する研究を行っている。
研究内容
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車両の運動解析とヒューマンファクタ
自動車を運転する際、ドライバは車両の運動性能に応じて適応的に操作を行っていることが知られている。本研究では、実車走行試験やドライビングシミュレータなどを通して人間-自動車系としての評価を行うことにより、ドライバの適応のプロセスの解明と、運転しやすい自動車を実現する技術の確立を目指している。
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車体剛性を考慮した車両運動特性の評価
車体の剛性は自動車のハンドリング性能に影響する。本研究では、レーシングカートのフレームの剛性を変えたとき、ハンドリング性能がどのように変化するかを、フレキシブルマルチボディダイナミクスと呼ばれる手法で評価している。
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車両運動のリアルタイム解析
ドライビングシミュレータでは、ドライバの運転操作に応じて車両状態を解析し、その結果をコンピュータグラフィクスやモーション装置を通して直ちにドライバに提示する必要がある。本研究では、自動車のサスペンションやステアリングの特性を正確に再現できるマルチボディ車両モデルを用いたリアルタイム解析を実現するため、数値計算手法や要素のモデリング手法に関する検討を行っている。
主要な業績
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2020.01 論文 / 共著数値減衰特性を有する解析手法を用いたリアルタイム車両運動解析 日本機械学会論文集 86(881)
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2014.11 論文 / 共著マルチボディ解析を用いたステアリングHILS システムの開発 自動車技術会論文集 45(6) pp1055-1060
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2013.10 論文 / 共著フレキシブルマルチボディ車両モデルを用いたレーシングカートの運動特性評価 日本機械学会論文集, C編 79(806) pp3291-3303
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2013.10 論文 / 共著マルチボディ車両モデルを用いた操舵反力シミュレータのリアリティ向上 日本機械学会論文集, C編 79(806) pp3315-3326
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2010.06 論文 / 共著リアルタイム車両運動解析を用いたタイヤ-サスペンション特性評価システムの開発 日本機械学会論文集, C編 76(766) pp1576-1581