2026年度高等学校・中学校入学式

式辞

 一雨毎に春が増し、桜が新年度を祝福する本日、明治大学付属明治中学校に173名、ならびに明治高等学校に明治中学校からの内部進学者172名と、高校入試を経ての112名を加えた計284名の優秀な生徒が入学した。本校に合格するには、君たち個人の勉学に対する不断の努力のみならず、ご両親やご家族の献身的なサポートが不可欠であった。本日は、新入生に係るすべての方々にとって喜びの瞬間である。校長として皆さんを心より歓迎する。

 この晴れやかな瞬間を祝して、学校法人明治大学より柳谷孝理事長をはじめ多くの理事役員の方々、明治大学から上野正雄学長をはじめ副学長また御来賓が多数御出席下さった。新年度が始まる御多忙の中、ここにご臨席を賜り、心より御礼を申し上げたい。

 新入生諸君、本日、この場に集うことのできた喜びを生涯忘れないで欲しい。真新しい制服に身を包み、この学校で新しい友と出会う。新しい出会いである。「春」は常に新しい出会いにめぐり合い、希望に満ちたひと時を感じることのできる季節である。君たちだけではない、私も一九七六年にこの明治高校を卒業し、縁あって校長を務めることとなり、4年目の春を迎えた。また明治高校、明治中学の教員ならびにスタッフにとっても、新しい出会いは慶びであり、また君たちを大きく育てていくという責任を感じる瞬間である。

 本校は、一九一二年(明治四十五年)に明治大学の併設校、旧制明治中学校として設立された。一九四八年の学制改革に伴い、新制明治高等学校・中学校となり、本年で創立以来百十四年目を迎え、旧制中学時代を合わせると、実に二万人を超える有意な人材を輩出してきた。

 本校には、三つの大切な言葉がある。まず、校訓としての「質実剛健」、ならびに「独立自治」という言葉である。そして、もう一つは、本校初代校長、明治大学法学部教授、弁護士、衆議院議員、貴族院議員、極東軍事裁判のわが国の弁護団長、明治大学総長を歴任された鵜澤総明先生が、旧制明治中学校の生徒たちに語った「第一級の人物たれ」という言葉である。旧制中学校とは、十二歳から十六歳までの中等教育を行い、その卒業生は旧制高等学校や大学予科、高等師範学校などに進学する、当時のわが国のエリートの養成機関であった。それ故、鵜澤先生は、生徒たちに勉学はもちろんのこと、教養人としての立ち居振る舞いや礼節などを備えた人格の陶冶を求めたのである。

 「質実剛健」とは、こうした「第一級の人物」に価するだけの内容を伴う人材として、虚飾を取り去り内実を磨き、誠実で心身ともに逞しく、健やかに成長していくことを意味する。

 そしてもう一つの校訓である「独立自治」とは、明治大学の創立者の一人である岸本辰雄先生の思想によっている。私学の雄としての明治大学が、「学問の独立、自由を保ち、自治の精神を養い、人格の完成を謀ること」により、官立(国立)大学よりも勝る存在になること、また本学の教育とは、単に知識を注入するのではなく、学生・生徒が自らの知識を開発できるように支援することに由来している。これらは、自分は他の人とは違うという自我の意識を保ちながら、けっして自分勝手にはならず、他者の人格をも尊重し、社会の中で役割を果たし、ルールを守ることのできる人になって欲しいという願いである。

 以上の三つの言葉から、本校の生徒諸君に「この学校では、成績競争はいらない。みんなで助け合いながら、お互いに切磋拓磨し成長しよう」と語りかけている。生徒一人一人が、「第一級の人物」としてその名に価する人格を涵養し、本校での勉学や生活の中で互いに尊敬し、助け合い、ともに成長していくことによって本校の校訓は、諸君の精神に宿っていくのである。明治大学の直系付属校である本校では、一定の推薦基準を満たせば、全員が明治大学に、また希望する学部にほぼ進学できる推薦枠をいただいている。そういう意味からも、本校では他者との競争は意味がなく、友と助け合い、励ましあいながら自己の能力を最大限に向上させていけるのである。

 一方で、本校が設立された百十年前とは異なり、現代社会は人工知能AIを身近に使うことができ、またすさまじいスピードで、膨大な情報が伝わり、かつ拡散している。百年に一度のパンデミックである新型コロナウイルス感染症が短期間に世界的に蔓延したことや、国際連合の常任理事国であるロシアによるウクライナ侵攻や昨今の中東情勢とアメリカなど、私たちの以前の日常生活や国際的な社会秩序からは、予想のできない事案が突如起こりえる時代となっている。そうした中から真実を見出し、それを理解し、他者に伝達していくためには、中等教育で学ぶ広範な知識と、大学で修得する高度な専門知識の双方が不可欠であり、文系であっても、データサイエンスや数理的な思考が求められ、理系であっても高い言語能力やコミュニケーション能力が求められる。本校での幅広い分野の勉学、受験科目にとらわれず、高校2年生まで文系理系を分けることなくほぼ同じカリキュラムを全員が学ぶという幅広い分野の勉学を通じて、自らの将来を見据え、大学卒業後に社会の最先端で活躍し、社会に貢献し得る「考える力」と「基礎学力」を、是非、本校で鍛えようではないか。

 勉学だけではない。校長の私をはじめ、すべての教諭、事務スタッフは、学校行事や班部活動も含めた君達の大切な毎日のために努力を惜しまない。助けが必要ならいつでも私たちに語りかけ、問いかけてほしい。この学校で、明るく、楽しく、「考える力」と「基礎学力」を付ける毎日を共に送ろうではないか。

 入学、おめでとう。

2026年4月6日
明治大学付属明治高等学校
明治大学付属明治中学校

校 長 井家上 哲史