第585号(2007年7月1日発行)
本棚
「英語ジョーク見本帖」
丸山 孝男 著、大修館書店 1,500円 |
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丸山氏の英語ジョーク集は既に何冊か本欄で紹介されている。読者はとかく寸鉄人を刺す痛快さを期待しがちだが、本著では、タイトルにも「見本帖」とあるように、底辺の広いジョーク集を編もうとする著者の意図がより強く感じられる。
辛辣なものは若干影を潜めた感がある。簡潔なもの、子供向けのことば遊びのたぐい、定型化した表現のものなどがその分多くなって、英米人のジョーク感覚の奥行きの深さが一層印象づけられる。
彼らの日常生活に触れつつユーモアの世界に誘う語り口の巧みさは心憎い程である。加えて、日本人が愛用する同工異曲のことばがより頻繁に引用されるので、大変なじみやすい世界に読者は案内されることになる。
各章末に、「ジョークのオチを考えてみよう」というコラムが用意され、英語への挑戦にも読者をかきたてる工夫がなされている。言い回しの妙を生命線とする世界でもあり、万人の垣根を取り払うユーモア本来の功徳の陰に、読者と英語との垣根をも取り払う著者の願いが感じられる。
彼我のユーモア感覚の懸隔にも言及するなど、含蓄ゆたかなジョーク集となっている。
冨永昭・政治経済学部教授
(著者は商学部教授)
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