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明治大学広報
第581号(2007年3月1日発行)
本棚
「日本神話と風土記の時空」

 永藤 靖 著、三弥井書店、2800円
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 『風土記』を主題とする論著は著者にとっては数年ぶりとなるが、本書は、出雲・播磨・常陸の各国の『風土記』だけではなく、著者の幅広い関心を示すように記紀神話・琉球を扱った論文も含んでおり、量的な充実はもとより、内容の面からも、新たな『風土記』に対する切り口を読者に提示し、読み応えのあるものとなっている。

 本書のメインとなる『風土記』は文学・地誌・歴史などさまざまな視点からのアプローチが可能なテキストである。その中でやはり著者の主軸となるものは文学であろう。しかし、決してそこにとらわれることなく、神話・考古・歴史をはじめとするさまざまな補助線を巧みに用いながら構造的に読み解いていくことで、一見無関係に見える話の深層に迫り、表層にはあらわれてこない関係性を示し、新たな世界を明らかにしている。

 さらに、その方法は本質的に『風土記』が抱える〈王権の論理〉に固執することもなく、また、その裏返しともいえる〈在地の論理〉に偏ることもなく、2つの〈論理〉を大胆に切り結ぶことで補強されている。

 『風土記』というテキストの持つ有機的な世界を実感させてくれる一冊である。

 仲瀬志保美・文学部講師(著者は文学部教授)



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