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ゲストスピーカーによる特別授業(7月4日実施)

1.実施日    
2018年7月4日(水)10:50~12:30

2.実施場所
駿河台キャンパス リバティタワー 1011教室

3.科目名
交通論A

4.テーマ 
新規航空会社の設立と関連諸問題

5.ゲストスピーカー
井出 隆司 氏(元エアアジア・ジャパン代表取締役会長/事業構想大学院大学 客員教授)

6.実施内容
 第1に、日米における航空産業の歴史、すなわち①45・47体制、②アメリカにおける規制緩和、③オープンスカイ、④日本における規制緩和の要点を説明された。45・47体制は、当時の日本の航空産業の力量から判断して妥当だとする。一方、1978年にアメリカで始まった国内航空の規制緩和は、米国航空市場へ大手既存の航空会社と新規参入したLCCとの間に熾烈な競争をもたらし、LCCだけでなく、大手既存のパン・アメリカン航空でさえ、1985年に経営破綻した点を挙げられた。パン・アメリカン航空の場合、運賃競争の激化と高コストが原因であった。その後、オープンスカイが採用され、空の5つの自由は崩壊していった。こうしたアメリカ発の航空規制緩和を受けて、日本でも航空の規制緩和が進められ、新規航空会社としてスカイマークエアラインズが設立されるに至った。
 第2に、スカイマークエアラインズについての詳しい説明が展開された(井手氏は同社の設立から運営に経営陣として従事された経験を有しておられる)。スカイマークエアラインズは1998年に設立され、航空機2機で運航を開始した。しかし、①羽田空港の発着枠が大手既存の航空会社に有利に配分されていたこと、②空港直結のゲートが使用できないオープン・ストップのためゲートまでの移動に時間を要したこと、③自社の整備場がないこと(ANA委託)、④自社のチェックイン・カウンターがないこと(ANA委託)といった、不利な状況からの会社立ち上げであった。さらに、大手既存の航空会社(JAL、ANA、JAS)とスカイマークエアラインズとの運賃競争が繰り広げられたこと、ANAが後に委託費を値上げしたことなどが語られた。
 第3に、大手既存の航空会社に対するスカイマークエアラインズの戦略が、4Pの各視点、すなわち地元(九州)志向(福岡の翼、ローカルニュースの発信)、独自の運賃体系(60回分の回数券=6万円券の販売)、決済場所の開拓(郵便局やコンビニエンスストア)、スカイマークエアラインズの存在意義をメディアを通じて定着させることなどにまとめて示された。加えて、スカイマークエアラインズは資金獲得のためにマザーズへの上場を果たし、3機目を購入できることになった。そこでJASをターゲットに鹿児島路線に地域割引運賃を導入。弱体化したJASとJALの経営統合を認める代わりに、スカイマークエアラインズの羽田発着枠を増やすことを国へ要求した結果、17枠をスカイマークエアラインズは獲得できた。
 最後に、日本の将来的な航空市場に関しての展望が語られた。たとえば、日本の国内航空市場はカニバリゼーション状態となっているため、大手傘下LCCの再編を含めてJALとANAの2社体制になるであろうこと、ハワイ・太平洋横断路線のような中・長距離の移動にLCC参入の余地が残されていること、国内拠点空港の民営化による航空市場変化への柔軟な対応力を強化することなどが指摘された。
                                                                                                                                                                              

藤井 秀登 (科目担当教員)