2025年度高等学校卒業式

式辞

 寒暖を繰り返しながら春の訪れを感じる今日、明治大学付属明治高等学校三年生二百六十五名が卒業を迎える。卒業生のみならず、卒業生のご家族、関係者の皆様に心からお慶びを申し上げる。この晴れやかな瞬間を祝して、学校法人明治大学より柳谷孝理事長をはじめ多くの理事・役員の方々、明治大学から上野正雄学長をはじめ副学長や学部長の方々、またご来賓が多数ご出席下さった。年度末のご多忙の中、ここにご臨席を賜り、心より御礼を申し上げる。さらに、生徒を卒業まで導いた、この学年に関わる担任、教科担当の教諭、職員に校長として、感謝の意を表したい。

 さて、この三年間、中学からの生徒は六年間の日々を振り返って欲しい。3年前、私が本校校長に着任し、初めての公式行事となる入学式において、君達に次のようなお祝いの言葉をかけた。

 「質実剛健」、「独立自治」、「第一級の人物」の三つの言葉から、生徒諸君に「この学校では、けっして競争はしない。みんなで助け合いながら、お互いに切磋拓磨し成長しよう」と語りかけてきた。生徒一人一人が、「第一級の人物」としてその名に価する人格を涵養し、本校での勉学や生活の中で互いに尊敬し、助け合い、ともに成長していくことによって本校の校訓は、諸君の精神に宿っていくと。

 一方で、本校が設立された百十年前とは異なり、現代社会はすさまじいスピードで、膨大な情報が伝わり、かつ拡散している。百年に一度のパンデミックである新型コロナウイルス感染症は、ウイルスが変異を続けていること。国際連合の常任理事国であるロシアによるウクライナ侵攻など、私たちの以前の日常生活や国際的な社会秩序からは、予想のできない事案が突如起こりえる時代となったこと。そうした中から真実を見出し、それを理解し、他者に伝達していくためには、中等教育で学ぶ広範な知識と、大学で修得する高度な専門知識の双方が不可欠であり、文系であっても、数理的な思考が求められ、理系であっても高い言語能力やコミュニケーション能力が求められる。本校での幅広い分野の勉学を通じて、自らの将来を見据え、大学卒業後に社会の最先端で活躍し、社会に貢献しえる「基礎学力」を、是非、本校で鍛えよう、と。

 それから三年間、先輩達との対面、本校の教室での日々の授業、先輩や後輩との班部活動、スポーツ大会、紫紺祭などの学校行事、そして修学旅行などの旅行行事等々、様々な友との交流や思い出が脳裏に浮かんでくることと思う。こうした本校でのひとつひとつの経験の積み重ねが、次第に君達を育み、君達を素晴らしき明高健児に成長させている。

 君達は卒業後、大学、さらには大学院といった高等教育の世界に進むこととなる。これまでの中高の学習とは異なり、大学では自らが自らの学ぶ道を選択することが求められる。

 大学では、学問の世界ですでに認識されている過去の事実を学び、その事実を表してきた理論や法則を理解する。その上で対象課題が私達の生きる経験世界に適合するものなのか、否か、を検証していくことになる。理論上の不整合が見出されたならば、それをどのように変革、改善するのか、そしてどうしたらより真実に近づくことができるのか、あるいは人類の幸福により大きく寄与できるのかといったことを考え、新しい価値を創造していくことになる。そうしたことができるようになるためには、しっかりと理論を学び、高度な技術を修得していける「基礎学力」が求められるのである。

 恐れることはない。君達は、これから立ち向かう学問の世界や更には社会で立派に生きていくことができる「基礎学力」「力」を、この三年間、明治高等学校での生活で得ている。受験科目にとらわれることなく、すべての科目をきちんと学ぶというカリキュラムのもと、質実剛健・独立自治を体現する学校生活を経てきたからである。その「力」を基に、大学での生活を十二分に楽しんで欲しい。

 また、本校で育った諸君は、自らが思うよりも高い基礎学力、英語力、コミュニケーション能力、そしてプレゼンテーション能力を有している。大学進学後は、大学で与えられる様々な機会を捉え、留学、語学研修等を活用し、是非海外で視野を広げまた経験を積み重ねてもらいたい。

 「卒業」とは、明治中学校・明治高等学校という学び舎で君達が何を学び、どのような人格に成長していったのかを、今後の人生において示していくことを意味する。また、明治高等学校にとっては、その教育を通していかなる人材を育成し、社会に輩出したのかという責任を、社会から問われることである。是非、君達には明治高等学校卒業生として、堅実に成長していってもらいたい。

 もう一つ、「卒業」とは、君達に生涯の友をもたらす。利害関係のない、大切な生涯の友である。明治高等学校の卒業生は、同窓会である「総明会」の新しいメンバーとして、この瞬間より大切な友人として生きていくことになる。いかなる苦難に遭遇しても、君達には苦しみを半減させ、勇気を与えてくれるかけがえのない友がいる。お互いに尊敬し合い、助け合い、幾久しく仲良く過ごして欲しい。

 いかなる環境においても、明治大学付属明治高等学校の卒業生であるという矜持をもち、「第一級の人物」として大きく成長していくことを期待している。

 卒業、おめでとう。


2026年3月10日
明治大学付属明治高等学校
校 長 井家上 哲史