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明治大学広報
第570号(2006年4月1日発行)
 駿風
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春は眠くなる。猫は鼠を捕る事を忘れ、人間は借金のある事を忘れる。時には自分の魂の居所さえ忘れて正体なくなる。只菜の花を遠く望んだときに眼が醒める。」この『草枕』の作者夏目漱石の言葉にこそ、現代人は眼を醒まされる

開化が進めば進むほど競争がますます劇しくなって生活はいよいよ困難になるような気がする。」講演でのこの言葉は、まるで現代社会のことを言っているようだ

漱石の好んだ黄金の春景は失われた。日本のナタネ油の原材料は、自給率が0・1%まで下がってしまった。輸入ナタネの殆どは遺伝子組み換えがなされ、運搬途中で零れた種子は繁殖力が非常に強く、全国レベルで生態系を脅かそうとしている。種子の専有化と世界規模の食糧支配を進めるために、人は新たな生命を作り出してしまったのだ

物と人間のみにて、雅と申す趣もこれ無く、文明がかくの如きものならば、野蛮の方がかえって面白く候。」(ロンドン留学中夫人宛手紙)現代社会は、漱石が百年前に無風流と感じたロンドンのようになっているのではないだろうか。



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