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小田光康ゼミ学生ら、野球の国際大会「WBC」を米国メディア記者として取材

2017年04月04日
明治大学 情報コミュニケーション学部事務室

WBCを取材する橋本君WBCを取材する橋本君

 記者会見に臨む小久保裕紀監督 記者会見に臨む小久保裕紀監督

東京ドームでの試合風景東京ドームでの試合風景

会見に臨む小久保監督(中央)と山田哲人選手(左)、内川聖一選手(右)会見に臨む小久保監督(中央)と山田哲人選手(左)、内川聖一選手(右)

東京ドームの試合会場風景東京ドームの試合会場風景

会見に望むキューバ代表カルロス・マルティ監督会見に望むキューバ代表カルロス・マルティ監督

記者会見するイスラエルのジェリー・ウェインスタイン監督記者会見するイスラエルのジェリー・ウェインスタイン監督

会見に臨む筒香嘉智選手会見に臨む筒香嘉智選手

 WBCの試合会場となった東京ドームの外観 WBCの試合会場となった東京ドームの外観

東京ドーム内に張られたWBCのロゴ東京ドーム内に張られたWBCのロゴ

情報コミュニケーション学部小田光康ゼミナールでは、ジャーナリズム・メディア分野のグローバル人材育成に向けた「アクティブ・ラーニング」の一環として、OBを含むゼミ生5人がこの度、野球の国・地域別対抗戦である2017ワールドベースボールクラシック(WBC)を米五輪専門メディア「Around The Rings(ATR)」の記者として取材しました。

今回で4回目となるWBCは3月6日から23日にかけて開催され、12チームが日本、韓国、アメリカ、メキシコで1、2次ラウンド、そこで勝ち残った4チームがアメリカ・ロサンゼルスでの決勝ラウンドを戦いました。大会主催者から公式記者証を得て、4人のゼミ生らがこれらの試合のうち東京(東京ドーム)で行われた1次ラウンドプールBと2次ラウンドプールEの日本代表戦を取材しました。

小田ゼミではATRの協力を得て、教員と有志学生らがジャーナリズム教育の実践の場として非営利型パブリック・メディア「Around the Rings Japan(ATR Japan)」(代表:小田光康准教授)を運営しています。ゼミ生はこれまで、リオ五輪大会や札幌アジア大会、国際オリンピック委員会(IOC)への国際取材や、2020年東京五輪パラリンピック関連の国内取材を重ねてきました。この結果はATRに英文記事として、また、ATR Japanに邦文記事として掲載しています。

以下はWBC取材での活動報告です。

■橋本大周君(情報コミュニケーション研究科2年。指導教員、中村義幸教授)
今大会は、大会前に日本人メジャーリーガーの出場辞退や壮行試合・強化試合での敗戦が続いたことで、注目度はそれほど高くありませんでしたが、大会が開幕し、日本代表が勝利を重ねていくに連れ人々の関心も徐々に高まっていったように思います。大会全体としても、観客動員数が100万人を超え史上最多となったほか、テレビ視聴者数やグッズ販売についても過去最高を記録したように、出場国を中心に世界的に盛り上がりました。私は東京ドームで取材をしていて、観客の盛り上がりやメディアの取材体制から大会の盛況を感じました。

また、私は取材をしていく中で日本代表の団結力が強く印象に残りました。日本代表は2013年のWBCでベスト4に終わったことを契機に常設化され、小久保裕紀監督のもと国際大会に向けた継続的なチーム作りがなされてきました。特に、小久保監督と選手たちの間には数年間かけて築き上げられた絆があり、監督も選手も今大会にかける想いは強かったようです。私は試合前の練習の雰囲気や、試合中の選手、監督、スタッフのコミュニケーション、試合後の記者会見でのチームに関する発言に注目していましたが、選手をはじめ関係者は皆チームのために力を尽くしていたことを実感しました。特に小久保監督が選手を気遣い、しきりに言葉をかけていたことが印象に残っています。

日本代表は1次・2次ラウンドを全勝で通過し、決勝ラウンドに進んだものの準決勝でアメリカ代表に惜敗しました。大会後、小久保監督は退任を表明し、日本代表は新体制で2020年東京五輪をはじめ、国際大会に臨むことになりました。日本では依然として高い人気を誇る野球ですが、まだまだ野球を楽しむほど経済的な余裕のない国も存在します。私は今大会の取材を契機に、国際大会の意義について考えました。そして、日本の高い野球人気や技術、試合や大会で得られる収益が、開発途上国における野球の発展にどのように貢献することができるのかということに注目して取材活動をして行きたいと思いました。

■佐野圭弥君(情報コミュニケーション学部4年、ゼミ長)
私は2月15日の日本対イスラエルの試合を取材し、そこで公平中立を掲げている日本のメディアの取材態勢について違和感を抱きました。

私が取材したゲームは一次ラウンド・二次ラウンド通しての全勝がかかった試合だったこともあり、私が球場に到着した頃にはすでに記者席は満席でした。そのため、私は記者控室でモニター越しに試合をチェックすることにしました。記者室でも座席がすべて埋まる程記者が集まっていましたが、それぞれの記者がスコア表を記入するなどしていて、緊張感に包まれていました。

試合は中盤まで投手戦が続き、0−0が続きましたが、6回裏の筒香選手のソロホームランを皮切りに、日本の猛攻が続く展開となりました。最終回に3点を許したものの、そのまま日本が逃げ切り8−3で勝利を収めました。イスラエルは今大会が本戦初出場だったにもかかわらず、一次ラウンドで韓国やオランダに勝利するなど、メディアにも取り上げられ、注目されていました。試合後の記者会見で多くの質問が投げかけられるのだろうと私は予想していました。しかし、イスラエル代表の会見で投げかけられた質問の大半が海外メディアからのものでした。

確かに国内の注目は「日本が勝つかどうか」であったと思います。そのため、結果として出稿する記事が日本を中心とした内容になるのは合点がいきます。ただ、取材段階で力の入れ具合に偏りがあるのは中立公正の原則から逸脱しているのではないか、と思いました。双方に同じ態度で、フェアに取材に臨むことこそが、スポーツの取材にも求められていると思いました。

■南周平君(情報コミュニケーション学部4年、体育会硬式野球部)
私は今大会、日本代表戦を含む3試合を取材しました。私は今回の取材において、侍ジャパンの常設化の効果と日本代表戦以外での球場の雰囲気に注目しました。前回大会の2013年WBCでの準決勝敗退という結果を受け、代表チームは常設化されることになりました。野球の代表チームの常設化というのは世界でも初の試みでもあり、今大会はその集大成でもありました。

今回、侍ジャパンの常連であった嶋基宏選手(楽天)が怪我により、残念ながら途中離脱してしまいました。嶋選手の代わりに緊急招集されたのが、炭谷銀仁朗選手(西武)で、炭谷選手がチームに合流したのは開幕の三日前でした。普通、開幕の三日前にチームに合流したらチームの雰囲気に馴染んだり、戦術面での考えを理解することはなかなか難しいことでしょう。

また、炭谷選手のポジションは捕手であり、ピッチャーの特徴を把握するなら、なおさら大変なことです。しかし、炭谷選手は代表チーム常設化以降、コンスタントに侍ジャパンに招集されていたため、何も問題なくチームに合流できたと語っていました。このような緊急事態を問題なく乗り越えられたということは、侍ジャパンの常設化は非常に有意義だったのではないかと感じました。

球場の観客席に目を移すと、代表チームのユニフォームを着て応援している方が多く、サッカーの日本代表戦と似たような雰囲気を感じました。侍ジャパン常設化は選手のみならず、応援するファンの方達も球団の垣根を超えて一致団結できる良い機会ではないかと感じました。

次に日本代表戦以外での球場の雰囲気について感じたことを綴りたいと思います。私はキューバ対中国の試合を取材しましたが、観客は日本戦の3分の1程度の人数で、応援などはほとんどありませんでした。日本での開催とはいえ、ここまで盛り上がりに欠けていることに対して正直驚きました。例えばサッカーのFIFAワールドカップでは開催国の試合でなくとも、スタジアムはほぼ満員になり、大きな声援が飛び交います。WBCという大会、もっと大きく言えば野球というスポーツ自体が世界的な規模で見ればマイナーなスポーツなのかもしれないなという印象を受けました。ただ、打球音やボールがキャッチャーミットに収まる音、ベンチからの声など普段のプロ野球では聞くことのできない音を体感することができ、国際試合ならではだと感じました。

最後に今回の取材で最も心に残ったことを述べさせていただきます。1次ラウンドの日本対オーストラリアを取材した際、日本は5回裏に1死満塁のピンチを迎えました。ピッチャーの岡田俊哉選手(中日)がストライク取れず、小林誠司選手(巨人)がマウンドに行って間をとった時、球場から大きな拍手と頑張れという声援が起こりました。見事、岡田選手はピンチをしのぎ、無失点で切り抜けました。私はその拍手と声援を聞いて、スポーツには人々を感動させたり、一致団結させる力があることを再確認させられました。体育会部員として、スポーツの持つ力を考えさせられるとても良い機会となりました。

■ 宮城奈々さん(情報コミュニケーション学部4年)
私は今まで、2020年東京五輪・パラリンピック組織委員会の会見・イベントを中心に取材してきました。試合の取材は初めてであり、すべてを一人でカバーする必要もあったため、WBCは大きな挑戦の舞台であったように思います。短時間ではありましたが、多くのものを得ることができました。

WBCは世界一をかけた国際大会であり、当然周りには普段から野球の取材を行っている百戦錬磨のプロの記者ばかりです。また、各社は複数の記者・カメラマンを送り込み、それぞれ持ち場を分担して取材をしていました。一方、私たちは野球専門のメディアではなく、発行されたクレデンシャル(記者証)も1枚のみでした。そこで、大会期間を迎えるまでに「五輪メディアであるATRならではのWBC取材とは何か」ということをメンバー間で話し合い、取材に臨みました。

私は3月7日に行われた日本対キューバの試合を担当しました。日本代表の初戦ということで、非常に注目度の高い一戦でした。そこで私は「今重要なことは何か」を意識し、優先順位をつけて行動することを心がけました。たとえば、試合開始前に配布された資料を読み、大まかに取材の段取りを決めたことです。今回は初戦ということで、何よりも小久保監督の感想に注目すべきだと判断し、記者会見を最優先することにしました。WBCでは試合終了10分後から記者会見が行われます。記者席から会見場が離れていたため、事前に場所の確認を行い、スムーズに動けるよう準備しました。また、試合中はスコアをつけながら、「記事の中で大きく扱うべきプレーはどれか」ということも考えていました。隣に座っていた外国人記者と英語でコミュニケーションをとる場面もありました。

今回のWBC取材では、「自ら考え、プロの中に飛び込んでいく勇気」が必要でした。これは、今までの活動で学んできた「問題意識」や「ニュース価値を判断する力」が行動の肝になったと感じています。また、会場にはスポーツならではの緊張感があり、1つ1つのプレーに対する記者の鋭いまなざしが印象的でした。試合取材を学べただけでなく、瞬間をとらえる第一線の雰囲気を肌で感じることができた貴重な経験でした。

一方で、試合記事の中に独自性を出すことが難しく、もっといい記事を書けたのではないかという悔しい気持ちもあります。プレーごとの速報記事を出したり、会場のファンにインタビューしたり、考えられる取材はいくつもありましたが、今回は挑戦することができませんでした。この反省点は、これからの取材に必ずいかしていきたいです。「ATRならでは」、「私ならでは」の視点を持った記事を書けるよう、普段から積み重ねを意識し、今後の活動に取り組んでいこうと思います。

■田村純一朗君(情報コミュニケーション学部4年)
私が2017WBCの取材を通して感じたことは、記者とスポーツ選手の繋がりの強さです。普段、私たちが活動の中心としていることは、2020年東京五輪組織委員会をはじめとした、いわゆる政治的なあるいはスポーツ界の「権力者」に対する取材です。メディアが持つ使命の1つに「権力の監視」というものがあります。市民社会のために、社会のために、彼らの暴走を防がなければなりません。そのため、メディアは彼らを批判する記事も書く必要があります。ここで難しいのは、そんな彼らとの距離感です。媚びへつらい不正を正すことができなければ、それはメディアとしての存在価値がありません。しかし、権力からの独立を意識しすぎるあまり、権力者たちと距離を置きすぎてしまっては、必要な情報も得られなくなります。そのため適度な距離感が求められてきます。

しかし、今回私たちが相手とした取材対象は権力者ではなくスポーツ選手です。スポーツ・ジャーナリズムで大切なことは、感動を読者・視聴者に届けること、そのスポーツの発展に貢献することだと思います。そして、一般市民の代表として選手たちを励ますことも一つの役割なのではないかと考えています。もちろん、選手や監督がそのスポーツの発展を妨げようとする行為をしている場合は、強く批判しなければいけないです。しかし、基本は「選手と共に作り上げる」という意識を軸にして良いのではないでしょうか。

この思いがより強くなったのが今回のWBC取材でした。会見終了後に尻を叩きながら「お疲れさん」と声をかけている他社のスポーツ記者が印象的でした。歩きながら友人のように話している記者もいました。初めての野球取材だった私は当然選手たちと交流したことがないため、そうした輪に割り込んでいけませんでした。話しかけられる雰囲気がなかったと言ったほうが正しいかもしれません。

権力者に対しては適度な距離感が大事だと思いますが、スポーツ選手に対しては思いっきり距離を詰めて良いのではないでしょうか。スポーツ・ニュースで知りたいことの1つとして、選手の苦悩や思いがあると思います。それは自分の弱みを見せることにもなるので、選手は中々話したがらないはずです。そうした情報を得るためには、「弱みを見せてもいいな」と思ってもらうことが求められます。WBCに来ていた他の記者と選手たちの間には、そうした強い繋がり、信頼関係を感じました。

日本代表は2大会連続ベスト4という結果になりましたが、東京ドームでは選手たちを後押ししようと大きな応援に包まれていました。WBCがサッカーW杯に負けないぐらい注目度の高い大会になっていくか、個人的には着目していこうと思います。

■「現場取材」というフィールド・ワークの効用(情報コミュニケーション学部准教授 小田光康)
ジャーナリズム関連の授業で、「権力の監視機能」や「報道の中立公正性」といったことを、私の経験を交えて教室で話す。だが、こんな話をしてもたいがいの学生にはピンと来ないか、往々にして脱線し、「マスゴミ論」に置き換わる。どこで感化されたかは分からぬが、事実、この学部にはマスコミに否定的な意見を持つ者が多い。ジャーナリズム研究とは、ジャーナリズムについて批判的に考察することを指す。非難することではない。確かに、現在のマスメディアは倫理的、技法的な様々な問題を抱える。こうした問題が起こる取材現場に足を運び、ちまたに拡がる「マスゴミ論」を検証することが、ジャーナリズム研究に求められていることの一つであろう。

スポーツ・ジャーナリズムの目的はスポーツのあるべき姿の維持と健全な発展を見守るために、権力からの理不尽な圧力や介入を常に監視すると共に、スポーツを通じて市民社会に感動や潤いを提供することだと考える。スポーツの取材で難しいのが、記者としての立ち位置だ。選手や監督・コーチといった取材対象に付かず離れずといった距離感を取るのが難しい。日本のスポーツ界が閉鎖的でかなり特殊であることは否定できない。選手と記者が大学体育会の先輩後輩の関係というのもざらで、その関係が取材の現場に持ち込まれることが往々にしてある。この「距離感」や「場の雰囲気」を感じ取ることができるのが唯一、報道現場である。

プロの記者と肩を並べて「現場取材」をするフィールド・ワークの効用でもっとも大きいのは、学生の問題意識の変化であろう。緊張感溢れる報道現場で、些細なことでも注意深く観察する必要に迫られ、不明なことは即座に解明することが求められ、誰も手にしたことの無い情報を嗅ぎ分けて、誰よりも早く正確に分かりやすく報じる、そして、一線のプロの記者の記事と比較して敗北感を味わうといった一連の生々しい体験が、学生の「個」を鍛える。これらの経験は単にその場の取材活動だけに留まらず、学術研究面にも、社会生活面にも如実に生きてくる。私のゼミでは、このような活動を「アクティブ・ラーニング」と捉えている。

■ATRについて
米ジョージア州アトランタに本部を置くATRはエド・フーラCEO兼編集長が1990年に創立した五輪専門の報道機関で、1992年のバルセロナ大会から2016年のリオデジャネイロ大会まで夏季・冬季の五輪すべてを取材してきました。国際オリンピック委員会(IOC)の本部があるスイス・ローザンヌに特派員を置き、総勢約20人のジャーナリストがIOCや日本オリンピック委員会(JOC)など各国のオリンピック委員会、国際競技団体(IF)を中心に取材活動をしています。五輪大会の競技そのものよりも、五輪を取り巻く政治・経済・社会に関する出来事を取材対象にしていることが特徴です。また、フーラ編集長は毎日新聞で『五輪を語ろう』という連載コラムを担当しています。

◆参考
2017WBC:http://www.wbc2017.jp/
ATRのHP:http://aroundtherings.com/site/1/Home
ATR JapanのHP:http://aroundtherings.jp/
 

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