Go Forward

総合数理学部リポート

社会のさまざまな分野に広がるネットワーク。学科の学びも多様です。

 明治大学付属明治高等学校の3年生が総合数理学部を訪問。ネットワークデザイン学科の見学会を行いました。
 ネットワークデザイン学科の研究対象は、コンピュータネットワークはもちろん、電力や交通などの社会インフラや生命システムなど、世の中のシステム全般にわたっています。今回は、「ネットワーク」というキーワードでつながる、この研究領域の広さを知ってもらうため、電気電子、情報通信、バイオなどの分野から6つの研究室をピックアップして、それぞれの個性を体験するツアーを実施しました。
 

環境エネルギー、情報通信、ビジネスの分野で、これからの社会基盤を支える人を育てます。

「エネルギーを上手に使うネットワーク」福山良和 研究室

福山先生は、技術者自らが先進技術を海外に向けてアピールする必要性を重視し、英語で研究発表を行う機会をできるだけ作りたいと考えている。



まず訪れたのは福山良和先生の研究室です。福山研究室のテーマは、インフラを有効活用して、エコな社会をつくる「スマートコミュニティ」です。この日は、福山研究室のゼミが、すべて英語で行われていました。


明治大学招聘教授として福山研究室で共同研究をしているサンタナ准教授(ブラジル・パラ州立大学)も参加。

 トピックは機械学習。慣れない英語に苦労しつつも、技術に関する話題に反応する学生の姿が、高校生の印象に残ったようです。
「ネットワークとつながる賢いロボット」森岡一幸 研究室

デモンストレーションでは自律走行ロボットが、フロアを一周して帰ってくる様子を紹介。昨年のつくばチャレンジにエントリーした際は、雨の屋外を自律走行し、好記録をマークした。今年もゼミ有志で挑戦する。

 森岡一幸先生の専門は、「知能ロボット」研究です。ロボットが人間社会の中で自然に受け入れられるよう、人間と同じく自分で成長していくことをめざしています。

一見簡単そうに見えるロボットの動作だが、その裏では、膨大な情報を扱う「数理」と「情報技術」の力がはたらいている。

そのためには、センサやGPSなどのネットワークから膨大な情報を取り入れ、すばやく処理して行動につなげるプログラムが必要です。研究室では学生たちがプログラムを工夫し、挑戦している様子も見られました。

「生命のネットワークを解明」佐々木貴規 研究室



 佐々木貴規先生は、生体分子が作り上げるネットワークを研究しています。生体分子同士のつながり、つまり“ネットワーク”を数理の力で解析し、モデル化できれば、コンピュータ上で再現できるようになります。細胞内の膨大な種類のDNAやタンパク質、代謝物質のデータを解析する研究によって、将来、ガンに代表されるような疾患のメカニズムが明らかにできると期待されています。

生体物質の形や機能を詳しく調べることが可能な、最新の実験設備が整う研究室。

研究対象の一つである古細菌は独特な匂いのタンパク質を作ります。参加した高校生もかわるがわる匂いを嗅いでいました。カラフルなスライドで紹介される研究内容と、細胞がつくる奇妙な匂いに、高校生も興味がつきません。

「電力エネルギーを制御するネットワーク」浦野昌一 研究室



 次に訪問したのは浦野昌一先生の研究室です。浦野先生の専門は、いろいろな手段で発電された電気を有効に活用するための技術です。太陽光発電などの再生可能エネルギーは不安定なため、家庭などで上手に使うには新しい制御方法が必要です。その実現に向け、どんな影響があるかを評価し、数理と人工知能でコントロールすることも、ネットワーク研究のひとつ。

「コンピュータによるシミュレーションだけではわからない未知の現象を確かめるためにもハイブリッドシミュレータが必要」と話す浦野先生。

 現在は、コンピュータで解析した数理モデルをもとに、デジタルとアナログとを融合したハイブリッドシミュレータ(実際に電流が流れるミニチュア)で検証実験を行う計画が進んでいます。
「パソコンやスマホをもっと速くする」吉田明正 研究室



 続いて、迎え入れられたのは吉田明正先生の研究室です。私たちが使っているパソコンやスマホは、複数のコアで構成されたプロセッサを搭載して、処理速度を高めています。こうした複数のコアをもつ「マルチコアプロセッサ」を効率よく動かすために必要なのが並列ソフトウェアです。

64コアのサーバー。ネットワークデザイン学科が所有する64コアのサーバーにログインして、約64倍の高速な計算を行うことができる。

 吉田先生は、この並列ソフトウェアの開発を自動化することをめざしています。実際にタブレットとサーバーを使ったデモンストレーションでは、計算速度に差がある様子が明らかになりました。
「社会を支えるワイヤレスネットワーク」大野光平 研究室



 最後は大野光平先生の研究室へ向かいます。大野先生は次世代の無線技術について研究しています。例えばGPSではなく電波で位置を測定する技術や、ビルやショッピングセンターの中で位置を知る技術など、より速く、賢く、信頼性が高い無線通信ネットワークを活用することが目標。

横軸が周波数、縦軸が電力で周波数ごとのレベルを測定するスペクトラムアナライザー。無線研究の基本的なツールだ。

自動車を通信で結び、前のクルマの動きを予測して事故を防ぐことや、人の健康状態を測定し、無線で送信することで人々の健康に貢献することなど、世の中に役立つ研究ができることが魅力です。

在学生メッセージ

新村拓也(ネットワークデザイン学科4年生:秋岡明香研究室所属)

 私は今、親子のコミュニケーションを深めるゲームを研究しています。ゲームを実際につくるにはデザインや人の心理など、学ぶべきことが多く、苦心しつつも、人がゲームに“ハマる”ポイントを解明したいと思っています。仲間の研究テーマもバラエティに富んでいて、いつも刺激を受けています。人とともに学ぶことも研究室の大きな意味だと思います。

社会で役立つ柔軟性や思考力を磨く。

 ネットワークデザイン学科の研究テーマは多様ですが、物事の本質であるネットワークを見抜き、コントロールするという点で共通しています。先生方の平均年齢も若く、知識を広げ、最も興味があること探しながら学んでいくには良い環境です。

 数理科学は理論と実験の架け橋となり、工学的な研究は世の中で生かされることを考えて進められています。現実を変えていく力になれることがネットワークデザイン学科で学ぶ醍醐味だと言えるでしょう。

 8月18日と19日のオープンキャンパスでは、今回のような研究室ツアーに加え、模擬授業や個別相談会も行います。社会やビジネスの課題解決に役立つ学びを実感してほしいと期待しています。