第577号(2006年11月1日発行)
本棚
「株式会社とは何か」 高橋俊夫 著 (中央経済社、2800円) |
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本書は、1990年代以降、相次ぐ企業不祥事を直接的契機として大きな関心と議論を呼んでいる「コーポレート・ガバナンス(企業統治)」問題を株式会社の本質から説き起こし、ライブドアによるニッポン放送株買占め事件、ダイムラー・クライスラー、フォルクスワーゲン、ソニー等のトップ・マネジメントを対象とする具体的な企業統治問題を俎上に載せながら、ステークホールダー重視の企業統治の必要性を論じている。
著者によれば、株式会社は私的な営みであるがゆえに自律的意思を有し、自浄作用・浄化能力を持つことを基本としながらも、社会的存在でもあり、その社会への大きな権力・影響力ゆえに社会性を組み込んだ経済的合理性こそが求められると主張している。このような視点から、企業統治問題はディスクロジャーによる透明性確保やコンプライアンスとも不可分な関係にあるものと著者は主張する。
本書は、わが国における企業統治研究にひとつのエポックを画するものと言えるであろう。
著者は、今年に入って本書をはじめとして3冊の研究書を上梓されたのであり、著者の旺盛な研究への情熱と弛まぬ努力に大きな敬意を表するものである。
風間信隆・商学部教授(著者は経営学部教授)
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