第584号(2007年6月1日発行)
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「スターリン、ヒトラーと日ソ独伊連合構想」
三宅正樹 著 朝日新聞社、 1,400円 |
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著者は、第二次大戦期の日独外交の世界的権威として、これまで数多くの本格的な研究書を出版してきた。本書は、新発見史料を取り入れた、コンパクトだが重厚な長年の研究エッセンスである。
ヒトラー率いるドイツとスターリンのソ連との間に結ばれる独ソ不可侵条約。ドイツと防共協定を結んでいた日本の運命を、この不可侵条約の成立から独ソ戦勃発へ至る複雑怪奇な独ソ関係が翻弄する。その中で秘かに試みられた、独外相リッペントロップの日ソ独伊4カ国連合構想。この構想が実現していれば、第二次大戦のシナリオは全く変わっていたであろう。
なぜ独ソは不可侵条約を結び、戦ったのか。4カ国構想の真意は。複雑に入り組んだ4カ国関係を丁寧に解きほぐしながら、ドイツ外交の構造、日本の外交認識、そして日独に挟まれるソ連の外交力学を鮮やかに描く。
欧州と日本は、ソ連(ロシア)というユーラシア大陸を通じてつながり、一つの外交空間を形成していた。否、今も形成しているのである。グローバルな地政学的ダイナミズムの興亡を余す所なく描ききった本書は、日本における外交史研究の一つの到達点である。
川嶋周一・政経学部講師
(著者は明大名誉教授=元政経学部教授)
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