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数理のチカラ vol.7

数理でお肌を整える? デジタル時代の美顔術

明治大学 総合数理学部 先端メディアサイエンス学科 荒川 薫



これまでの画像技術は、被写体をいかに正確に精度よく再現できるかを競ってきました。デジカメも以前とは比較にならない画素数をもち、鮮明な画像が撮れるようになっています。しかしその分、顔のしみやしわ、くすみなど肌のコンディションまで写ってしまうという難点があります。ブログやホームページのプロフィール画像に使う際に、手元にある顔の画像を手軽に、そこそこ見映えよくできないだろうか。そんな発想から「顔画像美感化システム」は生まれました。



このシステムでは、数理的には「非線形」と呼ばれる処理方法を使います。しわ、しみ、それ以外の肌は、画像信号にするとそれぞれ異なった周波数や振幅をもっているので、まずこれらの要素をきちんと分離します。そして要素ごとに調整をかけて、しみやしわに当たる成分を除去し、肌の自然な凹凸は残します。さらに全体に立体感を出し、顔の輪郭をはっきりさせるための処理をします。ちょうどエステで肌のきめを整え輪郭を引き締めたり、お化粧で言えば下地を作ってからシャドウを施して立体感を出す感じです。オリジナルの顔かたちには手を加えず、肌の状態を美しく整えるだけなのですが、画像としての見映えはかなり違ってきます。



人間の顔は個人差が大きく、また好みもありますから、ベストの調整は人によって異なります。そこで少しずつ調整の程度を変えた複数のサンプルを見比べてもらい、「これがいい」と思う画像を残していくと、次第にその人の好みに合った画像に進化していくようにしました。ここでは「遺伝的アルゴリズム」という数理的手法を応用した「対話型進化計算」というシステムを使っています。操作が簡単で、既存の画像処理ソフトのような特別な勉強や訓練をしなくても、だれでもすぐに使えるのが特長です。すでにiPhoneやアンドロイド携帯上で使えるアプリ「Best Face」として無料公開されています。



このように数理科学は、個人の好みに合う行き届いた情報処理を可能にします。情報量も増えニーズも多様化する中、ますます重要度を増していくでしょう。
(了)

数理のチカラ : 先端メディアサイエンス学科

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