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明治大学広報
第577号(2006年11月1日発行)
本棚
「源氏物語 重層する歴史の諸相」 
日向一雅 編 (竹林舎、13000円)
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 歴史研究者が作品研究に求めるものは、作品論をふまえたひとつの時代の精神史ということになろうか。事実ではなく虚構であるにせよ、作品が一時代を生き抜いた作者の精神的営為である以上、文学的達成度のほか作者の精神的・文化的構想力を問うことになる。さて、本書のなかで文学研究者は、さまざまに重層した歴史の諸相のなかで源氏物語を読み解いている。総計19人に及ぶ、その豊かな論文内容をここで紹介することはできない。

 本書における歴史との関わりは多岐にわたるが、Tでは「歴史的時間」「時代の史実」「歴史の記憶」「歴史をよぶ」「反復される仁明朝」「寛平御遺誡」などのテーマ語句、Uでは「皇城地主神降臨」「陰陽道」のキーワードのほか、「歴史と物語を紡ぐ」「重層する歴史」「王権の世代交代」という言葉が、その関連を示唆している。

 本論文集は、明治大学古代学研究所開催のシンポジウムの研究報告が基礎になっている。これは学術フロンティア推進事業の一環であるが、この事業における研究成果を反映している。本物の研究は、やはりうれしい。古代学研究所からの知の発信として、本書の刊行を喜びたい。

吉村武彦・文学部教授(編者は文学部教授)



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