2023年度高等学校卒業式

式辞

一雨ごとに咲く花の種類も増え、春の訪れを感じる今日、明治大学付属明治高等学校三年生二五二名が卒業を迎える。卒業生のみならず、卒業生のご家族、関係者の皆様に心からお慶びを申し上げる。この晴れやかな瞬間を祝して、学校法人明治大学より柳谷孝理事長をはじめ多くの理事・役員の方々、明治大学から大六野耕作学長をはじめ副学長・学部長の方々また御来賓が多数御出席下さった。年度末の御多忙の中、ここにご臨席を賜り、心より御礼を申し上げる。さらに、新型コロナ感染症影響下で生徒を卒業まで導いた、この学年に関わる担任、教科担当の教諭に校長として、感謝の意を表したい。  
 さて、この三年間、中学からの生徒は六年間の日々を振り返って欲しい。新型コロナ感染症の影響を受けて、様々な学校生活もその活動内容がこれまでとは違ったものとなった。私が昨年校長に着任し、君達が高3学年になって、ようやくコロナ前の活動にほぼ戻った。入学式、先輩達との対面、本校の教室での日々の授業、先輩や後輩との班部活動、体育祭や球技大会、紫紺祭などの学校行事、そして修学旅行などの旅行行事等々、様々な友との交流や思い出が脳裏に浮かんでくることと思う。こうした本校でのひとつひとつの経験の積み重ねが、次第に君達を育み、君達を素晴らしき明高健兒に成長させていったのである。 
  君達は卒業後、大学、さらには大学院といった高等教育の世界に進むこととなる。これまでの中高の学習とは異なり、大学では自らが自らの学ぶ道を選択することが求められる。他者によって決められた線路を走るのではなく、各々の意思で勉学に努め、新しい知見を積み上げていかなくてはならない。進学後は、中等教育の世界から、学問の世界に足を踏み入れることになる。そこでは、先人によって切り拓かれた道も、また誰も未だ足を踏み入れていない世界も存在する。本校で学んだすべての知識が君たちの道程を照らす、大切な前照灯となっていることを感じとって欲しい。 
  大学では、学問の世界ですでに認識されている過去の事実を学び、その事実を表してきた理論や法則を理解する。その上で対象課題が私達の生きる経験世界に適合するものなのか、否か、を検証していくことになる。理論上の不整合が見出されたならば、それをどのように変革、改善するのか、そしてどうしたらより真実に近づくことができるのか、あるいは人類の幸福により大きく寄与できるのかといったことを考えていくことになる。そうしたことができるようになるためには、しっかりと理論を学び、高度な技術を修得していくための基礎学力が求められるのである。 
 恐れることはない。卒業生諸君は、これから立ち向かう学問の世界で立派に生きていくことができる「力」を、この三年間、明治高校での生活で得ている。すべての科目をきちんと学ぶという明治高校のカリキュラムに基づいているからである。コロナ禍で中高の間は思い切りその「力」を発揮する機会があまりなかった諸君もいることと思うが、その「力」を基に、大学での生活を十二分に楽しんで欲しい。 
  また、本校で育った諸君は、自らが思うよりも高い英語力、コミュニケーション能力、そしてプレゼンテーション能力を有している。大学進学後は、大学で与えられる様々な機会を捉え、交換留学、語学研修等を活用し、是非海外で視野と経験を積み重ねてきてもらいたい。 
  「卒業」とは、明治中学校・明治高等学校という学び舎で君達が、何を学び、どのような人格に成長していったのかを、今後の人生において示していくことを意味する。また、明治高等学校にとっては、その教育を通していかなる人材を育成し、社会に輩出したのかという責任を、社会から問われることである。是非、君たちには明治高等学校卒業生として、堅実に成長していってもらいたい。 
 もう一つ、「卒業」とは、諸君に生涯の友をもたらす。利害関係のない、大切な生涯の友である。明治高等学校の卒業生は、同窓会である「総明会」の新しいメンバーとして、この瞬間より大切な友人として生きていくことになる。いかなる苦難に遭遇しても、君たちには苦しみを半減させ、勇気を与えてくれるかけがえのない友がいる。お互いに尊敬し合い、助け合い、幾久しく仲良く過ごして欲しい。 
 いかなる環境においても、明治大学付属明治高等学校の卒業生であるという矜持をもち、「第一級の人物」として大きく成長していきたまえ。 
 卒業、おめでとう。 

2024年3月10日
明治大学付属明治高等学校
校 長  井家上 哲史