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『オトナの過程 M』「明治線途中下車」インタビュー
2024年12月30日
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- 教育・進路
頭で考え続ける坂本さんと、とにかく手を動かす藤木さん。明校生として過ごした6年の中で、タイプは正反対ながら刺激を与え合ってきた2人から、やりたいことの選択肢を絞らず、「深化」する姿勢が浮かび上がってきました。ここに『オトナの過程 M』編集部の許可を得て転載させていただきます。2人の成長ストーリーをお楽しみください。
「数学の人」と「パソコンの人」
お二人は中高在学中も親交がおありだったそうですが、当初のお互いの印象などは?
藤 中1のときクラスが一緒だったんですけど、最初の出会いはそんなに覚えていなくて(笑) 中3の初めくらいから仲良くなって、当時から坂本さんは「数学の人」って感じでした。
坂 私も、最初は覚えていないんですけど、「いつもパソコンで何かつくっている人」ってイメージでしたね。
お二人とも、もともと数学やパソコンが好きで?
坂 小学生の頃から算数とか数学が好きで。中1の最初の方で高校入試の数学の問題はもう解けましたね。高1の春に、実用数学技能検定の準1級(高3理系修了程度)を取得しました。
藤 私は昔から工作とか絵を描くのが好きで、中学に入ってからは物理部でパソコンを使った電子工作や3Dモデリングなどをするようになりました。生徒会本部でポスターなどの印刷物をつくることもしましたね。
1つの選択肢としての外部受験
お二人が「外部受験」を意識し始めたのは?
坂 明大の総合数理学部の現象数理学科とかを考えていた時期もありました。学費の問題などもあったんですけど、受験の理由の1つが、東工大(当時)のオープンキャンパスに行った時、博士前期課程の方のプレゼンがすごく面白くて、ここに行けば自分みたいな「数学オタク」がたくさんいるんじゃないかと思ったのが始まりで。
藤 私はまさに電子工作みたいな、仕組みをつくる理工系と、デザイン系の2つに興味があって、理工系の方は、明大でもできるところがいろいろあるんですけど、デザインはなかなかやりづらくて。とはいえ、最初からずっと「受験」を意識していたわけではなく、高3になったあたりで、やっぱりデザイン分野が楽しいと思って、なら受験するかと。あくまで1つの選択肢として、「受験」があった感じでした。
最強の理系に
他大学を受験するというのは苦労もあったのでは?
坂 数検準1級に合格したあたりから、基礎的な部分には自信が出てきて、だったら「最強の理系になりたい」という思いが強くなりました(笑)。そこから、理系科目をコツコツ進めて。いま振り返ると、焦るとかスランプみたいな時期はなかったかもしれないですね。新しいことを少しずつ知っていくのが楽しくて。
藤 坂本さんの、常に集中して考えるところは、見習いたいですね。私はむしろ逆なので。
観察眼の藤木
藤 私は推薦入試で合格したんですけど、出題形式がすごく特殊で、お題についてホワイトボードを使って説明してくださいみたいな。あと、結局は受けなかったんですが、実技試験(デッサン)の対策で、小学生の頃に通っていた絵画造形教室にまた行くこともしました。サイズ感とか光の反射とか、細かい部分を観察する意識をもつようになりました。
坂 藤木さんは、電子工作にしてもデザインにしても、なんでも興味をもって取り組んでいるんですよね。それが幅広い観察力につながっているのかなと。私にはとても真似できないことなので、うらやましく思っています。
明校に救われた
坂 一般入試だと、共通テストで理系でも社会科から1つ選択しないといけないんですが、私は迷わず「倫理・政治経済」を選んだんです。それは、明校の倫理の授業で、人間や世界とは何かという問いに対して、いろんな人が知恵を出し合って、時には批判もしながら、積み重なってきたという流れに興味をもったことがきっかけとなって。ただの暗記科目だと思っていた社会も、考え続けることでわかる面白さに出会ったという経験は今でも大切にしています。
藤 大学の講義でよく言われるのが、フィードバックを意識するということで。当然だけど、何かをデザインするときは、使い手や発注者のことを意識する必要があって。自分だけじゃなく、相手が満足して、初めて完成なんですよね。そこは、物理部や生徒会で様々なものをつくって、人からコメントをもらって、次につなげるっていう、明校での経験がすごく活きていると思います。
坂 勉強もテストのためにするとかじゃなくて、周りと協力しながらのびのびいろいろなことをやれる明校の雰囲気に、受験生としても助けられたことは多くあると思います。
深化する2人から明校生へ
大学1年生の今、明校生に伝えたいことは?
坂 私は、受験のために部活を辞めて。多くの方々にご迷惑おかけして、今でもお詫びしたいんですが、それがすごく原動力になったんです。だから、「一兎を追って一兎を得ましょう」っていうのが自分の中にずっとあるんです。明校生の皆さんも自分の夢に胸張って、一つ一つ着実に進んでほしいっていうのはありますね。
藤 明校生って漫然と過ごしていると、「いつも通りの生活」で終わってしまいがちだけど、小さなきっかけを見逃さずにいてほしいですね。何か発見があったら、一回自分の中に取っておいて、時間があるときに挑戦してみることを意識してもらえれば。中高生のうちにもてる趣味が多いと人生楽しいのかなと思います。
【コラム】
・はじまりは、小さなワクワクさん。
現在、大学でデザインの勉強をしている藤木さん。幼稚園の頃は、教育テレビ「つくってあそぼ」を見て、ワクワクさんの工作をつくって幼稚園などで披露していたそう。モノをデザインして、評価をもらうということの原点はこのときにあるのかも?
・関根先生からの宝物!?
明校の卒業生の知る人ぞ知る、関根正人先生の大問8。坂本さんは、高3の数Ⅲαであの大問8を見事解き切り、その学年初の100 点を獲得。
・大学1年生の1コマ
それぞれの進学先で、大学生活を謳歌している2人。坂本さんは、基礎科目を学ぶ講義のみならず、自分で数学の専門書を読み込む「1人ゼミ」に勤しんでいるんだとか。藤木さんは、美術部に入り、からくり工作を設計し、実際に組み立てるところまでを計画中。好きなことに向かって挑戦を続ける2人の今後が楽しみだ。
【2人のプロフィール】
・坂本幸生喜さん(2024年明治高校卒)
現在、東京科学大学理学院。高2の7月まで吹奏楽班に所属。藤木さん曰く、「愉快な頭脳派」。
・藤木優弥さん(2024年明治高校卒)
現在、東京都立大学システムデザイン学部インダストリアルアート学科。明校では、物理部・生徒会本部所属。坂本さん曰く、「絵描き上手なプーさん」。
【出典】
『オトナの過程 M』Vol.9 (2024年10月1日発行)
【記事担当者】
話し手:坂本幸生喜・藤木優弥
執筆:津島聖也
デザイン:藤木優弥