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差異を越え、多文化共存の道へ

博士前期課程
教養デザイン専攻 「文化」領域研究コース 2020年3月修了
林璐

指導教員:高遠弘美 教授

グローバル化が進む現代社会では、異文化交流は重要な課題のひとつです。私は異文化交流に関心を持ち、本研究科に進学を志しました。
現在、私は浮世絵と印象派の関係について研究しています。この研究は、日本文化と欧米文化に対する理解を深め、異文化の交流の手本として、現代社会にも現実的な意味がある、と考えています。同様なテーマの研究はこれまでにもたくさんありますが、私は中国の明清美術から浮世絵への影響関係も視野に入れて、文化の共通点と相違点を考察したいと思います。
教養デザイン研究科は、人文社会・文化・科学など、学際的に研究できるのが特徴です。入学後、所属の文化コースにとどまらず、他のコースの科目も履修しました。このような学習を通じて、多様な角度から物事を洞察し、個々の地域文化に関する豊かな知識を得ることができ、且つ差異を越えた多文化共存の道を追求することができるのではないかと考えています。総合的・学際的に研究を深めたい方に進学をお勧めいたします。

研究室紹介
高遠弘美教授に指導を仰いでいました。先生はプルースト研究家、『失われた時を求めて』の翻訳家であるのみならず、フランス文化史・生活史、翻訳論、近現代日本文学等にも造詣が深いです。先生のご指導を通じて様々な知識に触れられ、多角的な視点から物が見られるようになりました。

過去を学ぶことは「現在」をより深く理解することです

博士後期課程
教養デザイン専攻「思想」領域研究コース 3年
銭 海英
指導教員:本間次彦 教授


 本間次彦教授に指導を仰いでいます。先生のご専門は中国哲学で、主に帝政後期中国を対象に、その思想状況を多角的に分析し研究されています。先生は、思想史は思想史内での文脈で十分に叙述できると考えられています。このような研究方法に、私は、新しい時代性と魅力を感じております。

研究室紹介:
 日本に留学する際、私は博士後期課程にまで進学するとは考えていませんでした。しかし、博士前期課程で研究するうちに、学問の面白さに惹かれ、後期課程への進学を志しました。
  私は、清末の文人・外交官である黄遵憲を通して、その激動の時代に興った百花斉放の思想を研究しております。当時は、西洋から到来する近代化の衝撃を前に、儒学に対する懐疑と反省、さらに伝統的儒教の再活用の可能性が盛んに追究されました。この時期の一連の思想運動を、私は、2000年代以降の中国で官民一体の下に奨励される、伝統儒教思想の復興と関連づけて解釈することができると考えています。つまり、現代中国を深く理解するためにも、今もなお、過去を参考にしなくてはなりません。
 柄谷行人は、「歴史は反復する」と指摘していますが、反復とはただの繰り返しではなく、反復しつつ、しかも、変わっていくことです。その意味で、過去を学ぶことが深く現在を理解することにつながっていくのです。
 教養デザイン研究科は、現代社会を幅広い視点からとらえ、新しい知のあり方を構想しようとしています。大学院に進学を考えている皆様、ぜひ教養デザイン研究科で一緒に頑張っていきませんか。
 

多様な知の世界から新たな教養を創る「実験」に挑もう

博士前期課程
教養デザイン専攻「平和・環境」領域研究コース 2019年3月修了
菊地修平
指導教員:廣部泉教授

 本研究科は学際的な研究環境でありながら、留学生や社会人が多く在籍しています。それぞれ異なる学問分野の先生や院生が集まり、単に知識を蓄えるのみならず、自分の学問の立場から自由に意見を交わすことができる環境が用意されていることが強みです。私は若泉敬という国際政治学者を通して戦後日本外交史を研究していましたが、研究アプローチなどにおいて他の学問からヒントを得ることも少なくありません。それは複数の学問の間で共通課題も存在するからです。そのため、本研究科は自分が持つ専門の軸を持ちつつも、幅広い学びの中で「多方向」に目を向けてみたいという方々に、非常に適しています。教養をデザインすることは、これまで学部で得てきた知識をさらに広い視野でもって、見つめ直すことであり、自分自身の教養を多色に彩らせ、独創性を育む、知的な「実験」です。「思想」、「文化」、「平和・環境」の3つの領域がありますが、”Humanities”という共通の根を持ちつつも文理の垣根を超えたユニークさがあり、世代間交流や国際交流を通した対話をすればするほど「個」を強くするための様々な可能性を見出すことのできる研究科です。

研究室紹介:
 廣部泉先生は近現代の日米関係史を専門としており、特に黄禍論とアジア主義の連関性に注目しています。私は戦後日本の自主外交の模索を研究していたので、対外的な日本のイメージやそれに伴う政策や外交の針路決定の検討という点において、先生と共通部分があり、様々な専門書や論文の内容を共有しながら、自由に議論をしていました。
 


 

末は博士か大臣か、手段と目的

博士後期課程
教養デザイン専攻「平和・環境」領域研究コース 2018年3月修了
張寿山
指導教員:山泉進教授(2018年3月退職)

私が小学生の頃、1960年代にはまだ「末は博士か大臣か」という褒め(?)言葉がかろうじて生き残っていたような気がします。大臣の方は、粗製濫造したとしても数は限られており、未だに出世のシンボルとしてかろうじて生き残っているようですが、博士の方はいまとなっては出世との関係性はかなり薄れてしまっています。私も教養デザイン研究科に入学するにあたって、博士号については全く意識していませんでした。しかしながら、自らの学問的成果を検証するには学会発表や論文執筆という行為を通じて世に問う必要があり、これを積み重ねた結果として博士という称号が与えられるという仕組みに乗ることが、自分自身にモチベーションを与え、効果的に成果をだすことにつながるとの理解に至りました。今から学歴をベースに生活を創り上げ、人生の歩みを進めていこうとしている若い方々にとっては、何を呑気なことを言っているのだという感じでしょうが、人生の手段と目的は違います。手段が目的化する時期も人生にはありますが、目的そのものを見失わないこと、それが教養デザイン研究科という場が与えてくれる重要なことのひとつかと思います。

研究室紹介:
教養デザイン研究科立ち上げの中心メンバーでおられた山泉先生に退任前の最後の学生としてご指導いただき、教養とは何かについて多くを学びました。
明治大学大学院