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情報コミュニケーション
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情報コミュニケーション学部・研究科&成均館大学芸術学部・研究科(ソウル・韓国)協力協定締結記念「明治・成均館プロジェクト 2014」 実施報告

2015年02月16日
明治大学 情報コミュニケーション学部・情報コミュニケーション研究科

集合写真集合写真

韓国舞踊 「扇の舞」(成均館大学院修了生)韓国舞踊 「扇の舞」(成均館大学院修了生)

沖縄の盆踊り New Eisa(「身体コミュニケーションB」履修生)沖縄の盆踊り New Eisa(「身体コミュニケーションB」履修生)

韓国舞踊 「教坊クッコリ」(成均館大学院生)韓国舞踊 「教坊クッコリ」(成均館大学院生)

コンテンポラリーダンス コンテンポラリーダンス "separate"(成均館大学院修了生)

パントマイムで成均館の学生と交流(波照間ゼミ生)パントマイムで成均館の学生と交流(波照間ゼミ生)

「恋するフォーチュンクッキー」を踊って日韓交流「恋するフォーチュンクッキー」を踊って日韓交流

 情報コミュニケーション研究科は韓国(ソウル)の成均館大学芸術学研究科の方々を招き、2014年12月5日(金)に「日韓合同研究発表会2014 & 特別講義」を開催しました。また翌日12月6日(土)には情報コミュニケーション学部も交えて、「作品発表会 Research & Work 2014」(交流会)を行いました。
 情報コミュニケーション学部・情報コミュニケーション研究科は、2014年8月に成均館大学芸術学部・芸術研究科と学部間・研究科間協定を締結しました。

 以下、情報コミュニケーション研究科の小林(波照間ゼミ博士前期修了)と西川(博士後期3年)が「明治・成均館プロジェクト 2014」 についてご報告します。


 初日の研究発表会で成均館大学の研究者からは、韓国の代表的民衆芸能「仮面劇」、20世紀前半に韓国伝統舞踊の再創造を行った韓成俊(ハンソンジュン)、昨年より始まった韓国初のダンスサバイバルオーデション番組「ダンシング9」についてなど、伝統舞踊から現在のポップダンスまで幅広いテーマの研究が発表されました。

 情報コミュニケーション研究科からは、江戸時代(18世紀)の「家」を生存の基盤とする民衆の心性を、浄瑠璃「心中天網島」を題材として明らかにした中臺希実さんの発表に、多くの関心と質問が寄せられました。この中で、浄瑠璃の隆盛と同時期に韓国で庶民芸能として人気だった仮面劇やパンソリとの比較研究が、今後の共同研究の展望として示されました。

 西川が発表した群馬県川場村に伝わる養蚕芸能「春駒」についても、養蚕業が廃れているにも関わらず養蚕予祝芸能が行われていることに関心が寄せられました。具体的な芸態や伝承方法について多くの質問があがり、実際に歌いながら踊ることで答えました。小林はこの時の会場の雰囲気の盛り上がりを感じました。

日韓合同研究発表会2014 発表題目
1 鳳山仮面劇に内在された陰陽五行思想研究 金ヨンジン
(成均館 博士修了)
2 浄瑠璃から描く民衆世界 中臺希実
(明治 博士後期3年)
3 韓国伝統舞踊の近・現代化 櫂ヒョジン
(成均館 博士後期1年)
4 養蚕業が廃れた地域で続けられる養蚕芸能 西川桂史
(明治 博士後期3年)
5 ダンシング9を通した舞踊の大衆化方案研究 李ソウン
(成均館 修士3年)
6 フラ教師の語りに見るメレ・マイの特性 中尾愛
(明治 博士前期2年)
7 ラベルの’ボレル‘音楽による舞踊作品分析 柳スンガン
(成均館 博士修了)
8 「阿波踊り」の変遷におけるジェンダー指向性 小林敦子
(明治 博士前期修了)
9 舞台公演におけるドラマツルギーの役割と意味 李ドンウオン
(成均館 博士修了)

キーノートレクチャー
「琉球と韓国の綱引き文化」
講師:瀬戸邦弘(上智大学嘱託専任講師・明治大学商学部兼任講師)

特別講義(レクチャー公演)
 「崔承喜舞踊の伝承と伝播:日本、韓国、北朝鮮の<扇の舞>にみるアイデンテイテイー」
講師:田銀子(成均館大学教授)&金ポラム(博士修了)・金采嫄(韓南大学特任教授)・朴貞順(朝鮮大学校教授)
コメンテータ:鄭義淑(成均館大学教授)・森田玲子(中村学園教授)

 翌日の「作品発表会」は気軽な交流会という雰囲気の中で行われました。オープニングでは情報コミュニケーション学部「身体コミュニケーションB」受講生(2年生)と波照間先生が明治大学のハッピを着て沖縄の盆踊りNew Eisaを踊り、会場全員で「ヒーヤ ハイヤ!」と掛け声をかけました。

 成均館大学からは鮮やかなチマチョゴリの衣装により、韓国の伝統舞踊「教坊クッコリ」と「太平舞」が披露されました。韓国の伝統舞踊は独特の呼吸法と長短(チャンダン)と呼ばれるリズムが特徴的で、特に「太平舞」の足さばきにそれが表れていて魅力的でした。またコンテンポラリーダンス「separate」は、一つの肉体であったものが2つに分離された葛藤を表したもので、踊り手である李東原(リドンウオン)さんはプロの振付師としても活躍しているということで、そのレベルの高さに納得しました。日本からは中尾愛さんが前日に研究発表した貴重なフラ「メレマイ」を披露し、小林もスペインのアンダルシア地方の春祭りの定番フラメンコである「セビジャーナス」を踊りました。

 舞踊以外のものとして、「情報コミュニケーション学」受講生(3年生)6人による「Anna Kendrick-Cups」とインドネシアのコテカンの技法を応用した創作作品が実演され、さらに観客を巻き込んで一緒にやるというものでした。この6人はたまたま中国と韓国からの留学生であり、会場は日韓中のいろいろな年代の男女が、カップを使ったパフォーマンスにチャレンジする展開となりました。

 波照間ゼミの学部生3・4年生による「Art-Live-Rally 2014」では、毎年、卒業制作として取り組んでいる神保町をテーマにした映像・写真作品の紹介や、世代間交流企画(於:千代田区西神田児童センター)の内容を紹介しました。観客を引き込んでのパントマイムコント、ダブルタッチ(大縄飛び)、映像とダンスを融合したパフォーマンスなどバリエーションに富んだ演目が披露され、最後は「恋するフォーチュンクッキー」を全員で輪になり踊りました。韓国の方々は瞬く間に覚え、ノリノリで踊っていました。全体を通して、言葉の違いを軽々と超える芸術や芸能の力を感じ、言葉を交わさずとも自然に参加できるように工夫された学部生によるパフォーマンスに感銘を受けました。作品発表というだけでなく、交流という面でも実りの多いものでした。

作品発表会 発表演目        
1 ハワイフラ Ka Ua I Hamakua 中尾愛(明治 博士前期2年)
2 教坊クッコリ ノスヨン(成均館 大学修士)
3 フラメンコ セビジャーナス 小林敦子(明治 博士前期修了)
4 太平舞 櫂ヒョジン(成均館 博士1期)
5 カップス・レボリューション 「情報コミュニケーション学」受講生(明治 学部3年)
6 separate 李ドンウオン・李ソウン(成均館 博士修了・修士3期)
7 Art-Live-Rally 2014 波照間ゼミ(明治 学部3・4年)
通訳:金ジュリ(明治 学部3年)

 わずか二日間でのタイトなスケジュールの中でしたが、盛りだくさんの学術および文化交流をすることができました。

 研究発表会および作品発表会に参加した情報コミュニケーション研究科の大学院生と情報コミュニケーション学部の学部生の感想をいくつかご紹介して、報告を終わります。

・「明治・成均館プロジェクト2014」にて、日本近世史社会文化史の立場から報告させて頂きました。報告では、歴史学に留まらず、研究分野を超えた意見交換が出来ました。また、さらには日本だけに留まらず、韓国、アジアと広い視点から、研究視座を広げる可能性まで提示して頂き、非常に有り難かったです。 —中臺希実(博士課程後期3年)

・自分の研究内容を伝える際、他者を念頭において論を構築することが如何に大切か、改めて痛感した研究発表でした。司会である波照間先生のフォローのおかげで、何とか議論まで発展し、研究の進展に有益な情報を皆様にご教授いただけたことは幸いです。もちろん友人としての交流も進み、とても密度の濃い二日間でした。3月に成均館大学へ伺うのが楽しみです。 —西川桂史(博士課程後期3年)

・身体を媒介にしたコミュニケーションが、こんなにも簡単に国籍を超えられることに驚きました。AKB48のダンスを全員で笑顔で踊っている瞬間、感動を覚えました。 —中尾美希(学部3年)

・単なる外国の方々との交流だけでなく、異文化アートの交流ということで、言葉という壁をとりはらってすばらしい交流会でした。 —井上岳丸(学部3年)

・(韓国舞踊のクッコリと太平舞に)非常になめらかで伝統的なものを感じ、また妖艶という印象を受けた。(コンテンポラリーダンスseparateでは)緊張感が空気からピリピリと伝わってきた。身体のしなやかさ、一つのものが分かれてしまったというストーリー性がすごかった。 —四谷大輔(学部4年)

・(コンテンポラリーダンスseparateでは)最初は音が無く身体の表現だけでやっていたのが、音楽を体で奏でるのがダンスだと思っていたので、非常に面白いと思った。 —関根竜二(学部4年)

・(崔承喜舞踊公演「扇の舞」について)音楽や扇が日本のおはやしを連想させた。伝統ある踊りが時代の中で再創造されつつ発展し、現在も受け継がれていることに感動した。 —西島裕美(学部4年)

・伝統舞踊とコンテンポラリーダンスの分野間の垣根はもちろん、韓国と日本の国を越えた交流はきわめて刺激的でした。言葉の壁をほとんど感じなかったのは、ダンスの持つ潜在的な力のおかげでしょう。2日間という短い間でしたが、彼・彼女達から多くのことを学んだ濃密な時間でした。 —中尾愛(博士課程前期2年)

以 上