教員と研究

グリーンデバイスで、
低炭素社会に
貢献する。

電気電子生命学科 電気電子工学専攻 オプトバイオエレクトロニクス研究室
勝俣裕 准教授
電気電子生命学科 電気電子工学専攻 オプトバイオエレクトロニクス研究室 勝俣裕 准教授

今や人間の暮らしに不可欠な半導体。勝俣先生率いるオプトバイオエレクトロニクス研究室では、枯渇の心配がなく、人体や環境への毒性もない「環境配慮型半導体」材料を研究しています。勝俣先生に研究領域に至った経緯と、その魅力についてお話しいただきました。

やるなら、大学でしかできないこと。

半導体は私のライフワーク。生活そのものとも言ってもいいでしょう。大学3年次の専攻選びがそんな人生を決定づけました。当時は、パソコンでロボットを動かす制御系に行くか、半導体の物性系に行くかで迷いました。パソコンや制御は部品を揃えれば自宅でもできるかもしれない。一方、半導体の研究には大型の機材が必要だし、ものすごく電力を使うので自宅ではできない。どうせなら大学でしかできないことをしようと、選んだのが半導体物性系の研究室でした。それから、電機メーカーの研究所時代も含めてずっと半導体に携わっています。

大学時代に研究したのは発光素子。電流を流して発光させる半導体のことで、LEDもその一種です。研究室には、研究の面白さを始め、論文の書き方から社会の楽しみ方まで教えてくれた先輩がいました。座学で覚えた知識の一つひとつは点に過ぎませんでしたが、指導教授、そして先輩との対話、実験を重ねることによって点と点がつながって線になり、やがて面になっていく。実験を始めとした研究室での生活が楽しくて仕方なく、徹夜も厭わず研究室にこもっていました。1年のうち300日以上は研究していたほどです。先生や先輩方のおかげで、研究の道に進めたと思っています。

地球を汚さない半導体を。

当研究室では、「環境配慮型半導体」の材料・プロセス技術の開発と、それらのグリーンデバイスへの応用に取り組んでいます。「グリーン」には「環境を維持(保護)する」という意味があり、グリーンデバイスとは「創エネ」「省エネ」「蓄エネ」など環境維持に役立つデバイスと技術の総称を指します。例えば、エネルギーを創出する太陽電池や熱電素子、省エネに貢献するLEDや有機EL照明、電気を蓄えるリチウムイオン充電池、さらにそれらを製造する装置やプロセス技術がグリーンデバイスの範疇に含まれます。

現在の環境汚染や将来の資源枯渇などの社会課題に対処するためには、地球上に豊富に存在し、人間にも自然にも毒性がない材料の使用が理想です。私たちが取り組んでいるのは、シリコン、ガリウム、アルミニウム、鉄ならびに大気中に存在する窒素、酸素などの元素からなる環境配慮型半導体の材料・プロセス技術の開発です。究極的には、豊富にある資源を使い、地面に捨てても自然を汚さず、間違って食べても大丈夫な半導体。そんな夢のグリーンデバイスを追求しています。

次世代を担う若者たちが笑顔で暮らせるように。

日本政府は2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、カーボンニュートラルを目指すことを宣言しました。そして、カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略として、成長が期待される14分野の産業を挙げています。そのうち、当研究室が関連するのは「洋上風力・太陽光・地熱産業」「自動車蓄電池産業」「半導体・情報通信産業」の3分野。半導体がなければ、発電施設も電気自動車もパソコンも動きませんから、とりわけ半導体は重要です。

私の夢は、シリコン系材料で可視・赤外の受発光素子を実用化することです。これが実現すると、製造コストを抑えられるだけでなく、環境負荷を低減でき、エネルギー・環境問題の改善に大きく貢献できます。なぜグリーンデバイスを研究するのか?それは、次世代を担う若者たちにより良い環境の中で笑顔で暮らして欲しいから。社会に役立つ半導体を生み出し、そして、その研究を通じて、これからの半導体産業で活躍できる人材を育てていきたいです。

電気電子生命学科 電気電子工学専攻 オプトバイオエレクトロニクス研究室 勝俣裕 准教授
国際学会

私の研究室では、研究の成果を国際学会で発表してもらいたいと考えています。海外に行くと、いつもあたり前と思っていたことがあたり前でなくなります。語学も文化も何もかも違う環境で、学生たちが自らの成果を発表し、成長していく姿を見られることは、私にとっても嬉しい出来事です。

スタッフについて

電気電子生命学科 電気電子工学専攻 オプトバイオエレクトロニクス研究室勝俣裕准教授

1997年明治大学大学院工学研究科修了。博士(工学)。株式会社東芝勤務を経て、2010年より現職。オプトバイオエレクトロニクス研究室にて、カーボンニュートラル社会の実現に向けた環境調和型グリーンエネルギー変換デバイス材料の開発とそのデバイス応用に関する研究を行っている。

研究内容

  • 環境調和型グリーンデバイス材料と素子開発

    電力不足の解消には、グリーンデバイスの活用が不可欠である。省エネのためのパワー半導体やLED照明、創エネのための太陽電池等が、家電・自動車・社会インフラ等に導入されている。今後は未利用エネルギー(排熱、照明光等)を効率的に活用するためのグリーンデバイスの開発も必要である。エネルギー資源を再生・循環させることにより、二酸化炭素の放出を抑制したカーボンニュートラル社会の実現が望まれている。また、IoT 社会の発展に向けて、自立発電・蓄電技術やセンサー等の需要が高まっている。

    当研究室では、Si、C、Al、Fe、Mg 等の資源が豊富で地球に優しい環境半導体材料を用いて、LEDや赤外線センサー、光起電力素子、全固体半導体二次電池などの「省エネ」、「創エネ」、「蓄エネ」に役立つエネルギーデバイスの材料・デバイス・プロセス開発に取り組んでる。主な研究内容は以下の通りである。

    1. Si 系半導体量子ドットの形成と受発光素子・全固体半導体二次電池への応用
    2. シリサイド系半導体の結晶成長と赤外線センサー・光起電力素子・熱電変換素子への応用
    3. 次世代酸窒化物系半導体材料の開発と発光素子への応用
    4. 第一原理計算による物性予測と実験結果の検証
    5. デバイスシミュレーションによる素子設計

主要な業績

  • 2021.11論文 / 共著

    Evaluation of Insulating Magnetic Materials Composed of Epoxy Resin and Pure Iron Powder for Motor and Reactor Core Applications IEEJ Journal of Industry Applications 10(6),pp.606-611

  • 2020.08論文 / 共著

    Formation of Mg2Si1-xSnx Thin Films by Co-sputtering and Investigation of their p-type Electrical Conduction Japanese Journal of Applied Physics, Conference Proceedings 8,pp.011003-1-011003-

  • 2020.08論文 / 共著

    Structural, Optical and AC Conductivity Studies on Polycrystalline-Si/Nanocrystalline-FeSi2 Composite Thin Films Japanese Journal of Applied Physics, Conference Proceedings 8,pp.011301-1-011301-6

  • 2016.06論文 / 単著

    メカニカルミリング法と放電プラズマ焼結法によるβ-FeSi2の作製とその応用,材料の科学と工学,53, 78-81, 2016.

  • 2015.07論文 / 単著

    Synthesis and crystal growth of Mg2Si by the liquid encapsulated vertical gradient freezing method, Japanese Journal of Applied Physics, 54, pp. 085503-1-085503-5.