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今、目の前にあるテキストやできごとが、少し違って見えてくる

「思想」領域研究コース 本間 次彦 教授



今年の9月に、法政大学出版局より「キーワードで読む中国古典」シリーズの第一巻として、二人の研究仲間(中島隆博・林文孝)と『コスモロギア——天・化・時』を刊行しました。この本でとりあげた「天」「化」「時」は、中国人がその文化的伝統の中で世界の秩序を実感し、それを理論化しようとする際には欠かすことのできない用語です。「天」「化」「時」は相互に緊密に関係づけられながらも、まったく同じ対象や事がらを指しているわけではありません。大まかに言えば、「天」は、この世界を根拠づける何ものかを指し、「化」は、この世界に生じる変化の多様性とその安定的秩序を指し、「時」は、この世界に生じる変化を前後に区別し、個性化する刻印を指します(「時」は、いわゆる時間ではありません)。『コスモロギア——天・化・時』が目ざしたのは、これらの用語を通して、複線的に中国思想を語り直してみることでした。このような着想自体はなかなか斬新なものであると思っています。ただ、叙述のできばえを評価するのは読者の皆さんです。ぜひ手にとってご覧いただければ幸いです。



私が分担したのは、そのうちの「化」の章です。「化」に関連する文献として、最も重要なものは、やはり『易経』でしょう。『易経』は、占いの書ですが、単なる占いの書ではありません。なぜなら、『易経』の中に記されているのは、陰と陽の六重の組み合わせによって生みだされる小宇宙である、と考えられてきたからです。その小宇宙は、実在する宇宙を反映し、さらに、現実の人間世界を反映しているというだけではありません。一定のパターンの下に、宇宙と世界の過去を記憶し、未来を指示する(だから、占いの根拠になります)という意味での小宇宙なのです。そこから、『易経』を読解することは、この世界を空間的にも時間的にも総体として考察することに等しい、と考えるようになるのも自然な流れでした。「化」の章は、そのような意味での『易経』解釈の歴史から始まって、最終的には、毛沢東の『矛盾論』や中国医学、風水などにまで説きおよんでいます。詳しくは、読んでからのお楽しみです。 
実は、今年の12月に刊行が予定されている同シリーズの第二巻『人ならぬもの——鬼・禽獣・石』にも、私は原稿を提供しています。こちらの方では、私の分担は「禽獣」の章でした。人は、どのような意味で禽獣(動物)とは異なると考えられてきたのか、また、禽獣は、人との関わりでどのような存在として描かれてきたのか。この二点が、この章のテーマになっています。お手本となるような先行研究がない中で、さまざまな思想文献や文学作品を試行錯誤的に渉猟したことはえがたい経験となりました。現代思想の分野でも動物論に対し、最近関心が向けられるようになっています。そのような動向とも期せずして一致することになり、自らの研究に新たな局面を開くことができたように思います。

「思想」領域研究コースでは、学生の皆さんたちに対し、あらゆる文化的事象に原理論的な考察を向けるようにうながします。そのような考察を反復することで、今、目の前にあるテキストやできごとは、それ以前とは少し違って見えてくるようになるでしょう。それが批判的思考の萌芽です。本コースが目ざすのは、皆さんの批判的思考力を最大限に醸成することです。

プロフィール

氏名:本間次彦
所属(研究科コース):教養デザイン研究科「思想」領域研究コース
研究分野:中国前近代思想
研究テーマ:中国前近代思想の批判的再検討(日本近世思想史批判を含む)
学位:文学修士
主な著書・論文:『コスモロギア——天・化・時』、「シリーズ・キーワードで読む中国古典」1、共著、法政大学出版局、2015年/B.A.エルマン『哲学から文献学へ——後期帝政中国における社会と知の変動』、共訳、知泉書房、2014年

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